〇 総合評価
ヴィンスという犯罪者が,深夜の病棟を抜け出し,元恋人を連れ出すために,元恋人の現在の夫と,自分の元マネージャーなどに対し復讐をする話。ヴィンスの一人称で書かれたサスペンスである。
解説によると,1953年に書かれた作品であり,ストーカー行為をかなり先取りした内容となっているということだが…それほどの深みがない。
解説にもあるが,作者であるマシスンが,3日間で書き上げた作品ということであり,それほど深みがあるプロットではなく,サプライズもない。
ただの勢いだけで進んでいくサスペンス。それなりの緊張感はあるが,飽くまでそれなり。ジェーンとヴィンスが死ぬというオチも想定内。なにより,翻訳が悪いのか,マシスンの原文が悪いのかは分からないが,誰が何をしているかが分かりにくい部分が多く,読みにくい。そのため,物語に入り込めない。
総合的に見て,評価はそれほど高くない。キャラクターの造形はなかなかよいと思うので,少しおまけして★2かな。
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
ヴィンスは死ぬんだろうな…と思っていると,思っているとおり死ぬ。サプライズはない。
〇 熱中度 ★☆☆☆☆
原文が悪いのか,翻訳が悪いのかは分からないが読みにくい。誰が何をしているのか,把握しにくい部分が多い。物語に入り込めない。
〇 インパクト ★★★☆☆
ヴィンスのストーカー行為だけで1作描き切っている。焦点が絞られているので,インパクトはそれなりにある。
〇 キャラクター ★★★☆☆
ヴィンス,ボブ,ルース,ジェーン,スタンと登場人物は少ないがキャラクターはそれなりに立っている。しかし,それほど魅力的ではないか…。
〇 読後感 ★★★☆☆
ジェーンとヴィンスが死んでも,ちっとも悲しくない。読後感はよくも悪くもない。
〇 希少価値 ★★★☆☆
現時点では絶版になっている様子。手に入りにくそう。
〇 メモ
ヴィンセント(ヴィンス)
主人公。ピアニスト
ハリー
男性看護師
ルース
ヴィンセントの元恋人。ボブの妻
ボブ
広告・宣伝の仕事をしている。
スタン・シェルダン
ヴィンスの元マネージャー。
ジェーン・シェルダン
スタンの妻。ルースの友達。
〇 ヴィンスは,ハリーを騙し,脱走する。
〇 ヴィンスは,ボブの手からルースを解放するために,逃亡を始める。ある女性の家に忍び込む。
〇 ヴィンスは,逃亡途中に地下鉄の駅で,駅員に撃たれる。
〇 ヴィンスは,スタンの家に侵入する。スタンの家でのヴィンスとスタン夫婦のやりとり。ヴィンスは,スタンに,電話でボブをスタンの家に呼ばせる。ボブはスタンの家に向かう。ルースもタクシーでボブを追う。
〇 スタンの家にボブがやってくる。ヴィンスとスタン夫婦及びボブとのやりとり。その最中,ルースがやってくる。ヴィンスはボブを撃つ。
〇 ヴィンスはルースを襲う。ジェーンはヴィンスを騙し,銃を奪うが,ヴィンスに刺される。ジェーンは死ぬ。
〇 ヴィンスは,ビルから落ちて死ぬ。ヴィンスは父を殺し,ボブの会社に乗り込んでボブを殺そうとしたので,病院にぶち込まれていた。ヴィンスが死んだことで,もう人を殺すことはなくなった。