一般システム理論――その基礎・発展・応用

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622025221

作品紹介・あらすじ

本書は、提唱者自身によるシステム理論確立までの諸論稿を一書にまとめたもので、前半では、近代科学の中での一般システム理論の起源とその発展過程、その数学的基礎について、後半では、生物学、心理学・精神医学、社会科学への応用と、その哲学的帰結について論及されている。

感想・レビュー・書評

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  • 構造主義を数学的、物理的、生物学的観点から理解できた。橋爪大三郎のはじめての構造主義で語られている、数学との関連をより知ることができた。また、一般システム理論の概要を知ることは、社会学的なシステム思考をする上で重要。

  • 前半では、システム論が確立するまでの、起源とその発展過程、または数理的な形での表わし方について、後半は、生物、心理学などの分野では、どのように扱われるかを示している。

  • ベルタランフィが一般システム理論をどう捉え、どういったものを目的としているかが書かれている。
    一般システム理論は古典的なテーマだが、インターネットで得られる情報から理解をすると解釈を誤る可能性が高いように思う。この理論の方向性を正確に捉えたいならば必読であり、この理論に関連する有名な理論も併せて紹介されるので、とても為になる。


    本書は10章から構成されている。

    第1章 序論
    第2章 一般システム理論の意味
    第3章 いくつかのシステム概念の初等数学的考察
    第4章 一般システム理論の進歩
    第5章 物理学的システムとして考えた生物体
    第6章 開放システムのモデル
    第7章 生物学におけるシステム理論のいくつかの側面
    第8章 人間の科学とシステム概念
    第9章 心理学と精神医学における一般システム理論
    第10章 カテゴリーの相対性

    一般システム理論が持つ意味についての記述では、異なった学問の分野に構造上の類似や同型性を見つけることができ、オーガナイズされている複雑性が現代科学に課せられた根本課題であると主張される。

    > 一般化されたシステムあるいはその部分クラスのシステムに,それらシステムの特殊な種類や成分要素の性質や,要素かんの関係や「力」の如何にかかわらず適用できるモデルと原理と法則が存在する.多少なりとも特殊な種類のシステムの理論でなく,システム全般に使える普遍的な原理の理論が当然要求されることになる.
    > このようにして私たちは一般システム理論と呼ばれる新しい分野を設定することになる.その主題は「システム」一般に対して使える原理を定式化し,導きだすことである.(一般システム理論の探究 p.32)

    一般システム理論は唯一のアプローチではなく、同様のアプローチで展開された理論は以下のようなものがあるという。

    > 関連のある現代的なアプローチはほかにもたくさんあって,たとえばもっとも重要なものだけあげてみても情報理論,サイバネティクス,ゲーム理論,決定理論,ネット理論,確率理論モデル,オペレーション・リサーチなどがある.(一般システム理論の目的 p.35)

    第3章「いくつかのシステム概念の初等数学的考察」では、多変数の微分方程式を展開していくことによって、定常状態、生長、アロメトリー方程式、階層的秩序などに触れている。生気論などによって誤って解釈されているとする目的性について、システムの定常状態の式から以下のような解釈をする。

    > 擬人的な解釈が誤った考えにおちいっていることは容易にわかる.最小作用の原理やそれに関連した原理は要するに,もしシステムが平衡の状態に近づけば導関数が0になるという事実から出てくる結果にすぎない. ... これらの変数を作用とか束縛力とか仕事等々の擬人的な言葉で呼ぶときにはじめて,物理学的作用の中にみかけ上物理学的過程の目的論が現れてくるのである. (目的性(終局性) p.70)

    この数式による議論の展開は、一般システム理論が意味のない類推に終わったり、空疎で表面的な相似を求める危険性があるという反対意見に対して有効な立場であり、議論を精査するのに重要な観点である。
    また、一般システム理論の発展については、現代の Categories for AI のような趨勢を言い当てた予測になっている。

    > 一般システム理論とは,その発展した形においては,いわゆる「カテゴリー理論」(N. hartmann, 1942)を一つの論理 - 数学的な体系によって置き換えたようなものとなるであろう.いまはまだ普通の言葉で表されている一般的な概念が,数学的な言葉によってのみ可能な,曖昧でなくて正確な表現を獲得するようになるであろう.(科学の統一性 p.79)

    第5章以降は、開放システムの動的平衡、社会学、精神病理学と個別のテーマに焦点をあてた記述が続き、第10章では締めくくりとしてやや哲学的な議論が展開される。

  • 2015/06/29
    久しぶりに本棚から引っ張り出して再読。
    専門家向けの論文の編集という内容はなかなか難解。
    批判する側の主張や意見も盛り込みながらの内容なので婉曲的な表現も多く感じる。
    専門的な細かいやり取りはあるものの、ベルタランフィの言わんとするところは一貫していて、それをひとつづつ丁寧に説明している。
    現在でもスパコンだけが何とか解けるような方程式で問題を捉え提示できるのも、その主張を裏付ける奥深い教養と知性があってのこと。
    そしてその後、後輩たちがそれを少しずつ解いて立証してきている。
    仮説はいろいろ反論されて間違いが出ても当然。
    見直し、修正を受けてもその主旨が残ればそれでよしという謙虚な態度の中にも彼の確固たる自信を感じる。
    安易な表現で彼には申し訳ないが、ベルタランフィはすごくカッコいいのである。

  • システム・シンキングとかに興味があるので、一応、原典にもあたっておくか、という軽い気持ちで読み始めたが、これは大変な本であった。

    この本は、1968年にでているのだが、内容的には、タイトルどおり、一般システム理論の基礎と発展、応用に関する論文集で、一番、古いのは、1940年のものであり、もっとも包括的な論文は、1945年に既に書かれている。

    しかし、その1945年の時点で述べられているパースペクティブのなんと広いことか!

    ここでは、いわゆるシステム論だけではなく、ゲーム理論や意思決定論、組織論など、つまり還元主義的ではなく、要素間のインターアクションを考慮するアプローチが広く一つのフレームのなかでおさめられている。

    1945年といえば、ゲーム理論もまだまだでたばかりで、ナッシュの非協力ゲームの均衡(ナッシュ均衡)に関する論文もまだかかれていない。

    さらには、非線形科学、複雑系的な問題意識もきわめて明確に述べられている。

    経済学の要素還元主義、経済人仮説などに疑問をもって、限定合理性、ゲーム理論、システム理論、複雑系と関心領域を広げてきた自分にとっては、こうした問題意識が、1945年にここまでしっかり整理されているのは、本当に驚いた。

    自分が、ぼんやりと考えていたことが、全部、ここに書いてあるではないか!

    文系の私には、難しいところも多々あるが、方法論や世界の見方として、ときどき戻ってくるべき原点ともなる本だと思った。

  • 401

  • 畠がシステムシステム言うものだからとりあえず聞いてみようと思って、総本山ベルタランフィさんに登場していただきました。
    分離を突き進めていた科学。分離して原因を追究していくことこそが科学、そんな中にあってこのシステムという考えはちょうどその逆をいく形で展開していく。どうも、全体というものを推測していくに、部分というものの影響は見逃せない。そうでなければ全体というものにはなりえない。アリストテレスやヘーゲルが展開してた論理学というものにようやっと数学という論理が追いついた形となる。
    万物は流転するが、流転というその点は流転しない。これこそシステムの持つ力。部分間の相互作用を調べてゆけばおのずと全体というものが記述されるはずである。この相互作用の着目こそが、新しい風を巻き起こしたのだった。
    一見すると、バラバラにみえる生物間の生長も、実はシステムのひとつの数式で表すことができ、これまで明らかになった法則はシステムのひとつの特殊な状態であると言える。
    しかし、どうも読んでいてもどかしくなる。それは、システムが在るというこの事実に驚けていないからだ。システムがどのようになっているかは言えない。科学だから仕方ないのだけれど。システムを定義するのも、ひとえにシステムの働きではないか。どんなにすぐれた数式のシステムでも、システムのシステムということには変わりない。結局は部分を分解していったかつての科学の前で逆立ちをしてみせただけにどうしても思えてしまう。カントはすでにそれに気づいていたのではないか。彼のカテゴリー論の限界は同時にシステムにもあてはまる。

  • システムという言葉は今や一般名詞と言っていいぐらいありふれた言葉になっている。社会から生物・機械まで、その仕組みを説明する上ではなくてはならない言葉である。しかしその言葉の歴史はまだ新しい。本書はシステムという言葉によって科学の統一をめざし、それを可能ならしめた著者が、システムという言葉、概念について体系的に述べた初めての書である。何度か読むうちに、世の中の見え方が変わってきたらしめたものである。

    人間科学部 K.Y

    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000614118

  • (1973.10.12読了)(拝借)
    (「BOOK」データベースより)
    本書は、提唱者自身によるシステム理論確立までの諸論稿を一書にまとめたもので、前半では、近代科学の中での一般システム理論の起源とその発展過程、その数学的基礎について、後半では、生物学、心理学・精神医学、社会科学への応用と、その哲学的帰結について論及されている。

  • 難しいけど、がんばって読んだんだけど、さっぱり分かんなかった。
    Wikipediaの説明によれば
    一般システム理論(general systems theory)は、1950年代に科学者ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ、アナトール・ラポポート、ケネス・E・ボールディング、ウィリアム・ロス・アシュビー、マーガレット・ミード、グレゴリー・ベイトソンらによってメイシー会議の議論の中で提唱された科学理論である。
    この理論は、電子回路やコンピュータなどの人工物、生物の身体、社会集団など、ミクロからマクロまで様々な現象をシステムとしてとらえ、これら多様なシステムに適用可能な一般理論を構築しようとするものである。

    ということで、ずーーーっと昔、その頃、ケネス・E・ボールディングの本を読んでいたので、ついでにこちらも読んでおこうと思って、読んだ。

    ◆システムは互いに作用している要素からなるものである。
    ◆システムは部分に還元することができない。
    ◆システムは目的に向かって動いている。
    ◆ひとつのシステムの中には独特の構造を持った複数の下位システムが存在する。
    ◆下位システムは相互に作用しあいながら調和し、全体としてまとまった存在をなしている。

    その通りだとは思うんだけど。
    人体も、自然も、社会も、宇宙も、それぞれのシステムが互いに作用してる。
    当たり前のことなんだけどなー。

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