- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784621052372
作品紹介・あらすじ
『源氏物語』の主人公、光源氏は、恋や結婚の場で、女性たちとどんな駆け引きのある会話を交わしているのか?それを明らかにしようとしたのが、本書です。光源氏の相手になった女性たちは、人柄や環境に応じて個性豊かな言葉を発し、彼とさまざまな関係をつくっていきます。それは、さながら現代の男と女の会話の見本集。さて、どんな言葉のやりとりが展開するのか、会話から読む『源氏物語』のはじまりです。
感想・レビュー・書評
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(2007.04.25読了)(2006.07.14購入)
副題「恋のかけひき」
山口仲美さんは、擬音語・擬態語の研究のみをし、その関連の本のみを出版しているのかと思っていましたが、「源氏物語」についても書いていました。副題が、なんと!「恋のかけひき」です。
●この本のねらい(1頁)
「男と女の会話」に注目して、『源氏物語』を読む。すると、きわめて現代的な『源氏物語』の魅力が引き出せるのではないか。多様な恋の形、愛の形が、『会話』によってつむぎだされていくところを、この本で明らかにしたい。
●登場人物の名前は?(4頁)
『源氏物語』に登場する「光源氏」「夕霧」といった名前は、一体なんなのか?
『源氏物語』の登場人物の名は、読者達が、同一人物であることを把握しやすくするためにつけた通称なのです。
(これは、びっくりです。こんな事は、知りませんでした。そういわれると、源氏物語の中には、われわれが使用している形での人の名前があまり出てきません。光源氏の手足となって動いてくれる惟光ぐらいしか思い浮かびません。
●「女房」の役割(11頁)
宮廷や貴族の邸宅に使える「女房」は、それぞれ自分の仕える主人や女主人の手足となって、手紙を代筆したり、言葉を取り次いだり、その他社交場必要なことなら何でもします。
男性を主人とする場合には、お手つき女房である場合もあるわけです。女性を主人とする場合には、特に思慮分別のある女房である必要があります。というのは、女主人の気持ちに関わりなく、女主人の寝室に男性を導きいれることだってできるからです。
取り上げられている女性は、「空蝉」「夕顔」「藤壺」「源典侍」「葵の上」「六条御息所」「紫の上」「玉鬘」「女三の宮」です。光源氏とこれらの女性達との会話を取り上げて、分析して見せてくれます。さりげなく原文も挿入してありますので、紫式部の書いた原文の雰囲気も味わうことができます。
「夕顔」についての項では、夕顔の送った歌
「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」
の解釈によって、話の読み方が変わってくる話が出てきます。
なるほどと頷かせるところがありますので、こんなところにも、源氏の楽しみ方があるのかと感心しました。
☆山口仲美さんの本
「犬は「びよ」と鳴いていた」山口仲美著、光文社新書、2002.08.20
「ドキドキドッカーン!擬音・擬態語の世界」山口仲美著、日本放送出版教会、2004.10.01
著者 山口 仲美
1943年 静岡県生まれ
お茶の水女子大学文教育学部国語国文学科卒業
東京大学大学院修士課程修了
文学博士、古典の文体、擬音語・擬態語の史的推移などを研究
共立女子短期大学助教授、明海大学教授、実践女子大学教授、埼玉大学教養学部教授
第3回日本古典文学会賞を受賞
第12回金田一京助博士記念賞を受賞
(2007.04.25読了)
☆関連図書(既読)
「絵草紙源氏物語」田辺聖子著・岡田嘉夫絵、角川文庫、1984.01.10
「新源氏物語(上)」田辺聖子著、新潮文庫1984.05.25
「新源氏物語(中)」田辺聖子著、新潮文庫、1984.05.25
「源氏物語愛の渇き」大塚ひかり著、KKベストセラーズ、1994.02.05
(「BOOK」データベースより)amazon
『源氏物語』の主人公、光源氏は、恋や結婚の場で、女性たちとどんな駆け引きのある会話を交わしているのか?それを明らかにしようとしたのが、本書です。光源氏の相手になった女性たちは、人柄や環境に応じて個性豊かな言葉を発し、彼とさまざまな関係をつくっていきます。それは、さながら現代の男と女の会話の見本集。さて、どんな言葉のやりとりが展開するのか、会話から読む『源氏物語』のはじまりです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
光源氏との関係図や著者の見解があり、小説や漫画より、源氏物語の内容がよく分かる気がしました!
光源氏や各恋人たちの性格や人柄が分かりやすく考察されており、彼らの気持ちに寄り添える部分がありました。 -
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ストーリーや会話、地の文を楽しむ他に、歌(部分しか書かれていない場合も)を推測する楽しさがあるのだということを知ることができた。あと、歌を贈りあったかどうかで関係も読み取れるなんて。また、ある単語がトータルで何回使われていて、それはどんなふうに使われているかという文学部みたいな読み方もあるのだなと認識した。こういう読み方は、著者・作者を研究上では、当然されるものだろうけど、本人も気づかなかった特徴や人間性などがあぶり出されそうで、される側の著者・作者の立場を想像すると、少し気恥ずかしい気持ちになるかもしれない。「宇治十帖」や今回書かれていなかった恋の形も読みたかったな。
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「源氏物語」を題材にした本ではあるが、他とは視点が異なる。本書は光源氏と女性たちとの”会話”にスポットをあてて、登場人物たちの恋心を紐解こうというのである。現代とは異なる風俗・文化などを抜きにして(完全に無視することはできないが)、恋人たちのやりとりのみを見てみると、思わぬ発見があったりするものだ。
光源氏が関わった全ての女性について述べているわけではなく、プロローグとエピローグを除くと次の9章からなっている。
「人妻との恋(光源氏と空蝉)」
「はかなき恋(光源氏と夕顔)」
「秘められた恋(光源氏と藤壺)」
「老女房の誘惑(光源氏と源典侍)」
「妻と愛人(光源氏と葵の上と六条御息所)」
「幸福な結婚(光源氏と紫の上〈一〉)」
「中年の恋(光源氏と玉鬘)」
「破綻した結婚(光源氏と紫の上〈二〉)」
「不幸な結婚(光源氏と女三の宮)」。
会話の解釈にも様々あるのだな、ということを発見。当時流行していた歌などに用いられる言葉を引用した会話は、元になる「歌」はどれなのか、というところを違えてしまうと、当然意味するところも異なってくるわけだ。当時の人々はまたハッキリとものを言うことをせず、そうやって「ほのめかす」ことが大好きなのである。その意味するところを察するくらいできないと、教養人・風流人とは扱って貰えないのだから大変だ。清少納言のダンナに少し同情(苦笑)。
閑話休題。
こうやって「会話」を中心に「源氏物語」を見てくると、各々の女性たちの個性というものがより浮き出てくるように思う。あとがきで著者が書いているように、”空蝉”の聡明さ、”葵の上”と”六条御息所”との相似など、これまで持っていた印象とは異なった女性像ができあがってくる。”紫の上”の愛らしさ、幸せから絶望への移り変わりなども息苦しいほど身に迫ってくる。やはり男女の会話というものは千年の時を経ても変わらぬものなのかもしれない。
できれば”朧月夜の君”、”明石の上”との会話も取り上げて欲しかった。”末摘花の君”も面白そうである。”朝顔の君”なども。”源典侍”もよいけれど、それよりは・・・と思うのだけれどどうだろうか。
私は紫式部よりも清少納言が好きなのだが、それでも「源氏物語」は面白いと思う。単なる色恋沙汰を綴っただけの物語とも言えるけれど、光源氏とであう女性陣がとても個性的で、それぞれの魅力を持っているのだ。光源氏とのやりとりもその個性が出ていて面白い。
当時の読者たちが先を競うように続きを読みたがった気持ちがとてもよくわかる。 -
内容紹介:「源氏物語」の主人公、光源氏は、恋や結婚の場で、女性たちとどんな駆け引きのある会話を交わしているのかを明らかにする。会話からよむ「源氏物語」。(TRC MARCより)
資料番号:011339629
請求記号:913.3/ ム
資料区分:文庫・新書