数値と客観性――科学と社会における信頼の獲得

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622077817

作品紹介・あらすじ

なぜ数値になると人は信頼(ときに過信)するのか。ギリスピーとクーンに学んだ科学史家が、19-20世紀イギリスの保険数理士、フランスの技術官僚、アメリカ陸軍技術団の3例から、社会現象が数値化されるプロセスを徹底追究。ひるがえって自然科学の領域での数値化の意味を逆照射する。エキスパート・ジャッジメント(専門家判断)に対する信頼がゆらぐとき――客観性の文化と政治をめぐる科学史・科学技術社会論の基本図書。

感想・レビュー・書評

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  • 一時、公共工事の無駄が議論されたことがあったが、その際には「費用便益分析」により内容を見直すべきだとの話が有力であった。しかし、本書第7章によれば、その議論の客観性も結構怪しいものであるらしい。
    「科学的客観性」とはいわゆる属人生を排して各人の主観によらないことを目指すものであるが、そのようなものがどのようにしたら可能であるのか、これは極めて難しい問題である。

  • 原題:TRUST IN NUMBERS: The Pursuit of Objectivity in Science and Public Life(1995)
    著者:Theodore M. Porter
    訳者:藤垣裕子

    【みすず書房の内容紹介】
     なぜ「数字は正しい」のか。なぜ数字になると信頼するのだろう。/数値にした瞬間に一人歩きするものは世に多い。GNP、PISA、放射線量。どうして星や分子や細胞の研究で成功した数値化という方法が、社会の事象をあつかうにも妥当と認められるようになったのか。ギリスピーとクーンに学んだ科学史家が、19-20世紀イギリスの保険数理士、フランスの技術官僚、アメリカ陸軍技術団の史実に即して徹底追求。ひるがえって自然科学にとっての数値化の意味を照射する。/ローカルノレッジ(局所的な知識)を越える卓抜な技術としての標準化・定量化。専門家の裁量に不信の目が向けられるとき。エキスパート・ジャッジメントか客観性か。/科学者共同体と社会の鮮やかな政治的・文化的構図を描き、1997年4S(国際科学技術社会論学会)Fleck賞受賞。「日本語版への序」には、東日本大震災とフクシマの原子力発電所事故から2年後の日本の読者にあてたメッセージをふくむ。科学技術社会論をリードする訳者が明快な解題を付す。
    http://www.msz.co.jp/book/detail/07781.html


    【めも】
    ・二段組みで文字がびっしり。
    ・本文に登場する術語や妙に長い文章のなかには、違和感を感ずることがある。本書を読み終わったいま、私の日本語運用能力の危険があぶない。
    ・今回の訳者は科学社会学(というか科学技術社会論か)の方だが、贅沢ながら統計学の方による翻訳も読んでみたい。


    【目次】
    目次 [001-002]
    日本語版(2013年)への序(セオドア・M・ポーター カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて 二〇一二年九月二十三日) [003-008]
    序 [009-015]
    謝辞(カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて 一九九四年三月) [016-017]

    はじめに――客観性という文化 019

    第一部 数の力
    第1章 自然記述の技巧の世界 029
      知識を没個人化する
      定量化と実証主義
      尺度の標準化
      生物学的標準化

    第2章 社会を記述する数値が妥当とされるまで 057
      統制と妥当性
      規則と介入
      カテゴリーをつくる
      情報

    第3章 経済指標と科学の価値 077
      社会的な技術としての定量化
      不毛な理論
      技術者と物理学者による経済学
      公共事業に値段をつける
      ワルラスとポリテクニシャンとの対立
      経済学、物理学、そして数学

    第4章 定量化の政治哲学 108
      客観性/対象化
      透明性/表層性
      フランスを統計社会にする
      二次元の文化

    第二部 信頼の技術
    第5章 客観性に対抗する専門家――会計士と保険数理士 129
      会計と没個人化のカルト集団
      会計の客観性
      階層性と差異――イギリスの公務員
      紳士的な保険数理士
      特別委員会は正確な規則を求める

    第6章 フランスの国家技術者と技術官僚の曖昧さ 159
      経済の定量化の文脈
      作動する定量化精神
      公的効用の評価
      収益の予測と利便性の見積もり
      エリートとしての技術者
      フランスにおける行政文化
      テクノクラシー

    第7章 アメリカ陸軍技術者と費用便益分析の興隆 200
      アメリカの工学における経済的定量化のはじまり
      当局の権威によって正当化される数値
      技術団の数と標準化への圧力
      連邦政府省庁の経済的実践の不一致
      一様性を求める圧力
      経済学者による乗っ取り

    第三部 政治的な科学者共同体
    第8章 客観性と専門分野の政治 253
      官僚制――アメリカのスタイル
      推論の規則
      生命科学の検定と治療の施行
      心理テストと実験心理学
      客観性は専門性に置き換わるか?

    第9章 科学は共同体によってつくられている? 282
      交渉と自律性
      強い共同体と弱い共同体
      不透明な境界と力をもつ外部者

    解題(藤垣裕子) [299-314]
      1 現代社会における数量化の意味 299
      2 数値による信頼と専門家によせる信頼――「客観性」の文化研究 300
      3 「科学的」とは何か――科学の地図論 304
      4 科学的とは何か――促進されるものと探求できなくなるもの 306
      5 科学者の社会的責任論へ 310
      註 313

    訳者あとがき(二〇一三年四月 藤垣裕子) [315-316]
    原註 [xli-lxxiv]
    参考文献 [xii-xl]
    索引 [i-xi]

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