([お]9-2)さらさらさん (ポプラ文庫 お 9-2)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591146064

感想・レビュー・書評

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  • 印象に残った部分
    p.310
    元地域研究をかじっていた院生としては、「言語屋」に期待しています。言語ができる人が育ってくれると、議論のレベルが一気にアップデートされます。ドイツ語やオランダ語ができる人が増えれば、社会保険の運用のあり方などについてもいろいろな見方が出てくるのではないでしょうか。

    p.313
    (本文略)著者の友人の話。ALSであり胃ろうをしつつも、生きがいとして食べ物を口から食べることを続けている人。
    「こういう小技はいっぱいあるんです」

    p.360
    〈ぼくらは、世界に対して無力さを感じることに負けてはいけない〉
    (重松清『希望の地図』のレビューより)

  • 以前ウェブ上で「困っているひと」を読み、
    大変興味深かったのを憶えていて、
    この本を手に取った。

    更紗さんの言う「活字を読めない若者」は、
    まさにわたしであり(若くはないけれど)
    難しいことも多く、
    読んでいくのがどんどんしんどくなったけれど、
    なんとか踏ん張って読んだ。

    変な言い方をすると、
    難病にかかったのが、
    表現をできる更紗さんだったおかげで、
    少し良かったのではないかと、
    そのおかげで世間が、世論が、国が変わることが、
    たくさんあるのではないかと、
    そんな風に思った。

    レイアウトなど読みづらい箇所もあったので、
    ★3つで。

  • わたしもそうなんですが、慣れてないことは、とりあえずうまくいくはずないんですね。(さらささん

    はじめにうまくいかないのは当然で、うまくいかないことを恥をさらしてでも必死でやる。必死でやっていることがおもしろくないわけがないし、かっこよくないわけがない。(さらささん



    寅さんのことば
    「思っているだけで何もしないんじゃな、愛してないのと同じなんだよ。愛してるんだったら、態度で示せよ」


    (糸井さんにとって魅力的な人材とは?)
    「弾んでる人」
    若いと、失敗するに決まってるんです。だから、機嫌よく。機嫌よく、ボールのように弾んでいれば、失敗しようが成功しようが、実力があろうがなかろうが、必ず伸びるから。

    絶対伸びます。ボールは長い斜面があったら、いつまでも転がっていきます。池があったらポチャンと落ちる。でも、主人公は弾力性のあるボールです。自分を活かすという元気さがちゃんとあれば、どうにでもなりますよ。周りがコースをつくってあげてもいいし、山の中にポーンと放り込まれて勝手に転がってるということもできる。ボール自身が腐っちゃわなければ、だいたい平気です。
    みんなが「価値」だの「能力」だのと思ってるものにとらわれないでほしい。なんでもない君のその元気さ、機嫌よさはすばらしい材料だよ、というおじいさんぽいことを、おじさんは自信をもって言えます

    2〜3年とか5〜6年くらい、「負けてもいいじゃん」と思うだけで、だいたいの若者の人生はひっくり返りますよ。ですから、「健全な好奇心」という言葉はほんとうにすばらしいと思います。健全な好奇心というものは、どんな場所にいても混じっちゃうからね。



    倒れてのち已む(やむ)という、中国の昔の言葉があるそうです。この言葉が好きなんです。倒れてのちはじまるかもしれないじゃん、と。(さらささん






    おしゃべりをさせとけば、人はけっこう機嫌がいいと思います。おしゃべりの種を得ることが生活であり、経験である。(糸井さん



    「なぜたれのために一篇の詩をかくか
    われわれは拒絶されるためにかく」吉本隆明




    何かするときって、基本的に「うまくいかない」んですよね。わたしだって、原稿書くときはうまくいかないです。七転八倒して、書いては捨て、読んでは悩み、ぜんぜんうまくいかない。それは、当たり前です。失敗して失敗して失敗して、恥ずかしい思いをいっぱいして、でも、だからこそ面白い。(さらささん)
    失敗の不快感を越えた先にすごい幸せや楽しさがあるのに、その先の楽しさよりも、いまの失敗の不快さのほうが勝ってると、もういいやとなってしまうんだろうね。(重松さん

    人間は自分ひとりの人生しか生きられないから、結局物語を読むということは、フィクションもノンフィクションも含めて、いろんな人のいろんな人生、架空の人生を知るってことじゃない。で、知ることによって、幅が広がらなきゃダメだと思うんだよ。だからぼくは、小説が読者の価値観よりも狭くなったら、読む意味ねーじゃんって思うのね。

    「なるほどこういう考えもあるんだ」とか、「自分が見逃してきたところはこうだったんだ」と思う。その面では『困ってるひと』は、間違いなく「文学」だった。

    ぼくね、一回目と二回目で感動の質が変わるものは全部「文学」だと思ってるから。要するに再読に値するものってことだよね。(重松さん




    私は良質なノンフィクションはすごく大事だと思っているんです。何かが起きたときに、日本ではすぐに価値概念を導入して、枠にはめて安心しようとするけれど、不条理な状況にも存在する生活の実態を描くのがノンフィクション。不条理にどう立ち向かったらいいのかなんて、私には言える自信がない。でも、良い本を読むのは、不条理の真っただ中にいるときに、一つの生きる技法でもあると私は思うんです。(さらささん

  • デビュー作「困ってるひと」が難病に立ち向かう一人の若い女性という視点でユーモアも交えて読ませる本だったのに対して、デビュー後あちこちに呼ばれてした対談や書評などを集めたこの本は、元地域研究/現社会学研究学徒の視点で社会保障制度や医療現場に切り込むスタンスの、ちょっと硬派な読み物(掲載誌も専門誌、社会派の雑誌が目立つ)。
    大野さんの文章は日頃いろいろ追っているので難しいなりについていけなくはない話ではあったが、糸井重里との気楽な話でスタートしながら読み進むに連れどんどん重く難解になってくるので(しかも最後のほうは文庫なのに3段で字も小さくて)しんどい読者も多かろう。
    とはいえ対談相手によって、話題も雰囲気もさまざまで楽しめた。なかでも、日本ALS協会理事の川口有美子さんとの終末期医療・尊厳死法をめぐる対談(青土社「現代思想」初出)は、目からうろこというか、一方で脳死を否定しつつ、もう一方で胃ろうや人工呼吸のようなものを否定的にとらえる尊厳死志向という自分の考え方にダブルスタンダードなところがあったことに気付かされた。それに続く猪飼周平(医療史学者)との対談もまた勉強になり読む価値があった(拡大コピーして読みたいような詰まり方だったけど)。
    これまで個別に考えつくことはあったけど、医療や福祉にかぎらず教育や働き方など現代のさまざまな問題に共通するキーワードは「信頼」だ、と改めて思った。

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