- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622045557
作品紹介・あらすじ
西欧の文化=権力が病い=病者におしつけてきた不健康な表象を批判し、自らの癌体験をもとに病いそのものを直視した本書は、卓抜なであると同時に、1980年代にひそかに進行していた一つの知的活動を代表する成果。
感想・レビュー・書評
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確かに「隠喩として」「病い」を語るのは危険である。病は病であり、目をそらさず、悪しき意味での文学的想像力に逃げず事実/ファクトを見つめてそこから理知的に類推を重ね「しなやかに」受け容れる態度が必要であろう。そんな「当たり前」のことがなかなかできないぼくとして、ソンタグのこのエッセイはいまだ有効性を備えていると見た。そして、ここからさまざまな現在の「病い」に議論をつなげることもできるのではないか。批判覚悟で書くけれど、発達障害という事象とソンタグのこの批評を接続したいという誘惑を感じる。無駄ではないはず、と
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所在:紀三井寺館1F 請求記号:Browsing
和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=16332
結核、癌、エイズといった病いの隠喩が、患者に「スティグマを押しつける」というソンタグの視点に、はっと目を開かされる。
「あの人がこの組織のガンだ」などといった言い方が、患者にとってどんな影響を及ぼすか。考えてもみずに、当たり前のように口にしてしまっていた事に気づかされる。
そしてそんな隠喩は、それを用いる者にとっても「複雑なものを単純化」し「自分は絶対に正しいとする思い込み」を誘うとソンタグは言う。
「病い」の隠喩にかくされた無意識の差別感情が、多くの文学作品や作家の書簡からの引用をもちいて、巧みにあぶり出されている。
トーマス・マンの『魔の山』が引かれるのは当然のことだろうが、メーテルランクの『ペレアスとメリザンド』までとりあげられていたのは、そういう読み方もできるのかと驚かされた。
自らの癌体験をふまえて書かれた、ソンタグのすぐれた文化批評。