ぶらっとヒマラヤ

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.19
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本棚登録 : 64
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620326696

作品紹介・あらすじ

58歳の記者がある日突然ヒマラヤへ! 8000mの山を舞台に人生の下り坂に向かう人間の心の移ろいを綴る。毎日新聞の人気連載を書籍化。

感想・レビュー・書評

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  • 高山植物を調べるために、ネットで本の検索をしていて気になった『ぶらっとヒマラヤ』(藤原章生)。

    「ぶらっと行けるような所じゃない」というツッコミから入ったようなものだけど……

    今回もまた「死」に関する本を手に取ってしまったようで驚きました。

    登山の話ももちろんあります。

    「私の過去最高登山標高記録3776mを超えた先の世界」がどんなものなのか、興味深いお話でした。

    その中に、「登山には「死のリスク」が常にある」事も書かれていて、

    さらに、「死に近づく、あるいは死を見つめなくてはならない状況になるのは……それはとても健全」とまで言っている。

    「……健全??」と不思議に思いつつ読んでみたら、

    「死は誰にでもやってくる避けられない経験。その死について健全な見方をするのは、とても役に立つし、その後の自分の人生での決断を左右することにもなる。」

    …とのこと。

    私には、「有限である命の期間、クヨクヨくだらない事で悩んでるヒマがあったら【自分にとって大切な事をやっとけ】」

    …というように見えて、

    現在感じている苛立ちに対して「アホらし」という気になってきた。

    …と、気持ちのチェンジができるのは非常にありがたい。

    【気持ちを言葉で表現されたもの】って、

    「なるほど!」と思える事が多いのでついついハマってしまうわ。

    以下「おっ!」と思えた文達載せます。

    ○人間って普段は、人に見せたくない面をベールで隠しているところがありますけど、低酸素になるとそんな高度な作業が難しくなる。だから高所に行くと感情がむき出しになるし、僕も高所のベースキャンプで本を読んでいて、やっぱり悲しいところが出てくると、日本では絶対に出ないような涙がダーッと出てきたり、感情のコントロールが利かないどころか、感情がもろに外に出ました。でもベテランになるとそのへんも認識した上で上手にできますけど、初心者だとコントロールできない感じの人も多い。シェルパとちょっとしたことでけんかしたゃうとか。(山本正嘉)

    ○私が高山病に苦しみながら何とかベースキャンプにたどり着いたとき、まず耳についたのは雪崩の爆音だった。「ズドン」あるいは「ブオン」という大砲か発破のような重く鈍い男が響き、「ザーッ」と雪が一気に崩れる音が鳴り、その音波が硬い岩壁に当たって、ベースキャンプに衝撃波として跳ね返ってくる(ちょっと大げさですが)。
    「うわっ」と声を上げると、先にベース入りしていた明さんが「あ、雪崩ですよ。すぐに慣れますよ」と、俺は平気だもんね、とすまし顔をしている。

  • 山に挑む人の本を読むのが好きだ。
    極限に命をぶつけて得ようとする何かを知りたい、知ることができるかもしれないという期待に応えてくれそうだからか。
    さらに、新聞記者をしていた人の文章が好きだ。ストレスなく読めて、この上なくわかりやすく、無駄がない。
    この本は、山に挑んだ新聞記者による「ヒマラヤを舞台に一人の人間の心の移ろいをつづったもの」。両方を兼ね備えていて、自分にとってラッキーな一冊。
    「登山を介し、それなりの年になった人間が考えた老い、恐怖、死、そして生についての記録」。今、いや昔からかもしれないけれど、そういうものを読むのが好きで、著者の人生とチャレンジ、思考をなぞることができたことが嬉しい。8000メートル級の山に挑むことも、屋久島で宙吊りになって死にかけることも、これからも自分の人生にはないけれど、追体験できる読書は本当にありがたい。
    生と死は、もっとこんな風に語られるのが望ましいと、無意味な報道(とも言えない)を目にするたび思う。
    著者に感謝。

  • これを読んで触発されて、「よし!私も山に行こう!」という気にはなれないけど前向きになれる内容。
    と、思っていたのが前半で、終盤に進むにつれて、藤原さんが挑戦したような標高高い山でなくとも、ハイキングぐらいには挑戦してもいいかもと思えた。
    面白そうな本や人の紹介もあり、読んでよかった。

  • ヒマラヤ登山と生き方の話。
    好奇心、情熱、失いたくない!
    人に興味を持ち続けたいけれど、大人になるにつれ、それすら持てなくなってしまう。
    知らずに相手を測ってしまう。
    そんな自分は良くないなと感じた。
    山は哲学。なぜ登るのか。
    この本を読み、私も早く山に行きたい、自然の中で呼吸したいとうずうずしている。
    屋久島、ヤクシカ、海岸、あの景色に会いに行きたいな。

  • 中身薄い。なのに200ページ以上。
    山岳に関する内容は四割程度。あとは筆者の心情、人生観など、どうでも良いことがダラダラ続く。

    筆者は毎日新聞の記者。ヒマラヤのダウラギリに趣味の登山で行くために二ヶ月以上の休みが取れる。新聞社員が既得権益のように良い待遇を手放さない。毎日新聞は一度つぶれかかった。

    読了30分

  • 私は里山を歩くのは好きだけれど、いわゆる「登山」はまったく別の行為なのだなと思った。
    高山への「登山」は、山を楽しむだけでなく「挑む」要素があることが重要なんだろう。山に挑みつつ、自分に挑む、そのなかで得られる達成感に取りつかれるのだろうか。危険と隣り合わせの、この山への熱意は登山経験のない私にはやっぱりわからない。

    著者は50代後半でヒマラヤの8000m峰ダウラギリに登りたくなり、実現に向けて行動するなかの心の移ろいをつづっていて、ジャーナリストならではの観察力で、自分の心身に意識を向け、それを言葉にしているのがよかった。
    高所の低酸素状況で感情が波立ち多幸感や自己嫌悪に襲われたりするというのは興味深い。人は普段は理性で「大人」としてふるまっていて、低酸素状況ではそのコントロールができなくなるんだろう。

    81歳のスペイン人の登山家カルロス・ソリアがすごい。人は60歳からでも体力増強できる。呼吸が大事、自分の体が何を求めているかに聞き耳を立てること、自転車や歩きの適度なトレーニング、そして休むこと。
    「ヒマラヤの高所では脳細胞の多くが死滅する」に驚いたけれど、そういうことがなくても、人が何らかの変化をするのに十分な体験なんだろう。情熱か達観か。

  • 長々と書いたところで、どんなボタンを押したのか消えてしまい、
    再度書く気力がなく・・・

    以前こういうことがあり、ブクログさんにお願いして、改善してもらったはずなのに。

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著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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