- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622036470
作品紹介・あらすじ
著者は、昭和天皇の病いと死という歴史的な瞬間に東京にいた。そして天皇の病状が刻々報道され、自粛騒ぎが起こるなかで、日本人の行動様式と心性、そしてそこにさまざまな形で顕在化したあまたの問題に想いを巡らせた。登場人物は、"体制順応という常識"に逆らったために、ある日突然"ふつうの人"でなくなってしまった三人-、沖縄国体で「日の丸」を焼いた知花昌一、殉職自衛隊員の夫の護国神社合祀に抗した中谷康子、天皇の戦争責任発言で狙撃された本島長崎市長と、もう一組、著者自身とその家族である。かれらの市民生活の日常にそって、問題は具体的に考えられる。著者が、みずからの個人史に重ねて描いた現代日本の物語。
感想・レビュー・書評
-
全米図書賞受賞作(1992年)。#英語 原題は In the Realm of a Dying Emperor。「Realm」には、戦後も日本人の心の深層を支配してきた「象徴」天皇制の影響する領域全般を意味している、と訳者の大島かおりさんが書いている。
再読でも難しかったが、読後の印象は変わらず深い。
合わせて、丸山眞男の『超国家主義の論理と心理』も再読したくなった。
なお『天皇の逝く…』は2011年に増補版が出ています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなかの美訳、沖縄、長崎、山口の抗う人たちにスポットをあてながら昭和後期の民俗をあぶり出している。
-
安濃町図書館-閉架。
現況と重なる。再読。 -
本に読まれて/須賀敦子より
-
日本に染み付いている精神風土、すなわち天皇制と相まった神道的多神教風土の非寛容を、ルポタージュの体裁をとって描いている。第二章では自衛官合祀事件を扱っているが、これは古屋安雄氏の言葉を借りれば、まさに徹底的唯一神信仰であるキリスト教を単一神的に取り込もうとする日本社会の病理のあらわれであろう。