ヒトの言語の特性と科学の限界

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076322

作品紹介・あらすじ

近代科学の限界を考えるさい重要なのは、人間の自然言語の特性に関する言語使用問題の再検討ではないか。歴史の中の科学者とは何かを考えてきた著者の到達点。

感想・レビュー・書評

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  • NDC(9版) 401 : 科学理論.科学哲学

  • 自由意志はあるのか、主語とは何か、自然言語で考えるとはどういうことなのか。

  • ヒトの言語の特性と科学の限界
    著者 鎮目恭夫(1925-2011)[しずめ・やすお]

    【版元】
    四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/184頁
    定価 2,700円(本体2,500円)
    ISBN 978-4-622-07632-2 C0040
    2011年8月10日発行

    〈今日われわれが近代科学の限界を問題にする場合に原理的にまず重要なことは、人間の自然言語の特性に関する「言語使用」の問題の再検討ではなかろうか。この問題に取り組むために第一に必要なことは、ヒトの正常な各個体(すなわち正常な各人)の脳には「自分は、自分が何をしようとするかを多少とも自分で決める存在である」、すなわち「自分は、自分の意志を決定する主体(要するに、自由意志の持ち主)である」という言葉で表現される観念が不可避的に生じる(必ずしも意識にははっきりとは浮かばない仕方で)という事実をしっかり見つめることではないか〉

    『自我と宇宙』『人間にとって自分とは何か』などの著書や、ウィーナー、シュレーディンガー、バナール、ダイソンなどの翻訳書をとおして、著者は、20世紀中葉以降の自然科学の基礎的・原理的問題と、20世紀中葉以降の地球上のヒトとその社会の政治的イデオロギー的問題との両面の関係に、長年にわたり正面から取り組んできた。本書もまた、その延長線上にある。
    〈我々が日常言語で「心」とか「精神」とか「霊魂」とか「神」と呼んでいるものと近代科学の自然像との関係は、近年ますますこじれてきたのではないか〉。チョムスキーやウィーナーの見解をテコに、この混乱を打開しようとする一つの試みである本書は、歴史の中に生きる科学者とは何かを考えてきた、著者のメッセージの集成でもある。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/07632.html

    【目次】
    まえがき

    第一部 ヒトの言語の特性と科学の限界――チョムスキーの言説の批判的考察をテコにして考える
    1 問題の提起
    2 チョムスキーが言った科学の限界とは
    3 「意図」や「意志」という名詞と「決める」という他動詞の特性
    4 ウィーナーが指摘した科学と技術と人間との関係
    5 デカルト哲学へのチョムスキーの見解
    6 人間の自然言語の宿命
    7 チョムスキーの言語理論の心髄と限界
    8 科学の限界を考える――その1
    9 科学の限界を考える――その2
      (イ)言葉は概念を表現する
      (ロ)人間が抱く概念を限定している物理的な枠
      (ハ)物事の因果関係について
    むすび

    第二部 つぶやき――物理と論理と実感との「はざま」
    1 古典物理学と近代物理学との共通性と異質性をめぐって
    2 量子力学以前の力学と熱力学との関係について
    3 ノイマンの量子力学的観測の理論と「シュレーディンガーの猫」について
    4 プリゴジンの過渡現象の熱力学について
    5 プリゴジンが立ち入らなかった問題
    6 『論語』とキリスト教聖書でいう「天」と「神」について

    第三部 前著『人間にとって自分とは何か』への補足――虚と実、幻影と実在との関係の吟味
    a 工学の視線から――バーチャル・リアリティとテレ・エグジスタンス
    b 医と脳科学の視線から――健常者と病者のさまざまな幻覚的現象について
      まえおき
      1 幻肢(phantom limbs)
      2 病態失認または病識欠失(医学英語ではanosognosia)という症状について
      3 個人にとっての「自己の存在」という観念の種々相
      4 『臨床医が語る脳とコトバのはなし』から
      5 著者が体験した別種の疑似幻覚二件について(2010年)
    c 意志決定の主体としての自己と、バラモン教以来の梵我一如の悟りについて

    第四部または最後の追補

    索引

  • 言語学、哲学、脳科学等の切り口で、(科学を含む)人間の思考・思想を考察しています。著者は今年の7月下旬に亡くなっており、本書は遺稿とのこと。生前の執筆が間に合わなかったのか、第4部追補が途中で切れており、なんとも重い余韻が残りました。

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著者プロフィール

1925年東京に生まれる。1947年東京大学理学部物理学科卒業。科学思想史専攻。科学評論家。2011年歿。著書『性科学論』(1975)、『自我と宇宙』(1982)、『科学と読書』(1986)、『人間にとって自分とは何か』(1999)、『ヒトの言語の特性と科学の限界』(2011、以上みすず書房)、『心と物と神の関係の科学へ』(1993、白揚社)ほか。訳書 シュレーディンガー『生命とは何か』(1951、岩波新書、2008、岩波文庫)、バナール『歴史における科学』(1956)『宇宙・肉体・悪魔』(1972、新版2020)、ウィーナー『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994)、メダワー『若き科学者へ』(1981、新版2016)、ダイソン『多様化世界』(1990、以上みすず書房)ほか多数。

「2020年 『宇宙・肉体・悪魔 [新版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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