- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591155288
作品紹介・あらすじ
圧倒的オリジナリティで
第六回ポプラ社小説新人賞
を受賞したデビュー作!
「パドルって、何?」
「水たまりに潜って、新しい世界を、混ぜちゃうの。こっそり、ね」
中学2年生の水野耕太郎は、唯一の親友だった三輪くんの転校をきっかけに、屋上へ出る階段の踊り場を「別荘」と名づけ、昼休みの時間をひとりで過ごしていた。
夏休みを間近に控えた7月の昼休みのこと。水野がいつものように別荘で時間を過ごしていると、ザッパーンという大きな音が屋上の方から聞こえてくる。ふだんは施錠されているはずの扉が難なく開き、屋上に出てみると、そこには驚くほど大きな“水たまり”が広がっていた。そして、その水たまりで、女子生徒がバタフライで泳いでいる――。混乱し、立ち尽くす水野の目の前に、水たまりから優雅に上がってきたのは、水泳部のエースで学校一の美少女と名高い、隣のクラスの水原だった。
水原は、水たまりに潜る行為のことを“パドル”と呼び、「パドルをしながら強く何かを願うと、世界をひとつだけ変えられる」のだと説明する。半信半疑ながら、誘われるままに水たまりに飛び込んだ水野は、パドルで実際に世界が変わるのを目の当たりにする。校舎が取り壊しになる夏休みまでの8日間、水野もパドルに加わることになる。
水原がある一つの“目的”に向かって、パドルを繰り返していることを知る水野。そしてはからずも、その“目的”のためのパドルが、思いもかけない衝撃の真実を浮かび上がらせ――。
魅力的な伏線・仕掛けの数々に、必ず二度目が読みたくなる。
切なくみずみずしい、青春ノベルの新たなる傑作が誕生!
<著者略歴>
虻川枕 あぶかわ・まくら
1990年、宮城県生まれ。日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。卒業後はゲーム会社に入社し、プランナー/シナリオライターとして務めたのちに退社。第六回ポプラ社小説新人賞を受賞し、本作でデビュー。
感想・レビュー・書評
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伏し目がちな中学生 主人公 水野耕太郎
初恋と夏の不思議な体験を描くローファンタジー青春小説
一日ひとつ、世界を変化させることができる水源『パドル』
それを偶然手にした水泳部女子 水原と水野
トライ&エラー、パドルを繰り返す彼らの望み、そして真実とは?
次々改変する異界のような現実
とてもフレッシュな作品です
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設定がわかりづらくて、ごちゃついていて、ワクワクしたかったけど、できなかった。
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どんな願いも一つだけ叶えることができるとしたら、何を願うだろうか?
私ならこうだ。
「無限に願いを叶えられるようにしてほしい。」
少なくない人がこう考えるのではないか。
物語で耕太郎が目にした屋上の水たまりは、飛び込んで強く願うと1つだけ願いを叶えられる。
こうした力の可能性は、使い手の想像力次第だ。
その想像力の欠如によって、魅力的なプロットが惜しいことになってしまっている。
耕太郎が出会う女の子・水原は、ある目的があって世界を改変しているのだが、もっとやりようがあるだろうと思ってしまうのだ。
彼女は何かと「消す」ことを選ぶのだが、何かを追加するとか行動を変化させることで、リスクを少なく思い通りに状況を動かすということもできるはずだ。
ラストにかけては切ない匂いがしていて物語がどうなるか気になっていたが、水原の選択を知った私は「いやいやそこまでしなくても!」と突っ込みたくなってしまった。
というかそもそも、パドルができるのは旧校舎が取り壊される夏休みまでとなっているが、それをパドルで改変してしまえばいい。
時間制限がなくなればやり直しも可能だし、目的達成への道のりは変わってくる。
登場人物の想像力の欠如は著者のそれを表していて、世界設定にもその影響が出ている。
改変後の世界に無理がありすぎるのだ。
剣と魔法の世界と言われれば魔法を受け入れることはできても、現実に即した世界でファンタジーをやられると、途端に受け付けなくなってしまう。
地球上の水の循環は気象ではなくて海にある巨大な穴が担っていて、蒸発した水分は宇宙空間に逃げている、というのは無茶だ。
読んでいる途中で疑問点が無数に出てきて、終盤で伏線として回収されるのは見事。
しかし、あまりにいくつも引っかかるところがあるので、スムーズに読み進めることが難しい。
伏線回収時の感動よりも、読んでいるときの苦痛の方が勝ってしまった。
これは好みによるところだと思う。
私はミステリーが好きなわけではないので……。
キャラクターは耕太郎はとても冷めていて、彼の視点で読み進めているとなかなか物語に入り込めない。
水野に惚れるのだろうとは思っていたが、印象的なイベントは冒頭くらいで、水野の内面も見れない展開が続くので、納得しづらかった。
一目ぼれとか、数日間の恋はよくあるが、その場合は大げさなくらい魅力的に描いてしまっていいと思う。
文体は読みづらいというほどではないが、たまに引っかかるところがある。
経歴がゲームのシナリオライターだとわかると「ああなるほど」という感じ。
単純に下手というわけではなくて、シナリオライターっぽいのだ。
でも気に入ったところもある。
冒頭のシーンの水飛沫、夏っぽさ、屋上の水たまりで泳ぐ女の子なんていう不思議さ。
「パドルの子」の意味が明らかになるシーンは全く予想していなくて衝撃的だった。
ラストはそこまでしなくても、と先ほど書いたが、あれはどこかヤケになってしまったところもあるのかなとも思う。
だとしたら、それを止めるのが耕太郎の役目だったはずだ。
もっとロマンチックでいい。
ロマンチックで押し切ってくれれば、私は割と理屈抜きで好きになってしまうのに。 -
学校の屋上の水たまりで泳ぐ。雨の代わりに水源があったり、願いによって少しだけ違うパラレルワールドが興味深い。
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中学2年生の水野耕太郎は、ある昼休み、旧校舎の屋上一面に広がる水たまりを見つける。
そこで大胆にバタフライで泳いでいたのは、学校一有名な水泳部の水原だった・・・。
ボーイミーツガール + 時間改変というか世界改変のお話。
この世界改変という概念を受け入れられるかどうかで評価は分かれるかも。
最近のラノベは、この手のお話は多いみたいだからYAの皆さんは入りやすいかもしれません。
いくつになっても この手のお話はキュンキュンします「能書きはいらない」(笑)