永遠と横道世之介 下

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 154
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108650

感想・レビュー・書評

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  • 上巻とは打って変わって、お別れが近いからか、ほっこりエピソードも、悲しいエピソードも、すべて切なくなる。まるで、楽しい旅行の最終日のような。
    でも素敵な旅行のような、嫌な日常を全て忘れてはしゃぐような読書体験をさせてくれた世之介に感謝したい。
    自然体で生きること。長さや短さ、濃さや薄さに違いはあれど、人と比べることなく満足して一生を終えられることが素敵な人生なんだなと感じた。世之介や、二千花のように。

  • 世之介の二千花への思いが詰まっていた。

    二千花が世之介に余命宣告されてることを告白した時、二千花は付き合ってるわけでもない世之介にいきなり深刻な話をしてしまったから、慌てて茶化す感じに持っていく。
    その時の世之介の言葉が
      「どういう風に過ごしたい?」
    真剣な顔で笑いもせずに聞く。
    あーだから世之介が好きなんだ。やっと分かった。

    結婚式場のオープン記念の写真撮影に行き、ウエディングドレスとタキシード姿で撮影場所の海岸に向かう2人。その途中で二千花が世之介に言う。「ごめんね」「・・・・・こうなれなくてさ。ほんとごめん」
    涙なしでは読めない

    世之介が死んだ時、橇を引いて迎えに来てくれたのかな。

    なんでもない一日が、どれほど尊いのかを気付かされるシリーズでした。

  • 他の本のレビューにも書いたような覚えがありますが、著者の吉田修一さんは日本で五本の指に入る小説巧者だと思います。筆が達者すぎます。
    ユーモアのある場面と緊張感のある場面の切り替えが絶妙に上手いです。
    鳥肌が立ちそうになる文章も何か所かありました。
    (P313、6行目~7行目とか、P343、13行目、P345、10行目)
    引用したいのですがネタバレなしで書きたいので引用はしません。


    ドーミー(下宿屋)で暮らす人たちと、亡くなった元婚約者の二千花、世之介の日常が交差しています。


    もうすぐ父親になる同僚のエバと妻咲子。
    好きな女の子のためにサーフィンを始める谷尻くん。
    芸人になりたかった礼二。
    引きこもりの一歩。
    世之介の今の恋人のあけみちゃん。
    二千花の両親の正太郎と路子。
    世之介の両親の洋造と多恵子。


    世之介はいいます。
    「この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」


    他にも書き留めておきたい言葉を記します。
    P349より
    きっと世之介の言う通りなのだろう。
    思い出になるには時間がかかるのだ。
    そして逆に言えば、時間をかければ、すべては思い出になっていくのだ。

    P374より
    「…その人はね、きっと、この本、に出てくる一日、みたいな人だったんだよ。
    なんでもない一日。
    春の、夏の、秋の、冬の、
    そんななんでもない一日みたいな人」


    書いていて泣きそうになりました。
    横道世之介よ永遠に!
    とてもよい物語でした!

  • もうすぐ四十の世之介の1年間。
    世之介、前作とあんまり変わってない?と思ったりもしたけれど、前作の世之介と同じくらいの年齢の後輩への対応や、職場でトラブル解決している姿などを見ると、やっぱり大人の男になったんだなぁ、と感慨深い。
    そして、今までの作品と何より違うのは世之介の内面をたっぷり読ませてもらったところ。
    正直、今までの世之介はいいヤツなんだけど、受け身というか、来るもの拒まず去るもの追わず的な人に私には見えていました。今作でも恋人のあけみさんに『世之介のことは独り占めできない、褒めてるんじゃないからね、女からしたら最低のダメ男だって言ってるのと同じだからね』と言われてますしねw
    でも、あけみさんも世之介の心の中にある深い深い悲しみを分かっている。そして、その悲しみこそが、世之介をただのいいヤツだけではない男に変えていったんじゃないかな、と思います。
    世之介は、運命の出会いをしたんだな。
    〜大切な人を亡くしても、世の中は変わらずに動いていく。だけど、同じように見えてもやっぱり少し違う。その人がいた世界と、最初からいなかった世界とはやっぱり何かが違う。それが一人の人間が生きたということ〜

    世之介の周りはやっぱり面白いし温かい。そして、やっぱりみんな、世之介のことが大好き。
    きっと、世之介の眉間には皺とか寄ったことないんだろうな。いつもリラックスしているんだろうな。

    世之介の名の由来、「永遠と横道世之介」のタイトルの意味、分かった時、グッときました。

    あーーー
    もう、世之介には会えないのかー
    寂しいなぁ。 
    ‥‥でも、待ちに待った「コンビニ兄弟3」が!
    図書館の予約頑張るぞー(購入しろ!)

    • こっとんさん
      1Qさん、おはようございます♪
      そうなんですよー。
      DVD借りれるんです!
      今まで借りたことは一回しかなかったんですけど、今回よくよく調べて...
      1Qさん、おはようございます♪
      そうなんですよー。
      DVD借りれるんです!
      今まで借りたことは一回しかなかったんですけど、今回よくよく調べてみたらアマプラで見れないものもたくさん取り扱っていたので、利用しない手はない!と思ってしまいました。
      とりあえず世之介を観てみようと思ってます。
      でも、ちょっとドキドキ。読むだけで観ない方が良かったなぁ、と思うこともしばしばですもんね(“ですもん“←世之介の口ぐせw)
      2023/08/27
    • 1Q84O1さん
      あーーっ!
      その気持ちよくわかりますw
      原作が良かったから映画やドラマも観てみると…
      あれ…!?ってことありますよね^^;
      なんか自分がイメ...
      あーーっ!
      その気持ちよくわかりますw
      原作が良かったから映画やドラマも観てみると…
      あれ…!?ってことありますよね^^;
      なんか自分がイメージしていたのと違うぞって感じなどw
      2023/08/27
    • こっとんさん
      1Qさん、
      そうなんですよねー
      ちょっとドキドキしながら観てみます(^_^)
      1Qさん、
      そうなんですよねー
      ちょっとドキドキしながら観てみます(^_^)
      2023/08/27
  • 読み進める内に、「永遠と横道世之介」そうきたか!とタイトルが腑に落ちました。もともと一作目から世之介の人生にはリミットがあることはわかっていました。
    だからといって波瀾万丈でなく、いろんな人と、笑ったり泣いたりと何気ない日常が描かれます。これが何故だか面白いエピソードばかりなのです。
    特に二千花との回想シーンと現在が同時進行で絡み合って進むのが面白い。そして、切ない。「人生は一人で使うには長い、その余りを誰かのために使えたら贅沢だ。」との言葉には共感しました。世之介自身がそんな生き方だったなと思えました。
    今回で完結しましたが、横道世之介シリーズが自分の傍らにあってよかったと思います。

  • あぁ…読み終わってしまった…


    ここ数日どっぷりと
    世之介ワールドに浸っていたせいで
    寂しくて仕方ないです。。。

    でもとても素敵な時間を過ごせました(^^)


    この先どういう展開になるのか気になって
    早足で読んでしまったのが
    とてももったいなく感じながらも
    でも先が気になって読んでしまいました


    内容が分かった上で
    もう一度じっくり読みたい。。
    (図書館から予約本が二冊も待機してるのは見えないフリしてもいいかな)



    ◯ここからネタバレあります◯



    一作目から気になってたのは
    世之介はどういう気持ちで最後を迎えるのか。

    事故の様子が描かれるだろうと思ってました。

    またニ千花との別れも
    当然描かれると思っていました。


    でも具体的には何も描かれてませんでした。



    そこが、本作っぽくて
    とてもよかった


    いくらでもお涙頂戴な感じで書けるのに
    そうはしなくて、
    あくまで日常を切り取っていて。


    世之介が、ニ千花が、どう生きていたか。
    残されたものがどう生きているかを
    伝えてくれていました。


    しんみりしすぎることのない感じが
    日常ってこうだよな、
    生きるってこういうことだよなと思いました。



    それにしても世之介は
    人を素にする力がありますよねー


    世之介といると自然体でいられるんでしょうね
    そしてどこにでも、誰にでも波長を合わせられる
    いや、合わせてるというより、
    誰もいても変わらなくて、
    相手が自然と変わっていくんですかね


    歴代の彼女たちとも、
    付き合った年月は短いのに
    ずっと一緒にいたかのような関係になれるのは
    そのせいかもしれないですね
    どの人との関係もとてもいい関係ですよね


    あと、あけみさんがいっていた
    世之介は独り占めできないっていうのは
    すごく納得しました

    みんなが世之介を呼んでる。
    頼りないと思ってるのに、頼りにしてしまう。
    そんな人ですね


    にしてもあけみさん。
    ずっと心にニ千花さんがいて
    二番目と明言されていて
    どんな気持ちで一緒にいたんだろ。

    こうやって書くと
    なかなかな物言いをする男だけど
    そんな感じではない横道世之介
    不思議な男だーーー



    ああ書き出すと止まらない
    他にも永遠ちゃんのこととか
    南條さんのこととか
    沢山学ぶことがあったし
    語りたいこともあるけど
    長くなりましたのでこの辺で。笑


    さてもう一回読もう!





  •  飄々とかつ一生懸命に人生を楽しむ男、横道世之介。
     現在は東京郊外にある下宿屋「ドーミー吉祥寺の南」で、家主のあけみや4人の店子たちと共同生活を送っている。
     相変わらず暮らし向きは豊かでないけれど、やはり毎日が楽しそうだ。

     世之介不惑の歳までの約1年間を描くシリーズ最終作。下巻は、後半の半年間の物語。
             ◇
    世之介は39歳を迎えた。カメラマンをしながら東京郊外での下宿屋暮らし。大家で妻のあけみと、気心の知れた3人の店子たち。そんな平和な空間にやってきたのは引きこもり男子高校生。名を一歩という。

     一歩は世之介が仕事で知り合った中学教師の一人息子で、誰ともコミュニケーションを取ろうとせず、不満があれば下宿中に響く爆音で音楽を流したりする。
     両親ですらお手上げ状態の一歩なのだったが、下宿屋のユルい空気の中で変化が訪れる。

     また、世之介やその周囲でも、人生に新たな希望が芽生えはじめていた。

     全7章で「三月」から「八月」までをひと月ごとに描いた本編と、エピローグとしての「15年後」からなる。

          * * * * *

     中心になるのは世之介の溢れる人間味です。適宜挿まれる二千花との日々。もう涙なくしては読み進められませんでした。

     まず世之介の好意を察知した二千花が、余命2年を告げるシーン。世之介のリアクションがいかにも世之介で、安堵の笑みが漏れます。
     結婚式場でのウェディングドレス体験に゙二千花が応募する話もいい。タイムアップが刻々と迫る人生を精一杯生きようとする姿が美しい。また、彼女を懸命に支える世之介のふわっとした優しさがよかった。
     そして、海辺での2人のシーン。もう言葉にならないほどです。

     世之介のよさは、二千花の余命をカウントダウンしながら彼女に接する、ということをしないところです。
     世之介が見ているのは目の前の二千花だけ。だから二千花もその時の体調に合わせた過ごし方を世之介に伝えるだけ。瞬間瞬間をきちんと生きようとする2人が胸を打ちます。
     心が繋がっているような密度の濃い2年間でした。

     また、世之介の両親の出会いから世之介誕生の日のことまでの描写も印象的です。
     「世之介」命名の意味もストンと腑に落ちました。「名は体を表す」のことばどおり、まさに世之介の生き方そのものだったからでした。

     あとは運命の日に向かって物語が盛り上がりを迎えていきます。
     世之介の日々は明るく希望に満ちた展開であるだけに、読んでいて却って辛くなります。

     ブータン人のタシさんの言葉。
    〈私が誰かに生まれ変わる。そしたらその生まれ変わった誰かは、きっと今、私が愛している人たちの生まれ変わりにとても愛されるんだと思います〉
     目の前の人を愛する。助ける。でも決して押しつけない。誇らない。得意にならない。まことの愛は輪廻転生を越え永遠に受け継がれていく。

     世之介にはタシさんのような確固とした哲学はないと思います( 偏見です、ごめんなさい)。けれど、本能というか根っこのところで、世之介にはタシさん同様の行動原理が備わっている気がします。そんな天然の「愛の使徒」っぽいところに人は惹かれるのだろうと思いました。

     世之介と関わった人たちは皆、素直で優しい愛でもって周囲に接するようになります。その展開の心地よさこそ本作のかけがえのない余韻なんだと思います。

          * * * * * 

     世之介は、宮沢賢治さんの「雨ニモマケズ」を体現したような人だなあと、ずっと感じていました。亡くなるその瞬間まで世之介は、「サウイフモノ」だったと思いました。

    • yhyby940さん
      こんばんは。ますます読みたくなりました。ありがとうございます。
      こんばんは。ますます読みたくなりました。ありがとうございます。
      2023/11/16
    • Funyaさん
      yhyby940さん

       はじめまして。コメントありがとうございます。

       この横道世之介シリーズは何かしら心に刺さる作品でした。

       初め...
      yhyby940さん

       はじめまして。コメントありがとうございます。

       この横道世之介シリーズは何かしら心に刺さる作品でした。

       初めて読んだ第1作が強烈で、高良健吾主演で吉高由里子がヒロインになった映画も観たほどです。
       世之介停滞期の第2作を経ての第3作は感慨深く、胸がいっぱいになりました。

       yhyby940さんなら世之介の生きた時代背景をよくお解りになることと推察いたしますので、ぜひご一読ください。
       映画もたくさんご覧になっていらっしゃるようですから、よろしければそちらもいかがでしょうか。(原作と少し違うところがありますが。)

       これからもよろしくお願いいたします。
      2023/11/16
    • yhyby940さん
      ご返信ありがとうございます。吉田修一さんの守備範囲の広さを感じさせてくれる作品だと思っています。世之介の少し浮世離れしているところが好きなん...
      ご返信ありがとうございます。吉田修一さんの守備範囲の広さを感じさせてくれる作品だと思っています。世之介の少し浮世離れしているところが好きなんです。それでもって人を惹きつける。魅力的な主人公ですね。本棚、参考にさせていただきます。
      2023/11/16
  • 「横道世之介」シリーズ完結編。

    ついに最後となった世之介の物語。
    最後の最後に蘇ってくるのは、最愛の人ニ千花と過ごした楽しかった日々。
    印象に残ったのは、「この世の中で一番大切なのはリラックスできてること」とニ千花が言ったことである。
    リラックスできてるってなかなか出てこないことば。
    だけどピッタリとはまるのが世之介なんだと改めて感じ、彼の大きさに今さらながら納得する。


    「ドーミー吉祥寺の南」の下宿人である礼二さんと世之介の死を覚悟した転落騒動から始まった今回は、谷尻くんの恋愛事情もあったり、引きこもりとは思えなくなった一歩くんのことだったり…。
    そして、後輩カメラマンのエバと咲子のカップルが新しい命を授かったことも大きな出来事。

    回想するのは、ニ千花のことだけでなくお互いの両親の出会った頃のこともある。

    大切に繋がっていく、紡いでいく想いを感じこの完結編は、とても濃厚で一行とも無駄にしたくないと思った。

    『永遠と横道世之介』のタイトルに頷ける。
    十五年後が、また最高に素晴らしい。
    まだまだ世之介を感じられる。
    それは、永遠に思える。



  • なんでもない一日の話ばっかり
    なんでもない秋の一日、なんでもない冬の一日が上巻で終わって下巻ですw
    下巻はなんでもない春の一日、なんでもない夏の一日

    だけど、下巻は少しずつ涙が出てくる…

    世之介と亡くなってしまった元恋人の二千花の思い出に…

    エバと咲子と赤ちゃんの頑張りに…

    ページをめくるたびに世之介との別れが近づいてくることに…

    そして、最後に分かる『永遠と横道世之介』のタイトルの理由に…

    下巻はゆる〜い中にもグッとくるものが詰まっています

    読めばきっと世之介にまた会いたくなる一冊

    • 1Q84O1さん
      ですよね~
      世之介いいんですよね〜
      ひろさん、まずは続編を!
      で、次は本作を!
      世之介が待ってますよw
      ですよね~
      世之介いいんですよね〜
      ひろさん、まずは続編を!
      で、次は本作を!
      世之介が待ってますよw
      2023/07/16
    • 土瓶さん
      なんでもない話なのに、おもしろいって。
      いいですね~(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
      なんでもない話なのに、おもしろいって。
      いいですね~(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
      2023/07/16
    • 1Q84O1さん
      そうなんですよ~
      この空気感がいいんですよ〜
      今回も声に出しておきましょうw
      よ・こ・み・ち・よ・の・す・け!
      そうなんですよ~
      この空気感がいいんですよ〜
      今回も声に出しておきましょうw
      よ・こ・み・ち・よ・の・す・け!
      2023/07/16
  • そばにいるとホッとする、なんでもない1日のような人っていうのが、すごくいいなあと思いました。
    永遠と横道世之介って、タイトルの意味も最後に分かって良かったし、静かに読み終えることができました。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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