世界標準の戦争と平和 ーー初心者のための国際安全保障入門

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594082338

作品紹介・あらすじ

「安全保障って、さっぱりわからない」「尖閣とか北朝鮮とか沖縄基地問題とか、難しそう」「ニュースを見ても理解できない」「ミギとかヒダリとか怖そうな話ばかりが飛び交っていて、かかわりたくない」……。
そんな読者に向けて、米コロンビア大学大学院で「軍事・安全保障論」の修士号を取得した著者が、兎に角「わかりやすく」をテーマに懇切丁寧に説いた入門書です。
「こんなにわかりやすい話だったのか!」と目から鱗の話が満載で、読み始めると途中で止められないこと請け合いの面白さ。最後まで読めば、世界情勢がこれまでよりずっとクリアに見えてくる! ニュースを深く理解できるようになる!

この本で強調される大切な考え方
●世界の安全保障の主舞台は「海」である。
●「海」と「陸」の視点から世界や歴史を見ると、戦争と平和の話の理解が容易になる。
●安全保障は軍事とイコールではない。
●実際に必要な12の思考
・リスクを見積もる時、自国政府の公式声明や公式文書、報道発表だけに依存してはならない。
・自国政府の公式声明や公式文書、報道発表だけに依存した報道や論考、主張は警戒する。鵜呑みにせず疑う。
・100年単位、世界地図単位のビッグピクチャーから現実を見る。
・自国の視点だけから考えていてはいけない。相手国の視点から見れば、同じ現実でもどう見えるのかを考える。
・シグナリングを見落とすな。
・国際関係は異文化交流である。自国の価値観で他国の行動を評価・予測してはならない。
・事実と願望を混同してはならない。
・外政と内政は連続して一体である。
・2国間での政策は、他国との関係にも影響する。世界は2国間ではなく多国間で成り立っている。
・安全保障政策はベネフィット・ロスの差し引きである。
・「好き嫌い」「善悪」「勝ち負け」などの価値判断は現実を理解する敵である。
・政策決定は多様なプレイヤーが参加する重層的なプロセスである。単層的な思考をしてはならない。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:319.8A/U55s//K

  • 「二度と繰り返してはいけない」「原爆」の文脈でしか戦争についての話題を目にしない、それやっぱおかしいし不十分だよなあと思っていたのでとても勉強になった。

    シーパワーつよいし、北方領土問題はどう考えても動かないな?
    北の国、物理的な緩衝材としてあったほうが良いというのに納得。

    メディアが嘘はつかないけど本当のことは言わないってことと、シグナリングは気に留めよう

  • 地政学にも触れつつ、日本を中心とした安全保障問題について解説している。
    本書サブタイトルは初心者のための国際安全保障入門となっている。
    あとがきに記されているが、著者はspecialistではなく、educatorで在りたいという。内容、書き方からしてもその志が一貫されているように感じた。


    日本における議論を見ると安全保障=軍事という認識がある。しかしこれは誤解であり、安全保障政策とは経済・外交なども含めた包括的なものであり軍事はその中の1ジャンルに過ぎないという事を説いている。

    繰り返し登場し印象的だったのは、ビッグピクチャーという物事の捉え方。
    多国間、多層的、長い時間軸、といったで大局的視点で事象を分析する、という事。

    ケーススタディとして尖閣諸島問題を取り上げている。実際の新聞記事や政府発表の内容、過去の経緯を紐解いてどのような状況となっているか解説されており、分かりやすい。他の国際・安全保障問題を読み取る際にも役立つと感じる。

    第4章冒頭に国際セキュリティ問題を考えるときに必要な思考が箇条書きで示されている。詳細は本書内容にあるとおりだが、エッセンスがまとめられていて有益だと感じた。

    (A) リスクを見積もる時、自国政府の公式声明や公式文書、報道発表だけに依存してはならない。
    (B) 自国政府の公式声明や公式文書、報道発表だけに依拠した報道や論考、主張は警戒する。鵜呑みにせず疑う。
    (C)100年単位、世界地図単位のビッグピクチャーから現実を見る。
    (D) 自国の視点だけから考えていてはいけない。 相手国の視点から見れば、同じ現実でもどう見えるのかを考える。
    (E) シグナリングを見落とすな。
    (F)国際関係は異文化交流である。 自国の価値観で他国の行動を評価予測してはならない。
    (G)事実と願望を混同してはならない。
    (H)外政と内政は連続して一体である。
    (I) 2国間での政策は、他国との関係にも影響する。世界は2国間ではなく多国間で成り立っている。
    (J) 安全保障政策はベネフィット・ロスの差し引きである。
    (K) 「好き嫌い」「善悪」「勝ち負け」などの価値判断は現実の理解を邪魔する敵である。
    (L)政策決定は多様なプレイヤーが参加する重層的なプロセスである。単層的な思考をしてはならない。

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/667999

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1335540

  • フリージャーナリストの烏賀陽弘道氏が若き時代にアメリカの大学院で学んだ「地政学」。
    国は支配者が変わればその行動も変わる。しかし、その国を取り巻く海と陸地の構成は変わらない。国は常に他国との地理的な位置関係と、資源を運ぶ海路の環境を無視することができない。
    アメリカも、ロシアも、中国もそこを基本に考え、動いている。
    尖閣諸島についての政府の情報は正しいのか?新聞の記事は正確なのか?
    それらは嘘は言っていないが、地政学的には分析としては疑問が残る。
    専門家はいるが、一般の日本人にあまり知られていない世界標準の考え方、「地政学」を解説してくれる一冊。

  • Youtube「一月万冊」で紹介されていたので知った。ちなみに烏賀陽さんはツイッターで大分前からフォローしていた方で、カエルのアイコンの時々ふざけたことを言う男性というイメージだった。動画で初めてご本人を見て、思ってたより年配の印象だったけど、実は私とそこまで年齢は変わらないので、きっと人のことは言えない・・。動画では(も?)かなりふざけたことを仰ってるが、いろいろこれまで考えてきたこともないような気付きをもらったので、これは少し政治について学ぼうと思ってる自分にとってはマストだと思って探して借りてきた。
    堅そうな表紙を見て、理解できるか正直不安だったけど、「初心者のための国際安全保障入門」というサブタイトルの通り、かなりかみ砕いて書いてあるので、私でもあらかた理解できた。高校生・大学生にも読んでほしいと思うけど、近現代の歴史に疎いと、少し難しく感じるかも?私も歴史は得意な方ではないけど、平成になったときは既に大人だったので、ある程度のところは習ったことというより自分で体験してきた時代だもんね。
    大人になってから戦争だとかについての本も少し読んだけど、地政学的に見た戦争の構図という見方はできてなかった。あまりにわかりやすく思えてしまったので、これはこれで気をつけなきゃならないと思う。けど、とにかく「なるほど」と。
    ベネフィットロスの考え方は、普段やっている「利点欠点」の考え方に似てて、しかも有意義に思えた。いろんなことでやってみよう。
    今とにかく、いろんなことについていろいろ考えなきゃと思ってるので、動画も見つつ、他の烏賀陽さんの本も読まなきゃ・・。あ、安富さんのも。

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著者プロフィール

1963年1月京都市生まれ。
1986年、京都大学経済学部を卒業し朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌「アエラ」編集部員。
1992~94年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。
1998~99年にアエラ記者としてニューヨークに駐在。
2003年に早期退職。
以後フリーランスの報道記者・写真家として活動している。
主な著書に『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社 2013)、『フェイクニュースの見分け方』(新潮社 2017)、『福島第1原発事故10年の現実』(悠人書院 2022年)、『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』(ビジネス社 2023)などがある。

「2023年 『ALPS水・海洋排水の12のウソ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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