祖国のために死ぬこと 新装版

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622072386

作品紹介・あらすじ

「祖国」の観念はいつ生まれ、そのために戦いで死ぬことがどうして神聖な行為とみなされたのか-近代国家の成立と宗教性=超越性を二重化したこの問いは、中近世の歴史家であり、二つの世界大戦を経験した著者にとって、切実な問いであった。12、13世紀のヨーロッパ。それまでの中世の王権が古代的な祭政一致的理念をひきずっていたのに対し、この時代に俗権としての国家は、それ自体聖性を獲得するようになった。パウロの手紙以来、教会組織は、頭であるキリストに有機的に結びつく四肢、すなわち「キリストの体」として、象徴的に理解されてきたが、この身体の隠喩が、王を頭とする「神秘体」としての国家という政治理念に転用されるようになったのである。そして全体の体の健康のためには四肢も切断されうるという比喩にしたがって、祖国のための死が、国家という永久不変の神秘体を防衛する聖なる行為とみなされるようになる。本書は『王のふたつの身体』などで知られる天才歴史家カントロヴィッチの代表的6論文を集成した。わが国の王権や国家の象徴儀礼をめぐる研究にも、大いなる刺戟をあたえる書となろう。

感想・レビュー・書評

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  • カントロヴィッチ『祖国のために死ぬこと』みすず書房、読了。「頭がキリストである教会の神秘体」は「頭が君主である国家の神秘体」にどう置き換えられるのか。祖国概念とそのために死ぬことがどうして神聖な行為なのか。中世神学思想史から解き明かす。『王の二つの身体』挫折組は読むべき一冊です。


    『王の二つの身体』から論集『祖国のために死ぬこと』へ行きましたが、カントロヴイッチが腑分けした政体における自然的身体と政治的身体の統合、法と法人概念を押さえておかないと、それが「善政」を行う当体であったとしても、システムの背景に存在するエートスのリアリティは掴みにくいのではと思う 。

    最近、法律の勉強をはじめたから、「法人」概念(仏教でいう人法一箇じゃないですよ)の経緯がよくわかるといいますか。法人のために使用される<Inc.>という省略記号は、聖ベネディクトゥスがモンテ・カッシーノの岩山に設立した尊敬すべき団体に添えられているってあたりなんですがね。

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