死と愛――実存分析入門

  • みすず書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622006022

感想・レビュー・書評

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  • アウシュビッツを経て獲得されたものは、結局このような文学性だったのだろうか。
    フランクルはフロイトの、擬似科学的な路線を批判しているが、逆にいうとフランクルには科学性がない。
    結局倫理的・人生論的なところに落ち着くだけなら、医者はいらないような気がするんだが…。
    とは言え、これは真摯な思想であって、あざけるつもりはない。

  • フランケルが、アウシュビッツに行ったときにポケットに入っていたのが、この本の原稿。だが、当然、そんなものの持ち込みがゆるされるわけもなく、所持品はすべて(メガネ以外)とりあげられ、名前をもたない番号でよばれる存在になってしまった。が、絶滅収容所の厳しい環境のなかで生き抜き、可能なときに原稿をすこしづつ書きためたものが、このフランケルの心理学の主著となるこの本。

    フランケルが収容所を生き抜いた希望というか、目的のひとつは、この本を完成し、世に出すこと。有名な「夜と霧」は、この本をかくなかで生まれた副産物ようなものなのかな?

    タイトルは、「死と愛」とあるが、原題は、「医療カウンセリング」みたいなシンプルなもの。ちなみに、「夜と霧」の原題は、「強制収容所における一心理学者の体験」。この辺の言葉の選択は訳者の好みか、出版当時の時代の好みなのか。「死と愛」と「夜と霧」を読んで、伝わってくるのは、ちょっと距離をおいて客観的にみてみようというスタンスで、そこには深い人間性への洞察と愛があるのだけど、あまりドラマティックではなく、平易に、シンプルに伝えようという感じなので、微妙に違和感を感じなくもない。

    さて、内容については、想像していたより、かなり難しかった。その難しさの大きな部分は、当時の心理学の議論がわかっていないというのがあって、他の学説への批判とか、フランケルに先行する業績を知らないので、今ひとつ頭に入らない。

    なんとなくわかったことは、「夜と霧」で書いてあったことと同様なメッセージの部分。そういうわけなので、この本になんらかのコメントを書くことは控えたい。

    それでも、わからないなりに、入門書だけ読んでわかった気になるのではなくて、できるだけ原著(といっても翻訳だが)を自分で読んでみるというのは大事だと思う。

    「人間性心理学」の入門書で紹介されているのを読んでわかった気になっていたのとは、かなり違う人物がここにいる気がしていて、このさまざまな側面をもつこのフランケルという人はほんとはどんな人なんだろう、と興味をもって、知りたくなってきている。

  • ー われわれは人間存在が意識性存在と責任性存在であるという、われわれの出発点である人間存在の人間学的根本事実を振り返ってみよう。実存分析は人間をこの彼の責任性存在の意識に至らしめようとのみするのである。実存分析は人間にこの存在における責任性を体験せしめようと欲するのである。人間がその存在を最も深く責任性存在として了解するこの点に至るまで人間を導く以上のことは可能でもなくまた必要でもない。

    責任ということは倫理的には形式的な概念である。それは未だ何らの内容的な規定を含んではいない。
    さらに責任ということは倫理的に中立的な概念である。そしてその限りにおいては倫理的な限界概念である。なぜならば、何に対する責任であるか、何にとっての責任であるかということについてはこの概念については何も語られていないからである。この意味において実存分析も、人間が何に対して責任を感じているか、たとえば神に対してか、両親に対してか、社会に対してか、またいかなる価値の実現化に対してか、またいかなる個人的使命の充足に対してか、いかなる具体的な生命の意義に対してか、という問いに対しては中立性を守っているのである。それに対して実存分析の任務は人間が自主的に、意識された自己の責任性からして使命へと進み、今や明らかになった一回的にして独自的な生命の意義を見出すようにすることなのである。それが可能になるや否や、人間は存在の意味に関する問いに対して具体的にして且つ創造的な答を支えるであろう。なぜならば彼はそのとき「責任に対する答が呼びおこされる」 (デュルク)ところに到達したからである。

    したがって実存分析はかかる問いに答えるにあたって、ある価値尺度や価値秩序に従ってするようにとは決して強制するわけではないのである。実存分析にとっては人間というものが価値づける行為をするという事実だけで十分なのである。 ー

    70年前の作品なので、色々な点でツッコミどころはあるけれど、人間観として読むには興味深い論考だった。

    なんせ古いので、読むのに苦戦。

  • 今の私の手にはちょっと負えなさそう。また手に取りたくなる日を待とう。2章からの方が取っつきやすそう。

  • 読了

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