- Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622036562
作品紹介・あらすじ
18歳の女子学生と哲学教授の出会い、そして秘められた恋。今世紀の傑出した二人の思想家の関係が、封印されていた往復書簡をもとに、はじめて明かされる。
感想・レビュー・書評
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-2023.12.08.読了
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とても面白く読んだ。20世紀の著名な哲学者として知られるマルティン・ハイデガーとハンナ・アーレントの、半世紀にも続く秘められた関係を、当時未公開だった往復書簡を紐解くことで描いた本。
読んだきっかけは映画「ハンナ・アーレント」(良作です)を観たことなのだけれど、映画よりもすこぶる面白い。それは本書には、かの哲学者たちの生き様を通じて人間の「どうしようもなさ」が、あえて立川談志的に言えば「人間の業」が、まざまざと描かれているからだと思う。みすず書房刊だけど「文春砲」が炸裂したような生々しさがあるのだ。
本書のなかでは、アーレントは生涯恋は盲目女の子であり、ハイデガーは自分勝手嘘つきクソ野郎であり、ヤスパースはいい人いい人どうでもいい人である。なんと恐ろしいことなんだ。しかし、このどうしようもなさとともに、彼女彼らの輝くべき哲学書は生まれているのだ。
それは貶されるべきものではなく、ひとつの真理として、哲学書と同様に学ぶべきことがあるように思った。すくなくとも私にとっては、腑に落ちた。 -
あのハンナ・アーレントが、第二次大戦後も師であり愛人であったハイデガーとの関係再構築に腐心したというのは驚きだ。
偉大な哲学者といえども一人の人間であることをまざまざと見せつけてくれる本だった。
死後ここまでプライベートを露わにされることを考えると、手紙は死ぬ前に処分しておくべきなのだろう。 -
思想家の秘められた私的な行為や人間関係はそもそもその人の思想とどこまで関係づけて見られるべきものなのか、偉大な思想家にもひそんでいるだろう人間的弱さや傲慢さや醜さは、その人の思想そのものの評価とは切り離して考慮されるのが妥当なのか、という難しい問いである。
大島かおり(訳者) p.181 -
アーレントとハイデガーの思想、プライベートについて。
こんな哲学書があってもいいじゃない。