黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?――

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594091620

作品紹介・あらすじ

急速に黒化(独裁化)する世界。
日本の民主主義は、生き残ることができるのか?

戦後、自由民主主義勢力は、「赤化」(共産化)の恐怖に怯えていました。
東欧、中国、北朝鮮、東南アジア、中南米、アフリカ、赤化勢力は、世界に広がっていたのです。しかし、1991年12月、赤化勢力の〝ラスボス〟ソ連が崩壊。「ついに自由民主主義の時代が来た!」と、西側世界の人々は歓喜しました。

ソ連が消滅し、「アメリカ一極時代」が到来します。
ところが、これで戦いは終わりませんでした。
西欧はEU拡大により、ソ連崩壊によって解放された東欧を吸収。
欧州共通通貨ユーロを基軸通貨化することで、アメリカからの覇権奪回を目論みます。
KGB出身のプーチンによって復活した新生ロシアは、旧ソ連圏の覇権をかけた戦いを開始。
そして、リーマンショックから起こった「100年に1度の大不況」。
アメリカ一極時代は、わずか16年で終焉したのです。

新たに「米中二極時代」が始まりました。
中国は、世界的大不況の最中にあっても9~10%の成長をつづけ、求心力を急速に強めていきます。
2015年、中国が創設した国際金融機関AIIBには、57か国が参加。(現在は100か国)その中には、イギリス、フランス、ドイツ、イスラエル、オーストラリアなど、アメリカの制止を振り切って参加した「親米諸国群」の姿もあったのです。

そして、「連鎖黒化現象」がはじまりました。
香港、ロシア、ベラルーシ、ミャンマー、アフガニスタンで。
「赤化」は共産主義化ですが、「黒化」は独裁化です。
中国とロシアがそろって「黒化」したことで、独裁勢力はユーラシア大陸の大部分を占めるようになりました。
そして、ベラルーシはロシアに接し、ミャンマー、アフガニスタンは中国に接している。
世界に巨大な黒化勢力が出現したのです。

黒化する世界を、民主主義(白化)勢力は、止めることができるのでしょうか?
それとも、世界は、すべて黒く染められてしまう運命なのでしょうか?

感想・レビュー・書評

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  • Open source intelligence の見本のような分析だと思う。引用してある情報は新聞やインタビューが多いのに、そこから組み立てられる推論は他の人とはずいぶん違っていて、かつ、よく当たっているのが大したものだと思う。

    建国以降は愚策しかやっていない毛沢東を崇拝する習近平は自滅に向かっている、という予想が当たることに期待したい。

    時節柄、ウクライナ戦争に関する考察も秀逸だと思う。

  • 2023/03/03 amazon 499円

  • 北野幸伯さんは19歳からモスクワに留学(モスクワ国際関係大学国際関係学部卒)し、「ロシア政治経済ジャーナル」を配信する。2018年からは安全のため家族と日本に拠点を移した。佐藤優さんやエマニュエル・トッドさんのようにロシア側の視点も提供してくれる人と言えそうだ。

    本書で登場する用語説明:
    ●黒化:独裁化し他国に武力侵攻する国家を指す(ロシアやベラルーシ、香港などは選挙制度の形式を取るが「なんちゃって民主主義」で限りなく黒に近い、という)。
    ●白化:民主化と定義する。

    これらは北野さん独自の言葉で、グレーの国々が「香港の国家安全維持法の成立」以降、黒に傾いたと主張する。民主主義陣営が独裁国家の勢力拡大(反政府勢力を武力弾圧し法整備して投獄せよ!)に有効な対策を示せなかったからだ。ミャンマーの軍事クーデター、アフガニスタンのタリバン復権、ベラルーシのルカシェンコ不正選挙など次々とグレー諸国が黒化した。そこにプーチンのウクライナ侵攻がNATOも国連も直接的に武力対抗できないことを証明してしまった。

    ーーでは、このまま世界は黒化してしまうのだろうか?

    北野さんは世界が黒化するとは考えず、プーチン政権は弱体化を辿って崩壊すると予測する。黒勢力の「ラスボス」である習近平も中から崩壊するだろう、と。

    その理由として、まず民主国家陣営から敵視されると経済成長が停滞することが挙げられる。事実、ロシアはクリミア侵攻以降は経済成長が急停止し、ウクライナ侵攻後は凋落。中国もコロナで停滞、不動産バブルも崩壊した。習近平が毛沢東の「共同富裕(文化大革命)」を再び掲げたことがその証拠で、経済成長ができないからこそ、富裕層から没収して貧困層への再分配を試みるのだ。
    そして最後は黒国家は「独裁政権だからこそ、崩壊する」と断言する。経済不安が続けばどの国民でも不満が貯まる。民主国家では政権交代することでガス抜きができるが独裁政権はできない。だから大衆の不満エネルギーは、仮想敵を外国に作って戦うか、時の政権に向かうのである。

    しかしこの主張には、毛沢東が文化大革命で得た成果の重要な論点が欠けているように思う。「大躍進政策」の大失敗で国民からも共産党内からも支持と求心力を低下させて崖っぷちだった毛沢東が、文化大革命で政敵の劉少奇や鄧小平を失脚させて、さらに「共産党を維持させること」に成功したということ。日本で言えば、小泉純一郎さんが「自民党をぶっ壊す」というスローガンで自民党政権を維持したのにも重なる。大国の政権は内部の一部を壊すことで一旦疲弊させた後の回復で政権の延命を図ることもある。

    とは言え、中国の人口が急減することは事実なので経済成長は難しいだろう。北野さんの予言通りになるか彼のYoutubeチャンネル「パワーゲーム(https://www.youtube.com/@user-fx4cj8gg2w)」を観ながら追っかけようと思う。

  • 内容は、著者が普段メルマガで発信しているもののまとめだが、現在の世界情勢がよく分かる。独裁国家=黒の国が広がっていく中、自由主義国家=白の国の日本はどのように立ち向かって行くべきか。
    安倍首相の外交に日本は助けられ、今は岸田首相が明確にウクライナ側に立つことで、今回は負け組に入らなくて済むようだ。

  • 黒化=独裁化していく世界について、今まで発表してきた意見等をまとめたような本。
    アメリカ一極に対抗する欧州やロシア、基軸通貨としての米ドルを守るためのイラク戦争、ユスコ買収阻止やカラー革命の米ロ新冷戦、中ロ同盟。
    次に2020年香港から始まった連鎖黒化。これに対抗する形で白の逆襲が始まる。米中覇権競争が民主主義国家対先制主義国家の戦いになった。
    そしてロシアのクリミア侵攻。戦争がどう推移するかは別に、ロシアの戦略的敗北は不可避。中国は衰退から逃れられず、共同富裕を掲げる習近平の人災で崩壊すると予測。
    読み慣れた人にはそうでもないが、著者の考えを初めて読む人には衝撃だと思う。

  • いつもの北野さんの本同様、分かりやすくまとめられた本。ここ数年の中国の動向にはいつも以上に注目。

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著者プロフィール

国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。アメリカや日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。
著書に『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』(草思社)、『隷属国家日本の岐路』(ダイヤモンド社)、『日本人の知らないクレムリン・メソッド』(以上、集英社インターナショナル)、『日本の地政学』(小社刊)などがある。

「2022年 『黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?――』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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