解離の病歴

著者 : ピエール・ジャネ 松本雅彦

• みすず書房 (2011年2月17日発売)

作品紹介・あらすじ

19世紀のもっとも卓越した臨床家ジャネによる解離五症例を精選。ヒステリーという病の不思議を鮮やかに洞察し、後世に多大な影響を与えた、精神医学の源流。

感想・レビュー・書評

[しし座さんの感想 · 2012年11月18日]

おそらくガッコの青空市場でもらってきた、「みすず」って冊子で紹介されてたやつ。

[M<Θ￥Θ>Mさんの感想 · 2011年12月4日]

第一章　症例 イレーヌ　　記憶喪失、精神的動揺による記憶の解離
第二章　症例 ジュスティーヌ　　ある固着観念の病歴
第三章　症例 リュシー
　　１　別人格の出現　　無意識の活動、誘発した夢遊病状態下にみる人格の二重化
　　２　リュシーの再発　　系統性感覚麻痺、心理現象の解離
第四章　症例 アシール　憑依の一例と現代的悪魔祓い
第五章　症例 ナディア　身体を恥じる強迫観念、それに由来する痩せ願望

[phnetさんの感想 · 2011年3月3日]

力動精神医学の第一人者、ピエール・ジャネ。フロイトと同時代に活躍し、
下意識、解離、心的エネルギー、意識野の狭窄などの重要概念を生み出した。

本書はジャネ自身が関与した膨大な症例から、訳者が精選した五症例を集めたものである。

母の死の衝撃から記憶を喪失したイレーヌ。コレラ恐怖に呪縛されたジュスティーヌ。
夢遊状態の背後に別人格をもつリュシー。悪魔憑きに苦しめられるアシール。
摂食障害のナディア。
ジャネが患者の苦悩に深く共鳴し、きめ細かな関係を基礎に
治癒への道を探る過程が綿密に綴られる。
今日でいうところの心的外傷をうけた出来事の記憶喪失とフラッシュバック、
解離性障害と統合失調症との鑑別、多重人格障害における副人格の出現のプロセス、
ヒステリーと感覚麻痺、成熟拒否の強迫観念などが見事に現れたこれらの症例は、
古典的範例として後世に多大な影響を与えた。
豊かな症例を水脈とするジャネの理論は、
現代に通用する実践性を備えているといえよう。
精神療法黎明期の症例報告であると同時に、
臨床における症例の重要性を教えてくれる、精神医学の源流がここにある。