- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591175354
感想・レビュー・書評
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一章「誰かの朔」では、看護師を辞めた女性が登場する。
看護師だから、しっかり者と言われることにひっかかる怜花。
辞めた理由に、自分が良かれと思ってした言動が、結果的に見立てたこととは逆だったこと。
当人なりに一生懸命しようとしていた、その気持ちを蔑ろにしたのではないかという後悔と、人を見る目のない自分への落胆が混じっていた。
でも、その後悔と落胆が、既に怜花の労りを表しているとも思う。
関わることの怖さから、一歩を踏み出すこと。
この一章が、いちばん印象的だった。
各章の登場人物たちが、お互い関わっているのも楽しいのだけど。
そこでBGMのように、タケトリ・オキナがポッドキャストで送る、かぐや姫への「ツキない話」が流れるのも魅力なのだ。
クライマックスでは、ボロボロ涙が出てきた。
下を向いていると、自分の影しか見えないものなんだろうな。
耳を澄まして、人の気配を感じてみる。
思い切って、顔を上げて、他人の表情を見てみる。
誰もがどこかで「あう」ことに思いを馳せている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ポッドキャスト「ツキない話」が紡ぐ毎日
1.看護師人生のリセット
2.夢追う芸人(レゴリス月砂)
3.整備士の娘の結婚
4.女子高生の自立(スクータ)
5.最後の仕掛,竹取翁の正体 -
穏やかで優しい5つのお話。
悩んだり迷ったりしている5人の主人公が聴いているのがポッドキャストの『ツキない話』
毎朝7時に10分間、月にまつわる話を配信しています。
その話をヒントに少しずつ前向きになっていく
主人公たち。
立ち止まっている自分の背中をそっと押してくれるような素敵な連作短編集です。 -
23年読み納めに相応しい、素晴らしい一冊でした。5つのストーリーが重なって最後の仕掛けに胸が熱くなります。兄妹、コンビ、親子、恋愛、夫婦それぞれの関係がツキの話で一つになる見事な展開です。
私がいるよというのは、あなたがいるよと伝えること、いいフレーズでメモしました。やっぱりみんな繋がっていて、支え合って生きてんるんだと再認識です。
本屋大賞2023の中で上位です。 -
青山美智子さん作品は今回が初めてですが、本当に良い話ばかりでした。
ひとつの世界で色んな人たちの生き様が美しく書かれており、こうゆうところでこんな事あったのか……と衝撃受けることもありました。
個人的な感想ですが、読んでいると無性に1人語りするようなラジオ聴きたくなります -
あまりにも表紙が綺麗で手に取って眺めておりましたら「その本は絶対に流血沙汰がないし、嫌ぁな事件も殺人も起きへんで?!」(関西圏におりまして)と、友人がでかい声で止めようとしたお陰で、本屋で大恥をかいた私。
彼は一体私を何だと思っているのか今度問い詰めたい所ですが、その時は購入出来なかったので無料体験中のオーディブルで拝聴。
『ツキない話』と言う、月にまつわる内容のポッドキャストを通して、年齢も性別もバラバラな登場人物達が悩みに対する気付きを得て、人との繋がりに目を向け直して行くオムニバス形式です。
この作品はオーディブル向きでもあると感じました。『ツキない話』をこちらも実際に聴いている感覚にさせてくれるからです。
それぞれ本当に素敵なエピソードばかりなので甲乙つけ難いのですが、中でも私が好きだったのは最後のアクセサリーデザイナーの主婦のお話です。
自分の事に必死な時って、余裕が無くなって視野が狭くなる事ってあるよなぁ…!と立場は違えど共感の嵐でした。
あまり詳しくは言えないのですが、彼女が電話をかける時にしたとある選択が…最高!!(としか言えない位良かった)
『光のとこにいてね』でも感じた事ですが、やはり人は誰かと繋がっている事で悲しみを癒したり、己の中にあった筈の優しさを思い出したり出来る生き物なんだなと、そしてそれ故に苦しみを産んでしまうのも事実だなと、物思いにふけってしまいました。
ちょうど帰り道に聴いていたので、思わず月を見上げては本屋で謎の心配をしてくれた友人を思い出して笑ってしまいました。
そんな穏やかな気持ちにさせてくれる暖かい本です。 -
5つの連作短編集からなりますが、月の巡りの様に登場人物が繋がります。
好きなの章は、お天道様でした。男の哀愁がしんみり涙を誘いました。
読後、優しくしんみり、ほのぼの心地良い気持ちになりました。
何か想う時、月を見上げて物思いに耽りたくなりました。 -
※‥「朔」…さく・ついたち
陰暦の月の第一日。新月
月と太陽が、同じ方向にあって、地球に対し
て月の暗い面を向ける。
(新月の日は月が見えない)
一章 誰かの朔
朔ヶ崎怜花41歳。看護師として長年勤めた
病院を退職したばかり。
タケトリ オキナによる配信のポッドキャ
スト、「ツキない話」に癒され毎日聞いて
いる。
二章 レゴリス
本田重太郎30歳。お笑い芸人になりたくて
大学卒業後、上京。
「ポン サク」の芸名で芸人となるが、相
方 サクに辞めたいと言われ今はピン芸人。
宅配便の仕事で生活している。
タケトリ オキナの「ツキない話」で
「レゴリス」を知る。
月は、このレゴリスに一面覆われているら
しい。それが太陽の光を四方八方に跳ね返
し輝きを増す。その光の散乱により、遠く
離れている地球からも、ふちまで明るく見
えるのだという。
三章 お天道様
高羽、56歳男性。
二輪車の整備士。
四章 ウミガメ
逢坂那智 高校三年生。
運命の出会いで手に入れたスクーターに
「夜風」と名づけ、相棒になる。
タケトリオキナの「ツキない話」が好き
五章 針金の光
石や針金を使ったアクセサリーアーティス
ト。
北島睦子 夫と二人暮らし。
タケトリオキナの「ツキない話」で癒され
る。
「ツキない話」の一節
旧暦では、新月が一か月の始まりとされ、
月が始まる→月が立つ……つきたち、そこから
ついたち、となったそうです。
現実に「ツキない話」がポッドキャストに有ったらいいのに…….
ほっとする、お話しでした。 -
読んで良かったことが二つ。
一つは月のいろいろなお話が面白かったこと。
それは天文学だったり、文学的だったり
メルヘン、ファンタジー、ドラマティック……。
もう一つは一部の必要悪を除き
登場人物が温かいこと。
世の中の人が皆こんなだといいですね。
〈ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う〉
〈あたりまえのように与えられ続けている優しさや愛情は、よっぽど気を付けていないと無味乾燥だと思うようになってしまうものなのよ。透明になってしまうものなのよ。それが本当の孤独よりもずっと寂しいことかもしれない〉
〈私が知らない仕事は、いったいどれくらいあるのだろう。本当に讃えられるべき人たちが世界中の隅々にいるのに、彼らはすごいと言ってくれなどと主張したりはしない〉
〈わかっていたはずなのに、いちばんそばにいてくれる存在が私には見えていなかった。周囲の存在が……太陽が明るすぎて〉 -
とても温かい気持ちになって、読んでるとふいに泣かされてしまう。覚えておいて、自分や周りの人に伝えてあげたいようなフレーズが沢山あった。