- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622086123
作品紹介・あらすじ
物語は紀元前45年の手紙に始まる。この時カエサル(前100-前44)はガリア征服戦争を完了の後ルビコン川を渡ってイタリアに侵入、ひきつづく内乱を制し、あらゆる政敵を倒し、古代ローマ帝国の最高権力者となっていた。
自信と才気にみちあふれ、誰をも魅了するオーラをまとった覇者カエサルのまわりには、軍人、政治家、祭司はもとより文化人、名家の美女など思惑を秘めた多彩な人物たちが蠢いていた。詩人カトゥッルス、妻ポンペイア、魔性の女クローディア、その弟の無法者クローディウス、エジプト女王クレオパトラ… 互いのあいだで交わされる心理ゲームのような手紙のやりとりが、暗殺までの8ヶ月を描きだしてゆく。
書中、カエサルが唯ひとり本心を明かすのは、無二の友トゥリヌスだ――「思うに、軍隊の指揮官や、国家の指導者の孤独より深い孤独は一種類しかない。それは詩人の孤独だ……」。頂点に立つ者の運命を知ったとき、自らの声のみにしたがって生きてきたカエサルの心は揺れ始め、不可知の存在に目を凝らし始める――。
人間の本性をテーマに数々の名作を織り成したアメリカ演劇・文学界の巨星ソーントン・ワイルダーが’いつかこの手で描きたい’とあたためてきた人物がカエサルだった。1948年に刊行されて以降、版を重ね、長く読み継がれてきた現代の古典である。
感想・レビュー・書評
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評価が難しい。書簡形式で昔の戯曲風なのだろか。じつは原著はされたのは1948年で、なぜ今、翻訳が新刊として出るのか? カエサルファンとしては新しい視点でよめて楽しいのだが、結局なんの本なのか?カエサルと周辺の人、ローマ社会? 唐突なカエサルの暗殺場面と浅い伏線。タイトルほどには最後を描いていない。つまらなくはないが、なにか、すっぽかされたような読後感がのこる。
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この <書簡体小説> は1948年に出版されたとのことであるが、クレオパトラやキケロ等々、カエサルを取り巻く人びとの手紙で暗殺直前の半年間を描くという斬新な手法は今なお色褪せることはない。ワイルダーは本作を <ファンタジア> と呼んでいるようだが、それでも紀元前の古代ローマ絶頂期の空気の一端は異様な生々しさをもって読み手に伝わってくる。