自分の財産

著者 :
  • 産経新聞社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594066239

感想・レビュー・書評

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  • 曽野綾子さんのエッセイ。
    共感できる話が多く、独自の目線で書かれた話が興味深く、面白く読めました。
    ・・・と言っても、書かれているのは今まで読んだエッセイと重複する事が多い。
    取り上げている題材が違うというくらいで。
    それはまあ、同じ人間が書いてるんだから当たり前だと思う。

    この本は新刊コーナーの所にあったので新しい本だと思いますが、その取り上げられている題材というのが結構ちょい前のものが多かった。
    中国の食品偽装の話とか、自民党の給付金の話とか、かと思えばやはり比較的最近の話、東北大震災の話なども取り上げられている。
    全ての話は曽野さん独自の目線で、独自の語り口で書かれているもので、どちらかと言うとこういう考え方をする人は少ないだろうと思う話も多い。
    付和雷同せず自分の考えをもつという姿勢に好感を感じ、私もその考え方には共感!と思う事が多かった。

    例えばこの話。
    『川崎市立井田病院に勤める五十五歳の男性医師はこの三月七日、富山市で行われた約三十人ほどの講演会で、「医療と介護」をテーマに講演したが、講演後の質疑応答で、「神奈川県が制定を目指す公共的施設受動喫煙防止条例について問われ、回答した際に、「禁煙が進むと医療費がかさむことは明らか。どんどん吸って早く死んでもらった方がいい」と答えた。これに対して禁煙推進団体は「人の命と健康を守る医師の発言とは思えない」と抗議したという。
    何とも大人げない話である。私はその場にいないので、発言者の表情も見ていないわけだが、この医師は何より自分がたばこを吸う人だという。とすれば普通の大人の会話なら自己批判を含んだ反語として理解して笑うのが当然だろう』

    全く同感!
    これに似たような話は世の中いくらでもある。
    こういう話を聞く度、言葉をそのままにしか受け取れない人が増えていると感じる。
    私は常日頃から言葉というのは限界があると思っている。
    その前後の話、直接話しているならその時の相手の表情、ニュアンスを読み取るのが大人の会話。
    こういう話をいつも批判していると、当たり前の事しか口にできず、世の中は本当につまらなくなっていくばかりだと思う。

    こんな風に、その目線はある意味厳しい。
    私を含め甘やかされている現代人の中にはこれを読んで不快だと感じる人もいるかもしれない。
    私自身は、同感する事も多いし、こんな目線、考え方もあったか!とハッとする事もあったし、「いや。それはちょっと無理でしょう~」というのもあった。
    それを全て含めて興味深く読む事ができた。
    タイトルの「自分の財産」はお金だけでなく、精神の高い人との出会いや経験で得た「感動の貯金通帳」のことらしい。
    とても素敵な言葉だと思った。

  • 人生はあっという間に過ぎる。だから、知識の吸収力のいい若い時に本を読み、実体験をし、人間として生きる技術を身につけておくことが重要。老人と鬱の心理に共通するのは、利己主義。他者の存在の認識が極めて希薄になる。他者に何かを与える充実感が不足している。

著者プロフィール

1931年、東京に生まれる。作家。53年、三浦朱門氏と結婚。54年、聖心女子大学英文科卒。同年に「遠来の客たち」で文壇デビュー。主な著作に『誰のために愛するか』『無名碑』『神の汚れた手』『時の止まった赤ん坊』『砂漠、この神の土地』『夜明けの新聞の匂い』『天上の青』『夢に殉ず』『狂王ヘロデ』『哀歌』など多数。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。93年、日本芸術院・恩賜賞受賞。95年12月から2005年6月まで日本財団会長。

「2023年 『新装・改訂 一人暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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