サイバネティックスはいかにして生まれたか

  • みすず書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622051053

感想・レビュー・書評

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  • 世界を変えるような大きな仕事は大衆の大量攻撃じゃなく、天才の一撃で得られている、か。。。

    たしかに今科学を取り巻く環境では創造性は育まれにくいような不要な社会的おしつけ(数学は不要な部分を排除した簡潔性が求められているけれど)みたいなものが蔓延している気もする。
    学者、特に基礎研究系なんて全然「食べていける」仕事ではなくて、世の中に短期的にみて「役立つ」と思えるものが「儲かる」ようになっているのかも知れない。

    最悪だと思った世界を変えることを諦めて自分を適応させていくか、それとも変えようとするか。
    聞こえがいいのは後者だけど、前者が圧倒的多数のようにおもう。ほとんどの人はおそらく、世界が大きくましになるなんてことは思いもよらず、毎日不満を抱えてしょうがないと諦めて愚痴をいいながら、それでもたまに見つける小さな幸せを喜んだりする。
    そういう日常にとって世界を変えようとがんばるひとは一種の安定性を脅かす敵に見えるのかも知れない。確かに科学の発見が世界を便利にしているにもかかわらず。それがいいかはわからないし、一般の人の目に見えてわかる変化というのはおそらく最先端科学から100年さかのぼったぐらいだろう。

    役に立つか、感謝されるか、褒められるか、評価されるか、というのは科学的発見のぐるぐる変わる世の中の評価軸に対して長期的な意味でのの価値に見合わない場合もある。特に発見直後は。多数派が評価軸を持つように設計された社会ならばなおさら。

    世界を「最悪の状態」にしない、かつ自分が楽しければ、自分がそれを信じていればいいんじゃない、という素晴らしい結論に達した。

  • 自由研究がらみで手を出してみる。Amazonで、送料別で600円。1983年版だが画像があるこっちで登録。そもそもこの本が自伝であるということを知らなくて、原題が『I AM A MATHEMATICIAN』であると知って、「しまった」と思ったわけです。第一章だけ読んで、これはちょっとつらいかなと思ったのだけど、たなぞうの感想を読んでやっぱり読み進めるべきなのかなと悩んでいるところ。第一章から抜粋。「波の問題はあきらかに平均と統計の問題であり、この意味でそれは、当時私が勉強していたルベーグ積分と密接に関係していた。こうして私は、自分が求めている数学の道具は自然を記述するのに適した道具であることを悟り、私は自然そのものの中で自己の数学研究の言葉と問題を探さねばならないのだということを知るようになった。」(p.16)「数学は概して青年の仕事である。それは若さと体力がある時にのみ完全に満しうる資格を要求する知的競技である。若い数学者のうちには才能のひらめきを示しながら一、二の有望な論文を発表した後、昨日のスポーツの英雄を取巻く忘却の淵とまったく同じ境涯へおち込んでしまうものが多い。 だが彗星の如く現われ活動の芽をふき出したとたん,倦怠の生涯におち込んでしまうのを見ることは耐えられぬことである。数学者が線香花火のようでない一生を送るためには、彼は、最高の創造的能力に恵まれた短い春の季節を生涯を投じても消化し切れない位の豊富さと魅力を備えた新しい分野と新しい問題の発見に献げるべきである。若い私を刺激し,それを創始するため相当な努力を献げた問題が、六十台になった今なお、私に最大の要求を加えてくる力を失っていないように思われるのは、私にとって幸いである。」(p.23)ようするに、若いうちに自分の問題を見つけておけよ、ってことですね。関連リンク松岡正剛の千夜千冊『サイバネティックス第二版』http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0867.html

  • 115年前の1894年11月26日に生まれて69歳で没したアメリカの数学者。

    普段ならこのような本は絶対読まないのですが、私はこの世界的に有名な世紀の一大名著・自伝的回想記を、ただ鎮目恭夫が翻訳者だからということだけで読みました。

    因縁は、今年中期の7月12日の『素粒子物理学をつくった人びと(上)』の感想で書きましたが、要は『女に育児はまかせられない』という、人を食った題名の本を書いた鎮目恭夫を断然気に入ってから、彼の本の追っかけをやって難解な本にも挑戦していったということです。

    情報革命がすすむ現代社会と、私たち生きる人間の本質を探究する学問としての情報科学は、デジタル化やフィードバック・システム化によってさらに発展し、一般理論としてのサイバネティックスは諸科学との結合で、経済サイバネティックスや医学サイバネティックスなどとしてますます発達しているようです。

    この本は、詳細な理論的な本ではなく、『神童から俗人へ わが幼時と青春』の続編で第二の自伝的回想記で、成人してからの人間として科学者として成長した1920年位から55年頃までの月日の記述です。

    わくわくする新しい学問の創出の瞬間が、淡々と描かれている様子は読みごたえのあるものです。

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著者プロフィール

1894-1964。ポーランドに生れ、アメリカに渡ったユダヤ人の言語学者レオ・ウィーナーの長子として生れた。天才肌の父のもとで知能早熟児として出発した彼は、9歳でハイスクールに特別入学し14歳でハーヴァード大学に入学、18歳で数理論理学の論文で学位をとる。まもなくイギリスに渡りケンブリッジ大学でバートランド・ラッセルから数理哲学を学び、ついでゲッチンゲン大学にも学び、帰米して1919年マサチューセッツ工科大学講師、34年以後同大学の数学教授。30年頃から神経生理学者と共同研究に従事し、計算機械も生物における神経系も同じ構造をもつことを認め、その数学的理論としてのサイバネティックスを創始する。1948年『サイバネティックス』(邦訳、岩波書店、1958)を著わして生物学、工学、社会学等広汎な分野に関連し、著者の視野の広さと鋭さを示す。著書はほかに『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994、以上みすず書房)などがある。

「2020年 『発明 【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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