([い]5-1)箱入り息子の恋 (ポプラ文庫 日本文学)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591134238

作品紹介・あらすじ

天雫健太郎は、自宅と職場である市役所をただ行き来する生活を送っている35歳。息子の将来を案じた両親は、代理見合いに参加し、今井家の一人娘・奈穂子とお見合いするチャンスを掴む。奈穂子にひと目ぼれした健太郎だが、行く手には思わぬ障害が待ち構えていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 「箱入り娘」ではなくて、「箱入り息子」の恋ですって?
    タイトルを目にしただけで気になってしまいます。

    この世に生を受けて以来35年間、彼女がいたためしのない息子のため
    出勤する息子の写真を物陰から隠し撮りした両親が
    そのイマイチな写真を手に、「代理見合い」に出席するところから始まるのが
    いじらしくも可笑しくて。

    ところが、思いっきり不甲斐ない登場をした箱入り息子の健太郎ですが
    ひとたび恋を知るや、これまで節約してきた感情とエネルギーをすべて、
    惜しげなくまっすぐに、愛する菜穂子に注ぐのです。
    「そんなんじゃ、彼女は雨に濡れないけど、君は右半身びしょぬれじゃん!」
    と言いたくなるような表紙の写真を見てもわかる通り
    口下手で不器用だけど、とにかく純粋で心やさしい健太郎。

    彼が濡れても頓着せず、天真爛漫に傘を差し掛けられているかのような菜穂子は
    実は8歳の時に失明していて、健太郎の姿が見えない。
    そんな彼女が、声、言葉、そしておずおずと繋いだ手を通して
    彼のいちばんの理解者となり、どうしようもなく愛おしく感じ始めるというのが、とても素敵。

    「気にしなくていいよ」と自ら箱に入ってそうっとフタを閉めてしまったような
    ちょっと規格外の箱入り息子と
    目の見えない娘を心配するあまり、過保護になってしまった両親に
    ふわふわの羽毛で何重にも覆われた宝石箱に閉じ込められたような
    超弩級の箱入り娘の恋。

    初めて並んで座ったベンチで。 初めて連れていった牛丼屋で。
    健太郎が示す、さりげない思い遣りにきゅんとします。
    恋の作法は知らなくても、人としての作法はちゃんと身につけている彼を
    菜穂子といっしょにどんどん好きになってしまう、愛すべき物語です。

  • 「緊張して、なにがなんだかわからない。
    恥ずかしい。でも、幸せすぎておかしくなってしまいそうだった」

    生まれてこのかた恋愛を知らずに生きてきた健太郎と、盲目の箱入り娘、奈穂子さんの恋。
    不器用な人間が、もがきながらひたむきに頑張ろうとする話に弱い。健太郎がお見合いの席で言った台詞など思った以上に泣けてしまった。くすりと笑えるのだけれど、その一生懸命さが愛しい。
    偶然再会するなどご都合主義な展開も、これはこれでよかった。読み終わった後はつゆだくで紅ショウガを乗っけた牛丼が食べたくなります。映画観てみたいな。

  • 素直に恋愛っていいなと思った小説でした。

    人は生きている間に、いろんな初めてを経験する。
    その中でも、心に残るのは、きっと誰かと共有した初めてなんだと思う。

    初めて声をかけた時。初めて一緒に食事をした時。初めて手を繋いだ時。初めて「好きだ」と伝えた時。初めてキスをした時。初めてすれ違った時。

    たった一人の人が、自分のことを嬉しくさせたり、悲しくさせたり・・・。
    その人がいるだけで、世界が特別なもののように思える。

    大事なのは、きっと真正面からぶつかること。
    どんなにかっこ悪くても、どんなに無様でも、自分の気持ちを自分の言葉で伝えることは必ず何かを変えてくれる。
    思ったとおりにいかなくても、そんな自分を見ていてくれる人がいるはず。

    自分にとって、輝きに満ちた、幸福に包まれた世界を創るのは、他の誰でもなく、自分と自分の意思なんだろうなと思った小説でした。

  • 『箱入り息子の恋』というタイトルだが
    内容は『箱入り息子と箱入り娘の恋』といって間違いないだろう。
    全体的にコメディタッチではあるものの、意外と心を抉る鋭さもあり、
    なかなかの曲者だったと思う。

    お見合いの席で健太郎さんと奈穂子さんは
    生まれて初めてお互いを真から分かり合える相手に出逢ったんだろう。
    その嬉しさや幸せ感はその後のふたりの遣り取りで判るし、
    文字通り手探りで距離を縮めていく様子や
    お互いを想い合って成長していく姿は、キラキラしてて微笑ましかった。
    そんなふたりに立ちはだかるのが
    健太郎さんを箱入りで育てた母と、奈穂子さんを箱入りで育てた父。
    もう片方の親が双方ともに理解があるのがせめてもの救いか。
    奈穂子さんが箱入りなのは明確な理由があるんだけど
    その理由を差し引いてもこのふたりを取り巻く人たちの判ってなさ加減は
    イライラを通り越して悲しくさえあった。

    本編は健太郎さん視点と奈穂子さん視点とで交互に描かれる。
    映像を見ないと解り難いところもある反面、文章で十分堪能したうえで
    更にどうやって映像で表現するのかワクワクするところもあった。
    まだ知り合う前の健太郎さんの声を奈穂子さんが
    「とても柔らかな優しい声をした人だった」と評したところはきゅんとした。
    この表現からすると健太郎役に星野源さんはぴったりだと思う。
    ラストも何となく曖昧。そんなのもひっくるめて映画化されたものを見たくなった。
    というかこれは映画を見ないとダメだってことだな。
    まんまと術中に填っている(笑)。

    何はともあれ、意外にも大当たりだった。

  • 良かった。
    映画を見て、本を読みたくなった。
    星野源さんと夏帆さんはイメージドンピシャですね。
    滑稽ですが、二人の一途な愛への純粋な気持ちは羨ましいな。

  • お母さんの語りで始まり、終わりの語りもお母さん。
    これだけで親の子ども(30過ぎだけど汗)への執着振りがよく分かる。
    内容ははちゃめちゃだが、子どもの幸せを祈る親って…分かるんだけど、子離れしなさすぎてちょっと引くわ。
    私も気をつけよっと!

  • 馬鹿馬鹿しいけど
    こんなにお互いを好きになれるって素晴らしい。

  • 映像を先に見ていたから楽しめました。普通、自分としては本には勝てない映像が多いと思うのだが、こちらも源さん贔屓からか、映画の方が良かった。本だけなら☆2つかな。

  • すぐ読めた。
    ノベライズなのね。

  • 映画を見て。
    内面がわかるので本もいいですね。

    年齢差とか気になったり
    展開とか早い気もしますが
    本の量的に?映画の時間的に?ですか
    仕方ないのでしょうね。

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