中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち― (扶桑社新書)

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594083182

作品紹介・あらすじ

中高年ひきこもりが想像以上に増えている。
2018年の内閣府調査では、40歳から64歳までの中高年ひきこもりは、推計値ではあるが、63.1万人が存在しており、15~64歳までのひきこもりの全国推計の数は115万人である。


この調査では、ひきこもりの半数以上が40歳以上であると報告されており、もはや若者問題としてのひきこもりではなく、中高年と「8050問題」に象徴されるような高齢者家族の問題が明らかになってきた。さらに、若年層よりも中高年層のひきこもりの方が数としては多いのではないか、という調査報告が社会に衝撃を与えた。

本書では、ひきこもり問題が従来の若者の問題、精神医学の問題という狭い範囲の課題としては捉えない。より広範な視点から、社会全体、日本全体に広がる構造的な問題として取り上げていく。
第1章では中高年ひきこもりとは何かを明らかにしていく。
第2章では中高年ひきこもりの実態に焦点を当てて、具体的に4名の当事者の声を聴いていくこととする。
第3章ではどこから中高年ひきこもりが生まれるのか、その発生原因に迫っていきたい。
第4章では中高年ひきこもり問題の相談先、関係機関を紹介しつつ、ひきこもり家族会
や支援者、当事者たちが語る提言や対応策をまとめている。

【目次】
第1章
中高年ひきこもりとは何か
第2章
中高年ひきこもりの人たちの実態
第3章
どこから中高年ひきこもりが生まれるのか
第4章
「中高年ひきこもり問題」にどう向き合えばいいのか?


【著者プロフィール】
藤田孝典 (ふじた たかのり)
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する提言を行う。著書『貧困クライシス 国民総「最底辺」社会』(毎日新聞出版)、『下流老人』『続・下流老人』(ともに朝日新聞出版)、『貧困世代』(講談社)のほか、共著『未来の再建』(筑摩書房)、『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(岩波書店)など。

感想・レビュー・書評

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  • この日本の100万人以上いるのではないのかというひきこもり問題、中高年ひきこもり問題を本にされて世の中に出版されたことはとてもいいことだと思います。

    多くの複雑な問題がたくさんあると思います。
    親も家族も学校も医者も支援機関も役所も手助けにはならない。誰に、どこに相談していけばいいのかもわからない。
    自分も、家族、親もどんどん高齢化していく。インターネットを使える家やひきこもりはまだいい方でインターネットを使えない家族やひきこもりも存在がする。

    根本的に人間関係があることは明らかなことです。
    それは家族、学校、社会、職場とかでの人間関係が苦手で大きな負担の人たちが引きこもりになっていくのだと思います。
    人によっては家族との人間関係ですらも大きな精神的負担の人たちもいます。
    そうなるとどこにも自分の居場所がなくなってしまい、自分の部屋が一番居心地が良くて、自分の部屋に引きこもってしまい、家族ともうまく付き合えないばかりか、外で新しく人間関係を作っていくことができなくなっていってしまう。

    率直なところ、ひきこもりの人たちのことをどうしたらいいのか誰もわからないと思います。
    正直なところ、特に年齢を重ねていってしまったひきこもりの人たちは、これからどんなに自分なりにコツコツと勉強して頑張っていったとしてもろくな働き方、生き方、人生を生きていけないのではないのかとも、とても暗い思いになってしまいます。

    それでもたとえどんな年齢、境遇の人達だとしても、少しでもコツコツと無理せずに、人と張り合っていこうとはせずに、自分なりに勉強をして頑張って生きていくしかないのですが。

    ろくに人間として成長ができなくて、ろくな働き方、生活、人生ができないのではなんのために生まれてきて、生きているのか。

    本の中で「ただ生きていればいい」「人間は生きているだけで価値があるし、それだけで十分だ」というのはだいぶ違うと思います。

    人間・多くの日本人の生き方としてそんなに甘いものではなくて、根本的な問題として「ただ生きていくことですらもが困難になってきているのがいまの日本社会・日本人の置かれている境遇」ということがあると思います。

    それは太古の時代からの島国の先住民・原住民の多くの日本列島の住民の、ただなんとなく生きていくという生き方、生活としてでは、今の日本社会の中ですらも完全に通用がしなくなって、ろくな働き方、生活、人生ができなくなってしまってきているという日本人としての精神的に根本的に大切な問題だと思います。

  • 著者の筆力の賜物だろうが、さらっと短時間で読了できる。そのせいかディープな問題なのにカジュアルなテーマのような印象を受けた。

    中高年とうたったタイトルだが、アプローチでできているのは中年まで。しかも語っているのは、ほとんど「プロ当事者」。声を発することができないほぼすべての当事者についてはデータでかすかに触れているだけ。

    本書では少ししか取り上げられていない精神障害者の割合はもっと多いのではないか。精神疾患からひきこもりになったか、ひきこもりから病を発症したか、なんらかの障害をもつひとがほとんどだと思う。

    以上、総合して入門書といったところ。それ以上の内容ではない。

  • 本書では40歳~64歳の「中高年ひきこもり」について、ひきこもり当事者の声をもとにその実態を描き、その背景や対策課題について論じられています。中高年ひきこもりの背景としてパワハラ等労働問題との関連や幼少期や若年期におけるいじめ等のつらい体験があると述べられていますが、その点については自分の見解も同じです。人間関係がどうしてもうまく築くことができない人たちがいることを我々は認識しなくてはならないと思いました。

  • 8050問題より中高年の引きこもりが社会問題となっている。そのことを現存の資料だけでなく当事者からの聞き取りからまとめた著作であり、引きこもりの中高年問題にターゲットを当てた著作としては初めてではないか。私自身の経験では若い時からの引きこもりをしている人が中年にまで至っている人が多いという印象だったが、一旦社会に出て働いていて仕事や労働問題などでドロップアウトをして引きこもりになっているケースも多いということが本書では分かった。著者が労働問題に関与が強いこともあり、その部分での考察も多かったが、本書の優れている部分は当事者からの語りから現実に迫ろうとする部分であり、彼らのつながりを緩やかに支援することが大切であることが分かった。引きこもりの実態は多様であり、定義も曖昧な部分もあり、十分な調査もされているとは言い難い所もあり、本書に続くような著作や研究が求められるところである。

  •  中高年ひきこもりとは何か。実例、実態からその対策まで。

     正直モヤモヤする一冊。

     まず、この本のいい点からあげる。
     ひきこもりが青年期から家に籠っている人々というより、仕事で傷ついて退職し、次につながらなかった人々の方が多いという点が書かれている点は良い。今まであまりふれられてこなかったひきこもりのセクシャリティ、女性のひきこもりについて書かれている点も評価。
     藤田孝典さんは貧困や労働問題の専門家だし、セクシャリティについては良い助言者がいたのだろう。

     ただ、それ以外の部分では目新しい感じはあまりなかった。
     当事者を交えて当事者目線での支援というのは確かにもっともだが、ひきこもり研究の第一人者である斎藤環さんがオープンダイアローグの日本の伝道者なことを考えれば何を今さらといった感じもする。

     この本を読んで全体的にモヤモヤするのはなぜだろうと考えていたが、やっと分かった。
     この本の一章で取り上げられている内閣府のひきこもりの定義がそもそも無茶苦茶なのだ。外に出られるが、マッチングしてなおかつ食べていける働く場が得られない人をひきこもりとして定義してしまうことがそもそもおかしい。
      ー社会問題を背負わされた人たちー というサブタイトルのとおりこの本はその点をしっかりと指摘した本の構成が成されているのだが、この定義の部分をはっきりと問題視していない為に非常にモヤっとしてしまう。

     ただ、こういった感想は私がそれなりに長く問題を追っている現場の人間だから感じることなのかもしれない。
     あまりひきこもりについて関心を持って来なかった人にとっては、現在の「ひきこもり」の問題とは何かを知ることのできる本となる可能性もある。
     もし、この本がベストセラーとなり、多くの人に「ひきこもり」の問題点が伝わるのであれば、この本の私の評価は5点満点に変わるだろう。 


    ※ 2021追記 藤田孝典氏がネット等でヘイト発言を繰り返すようになったことに抗議し評価を1点に修正しました。  

  • 東2法経図・6F開架:367.7A/F67c//K

  • 当事者運動について多くの紙幅が割かれていたところが良かったと思う

  • 【ちーちゃんさん(数値調理会)のレビューです】
    団体情報:http://www.matsudo-sc.com/orgs/org-0368

    印象的な記述に中高年ひきこもりの 一番多い契機は 中途退職 とある。準備なしに不意に退職するショックは大きい。公式には61万人とあるが実態は? その死因の一番は癌、うつ病とある。正解が見えない無限ループの考え過ぎが誘因だろう。思考を捨て感性で生きる禅式自然さが役立つのではないか?大多数は家族との不和である。最初は 温かい目で見てくれた家族も半年もすれば 冷たく厳しい視線が飛んでくる。家族と離れて 一人暮らしができる資力がある場合救いがある。と事例から読める。
    むしろ野宿者支援などボランティア活動に参加して多様な一人暮らしを見聞し交流する人助けを通して、生活保護申請など自己を客体視できることが望ましいのではないか?
    たまに居る「粋な一人暮らし、孤独死にも理解ある印象を!」と強がる人は、他人迷惑に気を回さず、自分ばかりを見つめているのかも?「人間は社会的動物」という初等教育が身について無いのかな?ユーチューブやラインなどのメディアを通して、必要な社会通念の獲得を今からでも!身近な話と二晩で読んだ。

  • かつて読んだ池上正樹さんの本や斎藤環さんの本の良い復習になった。

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著者プロフィール

1982 年茨城県生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。ソーシャルワーカーとして活動する一方で、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関し提言を行う。著書に『下流老人』(朝日新書)、『貧困クライシス』(毎日新聞出版)など。

「2018年 『未来の再建』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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