サラエボで、ゴドーを待ちながら―― エッセイ集2 :写真・演劇・文学 (エッセイ集 2 写真・演劇・文学)

  • みすず書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622074762

作品紹介・あらすじ

スーザン・ソンタグのような批評家がまたいつか登場することがあるのだろうか。メイプルソープからブロツキーまで、まぶしいばかりの批評的エッセイを集成。

感想・レビュー・書評

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  • 興味深く読んだのは、「ワーグナーの流体」、「ハリバートンへのオマージュ」、そして書名にもなっている「サラエボでゴドーを待ちながら」。
    中でも、「サラエボでゴドーを待ちながら」まるでドキュメンタリー映画を見ているような印象であった。優れた批評家というのは、音楽、演劇、写真、文学など、どんな分野についても、それなりの一家言を持っているということなのである。

  • 今日は来ないが、明日は来る

  •  『サラエボで、ゴドーを待ちながら』(みすず書房)は、スーザン・ソンタグ(1933-2004)の単行本に入っていない批評を集めたアンソロジーの第2弾。紛争下のボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで芝居の演出を依頼されたソンタグがサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を選んだのは、しごく直感的な結果だった。救いの日、解放の日がいつ来るとも知れぬ戦火の街で、それこそロウソクの火も惜しみながら稽古を続ける毎日が語られる。
     ダンスについて、バレエについて、オペラについて、そしてメイプルソープやアニー・リーボヴィッツなどの写真について、さまざまな媒体に書き残したレビューが収録されている。そして、そこにはつねにアメリカとヨーロッパの距離が介在している。ロラン・バルトについて熱心に書くいっぽうで、ヘンリー・ジェイムズもフォークナーも論じようとせず、シェイクスピアやヴァージニア・ウルフは好きだと言いつつ正面から批評しようとしない。にもかかわらず彼女は正真正銘のアメリカのライターだ。ニューヨークの匂いを濃厚に漂わせた文体は、現代の読者に落ち着き払った狂気とアンビバレンスを体験させる。
     サラエボで過ごした苛酷な日々を、ソンタグはいささか得意げな調子で書きつらねる。演者たちは本来才能豊かな俳優であるようだが、それ以前に生存のための日常の闘い──風呂には何ヶ月も入れず、飲料水の配給を求めて何時間も行列に並ぶ日々──に追い立てられて、堆積した疲労が稽古に暗い影を落としていることを、記録せざるを得ない。「われわが待っているのはゴドーでも、クリントンでもないと思うこともあった。われわれが待っていたのは小道具であった。」 窮乏の中で研ぎ澄まされた果てに生まれた『ゴドーを待ちながら』は、演出者たる著者の魂を揺さぶる。
     「8月18日、午後2時からの上演の終わり近く、ゴドーはきょうは来ない、しかし明日には来るだろうという使いの言葉に続くウラディミールとエストラゴンの長い悲劇的な沈黙のとき、私の眼は涙で痛みはじめていた。観客のだれ一人として音を立てる者はいなかった。聞こえてくるのは、劇場の外から来る音だけであった。国連軍の武装した人員輸送車が轟音を立てて通りを走る音と、狙撃兵の銃声だけであった。」

  • 結局、刺激は、この様な本から得るんだろうなぁ~

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    「1993年に著者はベケットの劇『ゴドー……』を演出すべく戦下のサラエボへと旅立った。この時の苦難と怒りと喜びにみちた経験の記録を中心に、ダンスや写真の最前線、メイプルソープやブロツキーの肖像など、書斎のなかに留まらなかった評論家の熱い軌跡を集成する。『書くこと、ロラン・バルトについて』につづく刺戟的なエッセイ集。 」

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著者プロフィール

1933年生まれ。20世紀アメリカを代表する批評家・小説家。著書に『私は生まれなおしている』、『反解釈』、『写真論』、『火山に恋して』、『良心の領界』など。2004年没。

「2018年 『ラディカルな意志のスタイルズ[完全版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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