アグネス・グレイ (ブロンテ全集 8)

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622046288

作品紹介・あらすじ

不幸や困難に次々と襲われても、アグネスは決して自分の信念を曲げない-ひたむきに生きる少女の成長を描いた秀作。

感想・レビュー・書評

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  • 児童心理学の知識もなく実習経験もなく、突然住み込み家庭教師…それは大変だろうと思う。おばや親戚の叔母さんから若い頃の話を聞いているよううな印象。ジェイン・エアほどドラマティックではないし、主人公もひたすらストイックなので引き込まれる感じはしないが、それだけに身近な現実味がある。

  • 「街路にはどこも新鮮で生き生きとした感じが漲っていた。町を抜けて、私の足が砂浜を踏みしめ、広々とした、輝く入江の方向へ顔を向けたとき、あたりの景色の印象を伝える言葉に窮した。空と海の深い、清新な青さ。輝く朝の日差しは、緑にうねる丘陵地の下のごつごつした岩肌を見せる、半円形に入江を囲む絶壁の上や、なめらかな広い砂浜に照り返り、はるかに見える海に突き出た低い岩礁の上にも降り注いでいた。岩の上には階層と苔の衣が敷かれ、まるで芝生を頂く小島のように見える。それからとりわけ、キラキラときらめく波に射す陽光はすばらしかった。そして、言語を絶する大気の清浄さと新鮮さ!気温はちょうどそよ風邪の有難さを高めるくらいの暖かさで、風は海全体を揺らし続け、まるで歓喜に沸き返るように泡立ち、きらめきながら波が浜に打ち返すのにほどよく吹いていた。その他何も動くものはない。生き物といえば見えるのは私だけであった。」
    朝の海の清浄な輝きを見た人なら誰しも、アグネスが砂浜を散歩にいって感じたこの長い長い歓喜そのものの海が、目に浮かぶことでしょう。平凡で誠実な我が日々の経過とともに、こんな素敵な朝を迎えるなら、余裕にまかせた悪戯な人々との精神的な磨耗も、洗いざらい忘れてしまえると、わかることでしょう。裕福な人々の自己本位な振る舞いと相対峙したことによって、アグネスは、階段を一歩一歩登るように自分に挑戦し、成長していったに違いない。けれど、そんな客観視もせず、精一杯に生きている姿がほんとうに魅力的なヒロインです。
    著者のアン・ブロンテは結核と喘息のために29歳で亡くなっている。これほどまでに生き生きとすることを実直に描いた人が、シャーロット曰く、英雄的忍耐の末に亡くなったそうである。

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