他の岬――ヨーロッパと民主主義 【新装版】

制作 : [解説] 國分功一郎 
  • みすず書房
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本棚登録 : 41
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622079996

作品紹介・あらすじ

〈いまヨーロッパを悩ませているテロリズムの背景には、ヨーロッパがもたらした価値そのもの――もちろん民主主義を含む――に対する強烈な拒絶反応がある。「ヨーロッパは岬に過ぎない」という言明も、そうした反応の中ではおそらく、謙遜を装った傲慢な言葉として受け止められるであろう。デリダにはそうした可能性が十分に分かっていたはずである。だからこそ彼はl’autre cap(別の岬、別の方向性)と言うだけでは不十分であり、le cap de l’autre(他者の方向性)と言うだけでも不十分であり、capの論理を超え出て、l’autre du cap(キャップとは異なるもの、キャップの他者)にまで至らねばならないと述べていたのである。〉(國分功一郎)

ソ連・東欧の崩壊後、噴出するナショナリズムと人種主義の暴力が統合を進めるヨーロッパに暗雲を投げかけていた1993年に刊行された本書は、二十数年を経た現在、まさに必読書として蘇った。ヨーロッパの難民問題とテロ、日本の民主主義の危機について、本書を通して新たに考えたい。

感想・レビュー・書評

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  • デリダの中ではかなり読みやすい論文である。現代までつながるヨーロッパの「自己」と「他者」の問題であり、現代のヨーロッパの移民の問題、テロの問題を考えるのであれば是非読んでほしい作品である。デリダ自身のアイデンティティかなり影響しているのだろうか。

    本書でも言及のあるポール=ヴァレリーの『精神の危機』と合わせて読むのも良いだろう。近代と現代でヨーロッパが感じる「危機」の変化が分かるだろう。

  • 冷戦構造の崩壊後の“ヨーロッパの危機"に書かれたものであることを鑑みると、やはり、その後の新自由主義の流れは、恐ろしく政治的な局面を複雑にしてしまったなと思う。いや、デリダがここで警鐘していることが、ある種そうなってしまったということでもあるが。いま生きていたらなにをどう書くのか。

  • 直接的にドイツのヒットラーに言及しているかと思ったがそうではなかったようである。

  • ポール・ヴァレリーの問いかけをベースに、Capという言葉を、資本、首都、岬、帽子などなどと意味を変えながら、ヨーロッパと民主主義を脱構築し、開かれたヨーロッパと来るべき民主主義を展望する、というところかな???

    ベルリンの壁の崩壊、ペレストロイカの進展、そして湾岸戦争直前という政治的な状況のなかで、ヨーロッパや民主主義について、語る。しかも、その掲載されたのは、新聞の特別号ということから考えると、デリダのなかでは、分かりやすい類いに属する本のはず。

    最近、デリダの入門書を読んだので、なんとかなるかな、と思って、トライしてみたが、やっぱり、なんのことだか、な文章であった。

    あんまり、こういうのを真面目に理解しようと思わず、たんなる言葉遊びと思って読んだ方が、精神衛生上よさそうだな。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784622079996

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著者プロフィール

ジャック・デリダ(Jacques Derrida):1930-2004年。仏領アルジェリア生まれ。エコール・ノルマル・シュペリウール卒業。西洋形而上学のロゴス中心主義に対する脱構築を唱え、文学、芸術、言語学、政治哲学、歴史学など多くの分野に多大な影響を与えた。著書に『声と現象』『グラマトロジーについて』『エクリチュールと差異』『ヴェール』(シクスーとの共著)『獣と主権者Ⅰ・Ⅱ』ほか多数。

「2023年 『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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