- Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591166673
作品紹介・あらすじ
「茶の湯だけでも奥深いのに、
弓と剣まで納めなくてはいけないとは。
友衛家に生まれなくてよかったとしみじみ思いました。
しかし他人事にも思えない本書です。(笑)」
――武者小路千家若宗匠 千宗屋氏
「“粗茶”シリーズの世界に遊ぶことは、
小説を読む悦楽に浸ること。
夏、涼しく、冬、暖か。
いつまでもいつまでも読みつづけていたい。」
――作家 大島真寿美氏
異色の青春お仕事小説の傑作!
弓、剣、茶の「三道」を伝える〈坂東巴流〉の
嫡男・友衛遊馬、二十歳。
家出先の京都から帰還するも、
家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、
働き口を探してこいと言われてしまう。
建造が始まったスカイツリーの警備員に収まるが、
周囲からは「あそこの跡継ぎはダメだ」と後ろ指を指され、
ガールフレンドとの仲も“行き止まり”。
冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、
遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。
明日が見えないあなたに贈る、笑えて泣けて元気になれる物語。
感想・レビュー・書評
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ここにきて遊馬の急成長がとても心強く感じた。
東京スカイツリーの現場のこと、東北の震災の時のこと、次々続くご不幸のことなど、事実と物語のつながり具合が絶妙で、特に後半は一気に読了した。
またいつか成長した遊馬や行馬が率いる坂東巴流が見られたらいいと思う。
余談:東京スカイツリーの工事現場が毎日きちんと整えられているというくだりを読んだ日に、たまたまテレビで熊本城の復旧工事現場の映像を見た。きちんと整列された崩れた石垣の石と、遊馬が見たスカイツリーの現場が整理整頓されていることとは、見た目は違えど趣旨は同じで、それが毎日当然のようになされているのだろうと思い、とても気持ちがよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とっても好きな作品でした。青春小説って今の自分を超えるために足掻く人の姿を描くことなんだなあとしみじみ。
主人公の遊馬くんを始め、すべての人がそれぞれに等身大で、自分の持ち場で悩みながら答えを選んでいく様には共感しかないです。
と同時に何かを選んでも物事はあるべきところに納まるという大きな流れも描き出していて、意思によって行動を選んでいくことと天分の中で生きるということのバランスが絶妙でした(好き)
この軽やかでフラットな作風は著者の文体あってこそで、他の松村作品も読みたい。