まちの本屋: 知を編み、血を継ぎ、地を耕す (ポプラ文庫 た 10-1)
- ポプラ社 (2019年5月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591163009
作品紹介・あらすじ
ネット書店の台頭、「書店空白地域」の急増──。
変化する出版市場で問われる「まちの本屋」の役割とは? 書店から数々のベストセラーを生み出してきた名物元書店員が語る、本を愛する全ての人必読の一冊! 文庫化に際し、大幅書き下ろし「その後の『まちの本屋』」を収録。
<プロフィール>
田口幹人
Taguchi Mikito
1973年、岩手県生まれ。盛岡の第一書店に就職後、5年半の勤務を経て、実家のまりや書店を継ぐ。
店を閉じ、2005年にさわや書店に再就職。独自の店づくりと情報発信によって、さわや書店フェザン店から全国的なヒット作を多く送り出す。
2019年さわや書店を退社。現在は出版取次会社に勤務。地域の中にいかに本を根づかせるかをテーマに、中学校や自治体と連携した読書教育や、本に関するイベントの企画、図書館と書店の協働などを積極的に行う。
編著書に『もういちど、本屋へようこそ』がある。
感想・レビュー・書評
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田口幹人『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』ポプラ文庫。
盛岡の『第一書店』に勤務した後に実家の西和賀で家業の本屋を継ぎ、その後『さわや書店』に勤務した田口幹人さんの奮戦記。単行本で既読なのだが、文庫化されたのを機に追記があるというので再読。
若き頃、盛岡で育った者には忘れられないのが『さわや書店』。盛岡は街中に本屋も、古本屋も、映画館も沢山あり、それが普通のことだと思っていた。『さわや書店』か『第一書店』、『東山堂』に行けば大概の欲しい本を手にいれることができた。中でも『さわや書店』の面白本の充実度は群を抜いていた。数年前、まだ岩手県内に住んでいた頃、どうしても読みたい本があり、その本を探し求め、県内の本屋を巡り、最後にたどり着いたのが、『さわや書店』。欲しい本は山積みされ、しかも著者のサイン本というオマケ付き。今でも『さわや書店』には絶大なる信頼を置いている。
今の時代はなかなか本が売れないのだと言う。それに加えて、大型資本の『ジュンク堂』や『TSUTAYA』の出店が『まちの本屋』を閉店に追い込んでいる。テレビの普及から、レンタルビデオの台頭など、気軽に楽しめるコンテンツの氾濫に加え、近年のネットの充実とスマホの普及がこれに輪を掛けている。『まちの本屋』がどんなに頑張ろうが、もはや焼石に水の如し。まさか、こういう時代が来るとは思わなかった。
『さわや書店』はカリスマ店長の伊藤清彦さんを始め、田口幹人さん、松本大介さん、長江貴士さんといった知られざる名作の発掘・発信の名人が居た。しかし、『さわや書店』の体制変更などで、皆『さわや書店』を去ってしまった。『さわや書店』も撤退する運命なのか……
本体価格660円
★★★★★ -
本屋さん系の本は何冊か読んだことはあったけど、私的には1番よかったです。本屋さんに行きたくなったし、本の並びとかまちの本屋さんならではの店員さんがどういう気持ちでその本を置いてるかとか。色々考えながら本を選ぶのが楽しみになりました。本屋さんになれるかはわからないけど、「少数派に寄り添うこと」なんか響きました。
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ブク友さんのレビューで。
☆話は東日本大震災からはじまる。
〇店を開けると、お客さまがなだれ込んできたのだ、と現地のスタッフは話してくれた。(p11)
☆私も、本はおやつみたいなものだという感覚があった。毎日食べられなくても困らない、まあ、食べたらおいしいよね、という。でも、違ったんだな。なんだかそれが、びっくりでもあり、うれしくもあった。
日本も捨てたもんじゃない。
〇一方で、父は小さいながらもしっかりとした本屋をやろうと考えていました。(p17)
☆目的を持った品ぞろえ。小さい規模の本屋は、品ぞろえでは大型店に勝つことはできない。だから、個性で勝負する。作者のお父さんは、地域づくりをテーマに本を選んでいた。
〇「それで、これをいつ売る?」(p26)
☆面白かったら、素人はすぐこれを紹介したい!と思ってしまう。でも、本来はそうではない。いつ売るか、という視点で、自分の中にストックとして持っておく。でないと、自分が枯渇するんだという。自分が売りたいタイミングではなく、お客さんが出会いたいタイミングでもってくる。なるほどなあ。そこら辺の空気感は、現場に立っていると分かるのだろうか。
思考の整理学のPOPもこのさわや書店からでたんだなあ。あのPOPはすごい。人を引き付ける力があるよね。
〇僕が意識したのが、本屋を「耕す」ことでした。(p41)
☆お客との関係。お客さんとほんをめぐる会話をして、関係を耕す。本を詰め込んだ棚も、手を加え変えることで、耕す。
売れる本を自分たちで作っていく。面白いなあ。人との関係がなければ、結局、ネット書店と同じだもんね。そう考えると、ブクログも似ている部分があるかも。こういう本の好きな人の、おすすめのこの本、読んでみたいなあ、みたいに。
〇本屋にとっての図書館流通センターの出現は衝撃でした。(p48)
☆本屋が図書館に本を入れることがなくなったのかな。入札があるから、小さな本屋は介入できないのか・・。
〇本という「知」の結晶を、「血」に例えるなら、大型店は静脈と動脈であり、まちの本屋は毛細血管です。どちらの血管がすぐれているということを論じる人はいないでしょう。
☆すごい比喩。秀逸。まさしくそうなんだろうなあと思った。でも作者自身、この思いに行き着くまでに、長い試行錯誤があったんだそう。
〇著者にも地域にも出版社にも喜ばれるタイミング(p134)
☆著者に来てもらう時、地元ラジオで紹介し、新聞の書評コーナー、地元の読者との交流イベント、いろいろ組み合わせたらしい。素敵。こういう札をいくつもって、展開できるか、ということなのだろう。図書館では、どんなイベントができるだろう。ちょっと楽しくなってきた。小さい子は、折り紙とか喜ぶよね。
〇さわや書店の場合、赤澤社長が一貫していっているのは、「いかにして地域のためになるか」ということでした。
☆これは図書館でも同じことがいえる。で、大事なのはこれを、まわりの人と共有することだ。そのためには、「口に出す」-
えりりんさん、この本を読んで下さり、しかも☆五つですごく嬉しいです!
「いいね」よりも何よりも、一番嬉しいのはこういう時です(^^♪
レ...えりりんさん、この本を読んで下さり、しかも☆五つですごく嬉しいです!
「いいね」よりも何よりも、一番嬉しいのはこういう時です(^^♪
レビューを載せて良かったなぁって、じーんとしてきます。
続編もあるらしいのですが、こちらの図書館には置いてありません。
何とか手に入れて読んでみますね。いつになるかは分かりませんが。
今年もどうぞよろしくお願いします。
また楽しい読書をしてまいりましょう!(^^)!2020/01/01 -
nejidonさん、ありがとうございます。
本当に興味深く読ませていただきました。
お客さんとともに作っていく本屋、というのがとてもリアルに...nejidonさん、ありがとうございます。
本当に興味深く読ませていただきました。
お客さんとともに作っていく本屋、というのがとてもリアルに感じられました。
この本屋の常連さんになりたい!
また今年もnejidonさんのレビューを参考に読書させていただきます♪
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。2020/01/01
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本屋に生まれ、別会社の書店員として働く方が書いた本
本屋のあり方、本屋を訪れる意味を考えさせられる
ご当地スーパーのように、ご当地本屋にも注目していきたい -
田口幹人さんの著書は気になりながらも読んだことがなく
好きな書店、名古屋の「七五書店」を訪れて目に留まり購入。
(残念なことに2023年1月31日閉店)
P 43
〈本屋を耕す〉
確かに、大型書店でも街の本屋さんにしても
足を踏み入れた瞬間から、お店の色のようなものが見える。
耕されている書棚もすぐにわかる。
心惹かれる一冊との出会いを求めて書棚を巡る。
ただ、ただ、本屋さんが好きで本が好き。 -
書店員として生きてきた著者の書店運営に関してのエッセイ。私の近所でも書店が閉店してしまい、不便さを感じています。大きな書店で見つけてもその書店で購入したり、ネットで発注して書店で受け取ることができるサービスの時はその書店にしたり、とできる限り応援していたんですけどね。。。
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私が住む街の書店は昨年春になる前に営業を終えました。欲しい本はそのお店で購入し、無い物は注文したりネット書店で購入分をお店受け取りにしたり応援しましたが、閉店。町の本屋さんがなくなるのは本当に悲しいことです(/ _ ; )岩手県で頑張り続けた著者の思い溢れる言葉は、他業種で働く人間の心にも響きます。
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POP展開を全国に広めた、盛岡の名物書店、店員さんによる本。本屋に対する愛に溢れてます。
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評価は最大で★★★3個です
例外はあります・・・もっと面白かった時
ここ数年で一番面白かった本が小説ではない!
意外過ぎてビックリ、今朝起きて2時間で完読
今から朝ごはん食べます(笑)
考えてみれば書店シリーズとか好きだよな
(高校図書局にいたけど意識低い系でした) -
本屋に行って探検したくなる。
本屋で働きたいなぁ
私も高校の3年間を盛岡市の山岸の山の上の某高校で過ごしま...
私も高校の3年間を盛岡市の山岸の山の上の某高校で過ごしました。下校時にスクールバスから途中下車して『さわや書店』や映画館通りで友人たちと映画を、夜遅くまで観て帰ることもありました。(校則違反でしたが)
私は高校生でしたので、古文や漢文の参考書を今日は何にしようかと、買うのが楽しみでした。
盛岡は東北の田舎と思われがちですが、十分に文化のある街だったと、今更ながらに、とても懐かしくレビューを拝見しました。
ありがとうございました。