人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか

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  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620327792

感想・レビュー・書評

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  • 人を動かすナラティブ:「性被害者」覆う偏見 伊藤詩織さん、誹謗中傷「終わらせる」 | 毎日新聞(2023/7/21 有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20230721/ddm/002/040/064000c

    人を動かすナラティブ:“もろさ”を抱える個人を狙え 世界最大規模の世論操作のメカニズム | 毎日新聞(2023/7/21 有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20230720/k00/00m/040/240000c

    女の本屋 > 著者・編集者からの紹介 > 大治朋子・著『人を動かすナラティブーーなぜ、あの「語り」に惑わされるのか』   投稿◆毎日新聞編集委員 大治朋子 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/article/show/10726

    記者|仕事紹介|毎日新聞社 RECRUITING
    https://www.mainichi.co.jp/saiyou/staff/Oji.html

    人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか | 毎日新聞出版
    https://mainichibooks.com/books/social/post-625.html

  • 会社の素敵Guyおすすめの書で、この本の内容への興味からというよりは、おすすめしている人への興味から読んだのだが、めっちゃくちゃおもしろかった!
    大変な良書。さすが素敵Guy。素敵すぎて目がハートになったわ!(ま、彼の前ではいつもなんだけど)

    忙し過ぎて感想を書く暇がなく、読んでから時間がたっているので、忘れちゃっている部分もあるのだけど、この本は一つだけじゃなく、複数の違うテーマを扱っていた気がする。(例によって図書館本なので、今、手元になく、記憶で書いているのだけど)

    特に後半に書かれていたことは現代人が知っておいた方が良い「基礎知識」なんじゃないかなと思った。
    あなたの個人情報が、あなたのアイデンティティが、あなたの感情が、どのようにネット上で発信され、それがどのように利用され、時には悪用され、時にはビッグデータとして力を持ち、世の中に大きく影響を与えていたりする。
    善悪という二元論では語れない話で、個人では手に負えないという意味で、恐ろしいと思うと同時に、もはやインターネットやSNSがなくなることはないんだから、私たちは否が応でもこうしたシステムと付き合わなくてはならないんだなぁと思った。

    こういうこと、学校で教えるべきことじゃないのかな。道徳とかのしょーもない時間を削って。このタイトルどおりの「人を動かすナラティブ」ってタイトルで。あるいはインターネットとの付き合い方、というテーマのクラスの一部でもよいかもしれない。

    読んでからすっかり時間がたっていて、何がおもしろかったのか忘れちゃっていて、当時のメモを読み直したが、全部フレッシュにおもしろかった。そのうちのほんの一部をご紹介。

    "そもそも私たちの脳には意識と無意識があり、この無意識が果たす役割が意外に大きいということだ。車の運転に喩えれば、意識が運転席にいて無意識が助手席にいると思われがちだが、現実には運転席にいるのが無意識で、意識は助手席に座っているに近いという。無意識が下した判断を、意識が「合理化する。意識が無意識より先じゃないっていうことは、毎日生きていると分かる。いつの間にか眠っているし、起きている」"

    "「いいね」の傾向を分析すると、高い確率でユーザーの性的指向や政治的思考、性格、幸福度、依存傾向、家庭環境、信仰などが一定程度予測できることが分かった。彼らはその結果を2013年発表の論文「個人の性格と属性は、人間のデジタル上の行動記録から予測可能」で報告した。 またスティルウィル氏らは別の論文「コンピューターは人格分析で人間を追い越した」で、ある人のFBの「いいね」を10個分析するとその人の職場の同僚より、150個でその家族より、300個で配偶者より正確にその人の性格や嗜好、考え方を把握できるという実験結果を報告した。
    この論文は世界の政治家、軍事関係者、広告関係者らに大きな意識革命をもたらした。「いいね」はユーザーの「アバター(分身)」そのものだとの認識を世界に広め、大衆心理の捜査をもくろむすべての関係者らがSNSに熱視線を向けるきっかけとなった。”

    "「昨今の紛争は、国際社会の支持を得るためのナラティブの戦いだ。国際社会はそれを踏まえたうえで、自分たちの判断が紛争当事国のナラティブに影響され過ぎないように気をつけなければならない。紛争当事者のうち、資源や力、さまざまなコネクションを持つものが高い道徳意識やモラルを維持しているとは限らない。紛争をしっかりと観察し、人権の侵害が行なわれていないかを監視し、どちらかの側について紛争をあおったりたきつけたりするのではなく、和平を結ぶ方法はないかと探求し続ける必要がある」多くの教示を含んだ言葉である。"

    最後の引用は、非常に含蓄に富んでいて素晴らしいですね。エネルギー問題やら地政学やら経済状況やらが絡んで大変に難しいけれど。

    「いいね」を分析すれば性格が分かる、は、そうかもしれないなと思う。「いいね」をつける数が極端に少ない人(それは私もですが)も、「いいね」はつけないけどSNSに参加して発言しているあたり、何か一つの性格カテゴリを表現していそうだなーと思ったりもする。

  • AIを使ってダーゲットを絞り込み、ばら撒きたい思想をSNSで拡散させるためのプロ集団いるという事実に驚く。
    インターネットとの距離の取り方の参考になるため、義務教育で読ませたほうがいい。

  • ナラティブについて、色々な角度から述べられた書。それぞれについて、様々なソースから情報を得て書かれている。ナラティブの使い方?共感の仕方?について、恐ろしさを感じた。

  • ナラティブが良くも悪くも大きく世論を動かす可能性があることがわかった。悪いナラティブに「感染」して人々が実際に誤った道へ進んでしまう様子は恐ろしいけど、そうならないためにどうすればよいか?というと、やはり多様なナラティブを語り/聞き続けるしかないだろうと思った。

  • 人間が唯一理解できる形式がナラティブであり、それは人を操る道具にもなるというのはよく言われます。

    ナラティブを理解をするのは脳で有り、5章の脳神経科学とナラティブの関係はかなり面白かったです。まだまだプリミティブな印象ながら興味深い発見はこれからも続くと思われます。ただ、そういった発見もダークな方にもどんどん使われるのでしょうか?多分そうなんでしょうね、残念ながら。

  • ナラティブがテーマだが、文献やインタビュー、取材を織り込みながら、SNS、心理操作、脳神経科学、人の基盤となる生きる寄辺など様々な切り口で書かれていた。毎日新聞の編集委員が書かれたこともあって、文章は読みやすいが、内容が深く案外に手強かった。
    印象に残ったのが2点。
    y=axのaがナラティブ。事実関係xが同じでもaが異なれば違う答えyが出てくる。多くのaやyがあることを認め、他者に寛容でありたいし、自分自身でも答えを割り切れるとスッキリするが、aを決めきれなかったり、揺れ動いたりすることにも寛容になったほうがよい。
    もう1つは、多くの星を結んで描く星座がナラティブ。星は事実だが、どんな星座を見るのかはそれぞれのストーリーで、本書で何度も引用されるOECDの社会的情動(非認知的)スキルを豊かにすることが大切。美しい星座を見る方法なんてコスパに走ると、他人の見せたい星座を見る羽目になる。

  • 嘘か本当かわからない情報にあふれ、様々な問題が複雑に絡まり合い、寄りかかれる先が少なくなってしまったこの時代に、ナラティブが自分たちの周りに溢れていて、良くも悪くも大きな影響を与え得るということを、様々な事例を通して分かりやすく教えてくれる。

    ナラティブについて認識してこの世界を見ること、知らずにこの世界を見るのではまるで違う。
    この世界の"なんでだろう?"を理解する糸口でもあり、情報兵器にもなり得るもの。
    過激派テロ、米大統領選、性被害、旧統一協会、ナチス...
    様々な事例をナラティブを軸に考えていくと、ものすごく理解が深まった。同時に、危険な思想に向かっていってしまう可能性はどこにでもあるのだと感じて少し怖くなった。

    でも、イスラエル・パレスチナ遺族会の存在、
    「相手も普通の人間なのだということが分かる。それだけでも意義があると思います」
    これが希望だなと思った。
    ナラティブが良い方向に活用される社会であってほしい。

    それでも、情報兵器としてナラティブを利用する人は確実にいるから、情報を受け取る私たちが、真偽の分からない造られたナラティブに安易に飛びつくのではなく、しっかり考えて向き合っていかないといけない。
    私はしっかりネットに浸かった生活を送っているタイプなので気をつけないと…。

    本書を読んでから、生活の中でナラティブを自然と探すようになってしまった笑
    意識してみると本当にたくさんのナラティブに溢れていて、その中でも印象的だったのは運転免許証更新の講習。講習ビデオ冒頭に事故被害者遺族の語りがあった。あ、これもナラティブだなと。実際、冒頭にその語りがあったことでその後の内容を自分ごととしてより注意して視聴できた感覚があった。
    なるほど、自分は確かにナラティブの影響をしっかり受けてる。

  • はじめに
    P7
    私たちはナラティブに囲まれて生きている。
    それにもかかわらず、ナラティブがいかなる力を持ち、私たちをなぜ、どのように動かすのか、そのメカニズムをほとんど知らない。

    第1章:SNSで暴れるナラティブ
    P19
    本書ではナラティブを次のように定義する。
    「さまざまな経験や事象を過去や現在、未来といった時間軸で並べ、意味づけをしたり、他者との関わりの中で社会性を含んだりする表現」


    おわりに
    P377
    東京大学大学院総合文化研究科の言語脳科学者、酒井邦嘉教授によれば、脳には足りない情報を補う性質がある。情報を伝える手段には、「活字」「音声」「映像」などがあり、情報量が少ないほど、想像力はかきたてられるという。

  • アメリカがTiktokに神経を尖らせる意味が少しわかった気がした。。。
    多面的にナラティブを捉えているものの、筆者がジャーナリストということもあり、メディアリテラシー視点での学びが一番大きいように思われた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1989年毎日新聞社入社。阪神支局、サンデー毎日編集部、東京本社社会部、英オックスフォード大学留学(ロイター・ジャーナリズムスタディー・フェロー)、ワシントン特派員を経て、現在はエルサレム支局長。
2002年の防衛庁(当時)における情報公開請求者への違法な身元調査に関する調査報道、03年の防衛庁(同)自衛官勧誘のための住民票等個人情報不正使用についての調査報道で02、03年の新聞協会賞をそれぞれ受賞。
ワシントン特派員時代は米国の対テロ戦争の実情を描いた長期連載「テロとの戦いと米国」、米メディアの盛衰と再編についての長期連載「ネット時代のメディア・ウォーズ」で10年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。
著書に『勝てないアメリカーー「対テロ戦争」の日常』(岩波文庫)、『少女売春供述調書ーーいま、ふたたび問いなおされる家族の絆』(リヨン社)、共著に『個人情報は誰のものかー防衛庁リストとメディア規制』(毎日新聞社)、『ジャーナリズムの条件1、職業としてのジャーナリスト』(岩波書店)がある。

「2013年 『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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