憲法9条へのカタバシス

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 49
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622086734

作品紹介・あらすじ

憲法9条とりわけ2項をどう解釈すればいいのか。碩学のローマ法学者が導く結論は、曖昧さの余地がない。カタバシスとは、周辺へ下降すること、タイムトンネルをくぐって過去へ下りていくこと。ストレートな9条論、ソクラテス・メソッド(対話)を用い比喩と日常語を駆使して説く改正手続論、圧巻の漱石論(大幅改訂)と鷗外論(書き下ろし)、自衛戦争を正当化したとの通説を鮮やかに覆すホッブズ論まで、クリアに見透す9条の構造。

感想・レビュー・書評

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  • 【書誌情報】
    A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/224頁
    定価 4,968円(本体4,600円)
    ISBN 978-4-622-08673-4 C1032
    2018年4月25日発行
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08673.html

    【目次】
    目次 ([i-iii])

    序――日本国憲法9条の政治的弁証に向けて 001
      0
      1
      2
      3
      4
      5

    1 日本国憲法9条2項前段に関するロマニストの小さな問題提起 027
      1 問題
      2 若干の迂回
      3 問題の置き換え

    2 法学再入門:秘密の扉 ぜんべえドンとオハナぼう、番外篇――ポンポコ山に憲法改正の危機 051
      事態を見つめよう
      誰のものでもない
      ポンポコ山の桃太郎
      まず落ち着いて徹底的に解剖しよう
      自分が座っている椅子を自分で蹴飛ばしてはいけません

    3 知性の尊厳と政治の存亡――三谷太一郎『人は時代といかに向き合うか』 068

    4 政治はどこにあるか 079

    5 夏目漱石『それから』が投げかけ続ける問題 085
      0 序
      1 ジャンル
      2 設定
      3 問題
      4 問題の変幻、「胡麻化し」の先送り
      5 問題のトポグラフィー
      6 échangeの連鎖
      7 「胡麻化し」の深層
      8 二つの自然
      9 壁
      10 エピローグ

    6 森鷗外と「クリチック」 128
      0 序
      1 考証学
      2 「クリチック」
      3 江戸末期考証学者たちのlibertinage
      4 自律的知的階層
      5 文芸化の脈絡
      6 小さな分岐
      7 お玉
      8 安寿
      9 結

    7 Hobbes, De civeにおけるmetus概念 162
      0 序 
      1 政治(公権力)形成の直接の土台 
      2 基層たる概念構成 
      3 Thoukydides 
      4 Hobbes再解釈の試み 

    8 日本国憲法9条改正の歴史的意味 205
      1 
      2 
      3 

    あとがき(2017年師走 木庭顕) [211-212]
    初出一覧 [212]
    索引 [213-217]
    著者略歴 [218]



    【初出一覧】
    序 (書き下ろし)
    1 『法律時報』87巻12号、2015年
    2 『法学教室』419号、2015年(若干改訂)
    3 『UP』506号、2014年
    4 『創文』438号、2001年(細部改訂)
    5 木庭顕『現代日本法へのカタバシス』羽鳥書店、2011年(大幅改訂)
    6 (書き下ろし)
    7 『国家学会雑誌』130巻3・4号、2017年
    8 『法律時報』89巻13号、2017年

    * 5について、
    「論文6 のために鷗外を読む中で、『それから』についてなお残っていた疑問が解けた。実際コントラストの発見を通じて『それから』論は初めて私が標榜する歴史学に近づいたと言える。これが論文5 改訂の理由である」(あとがき)。
    * 『現代日本法へのカタバシス』は、新版をみすず書房から近刊の予定。民事法に焦点を絞った一冊として甦る。

  • 現在の自分の学力では難しすぎて読了できず。
    すごく面白いことを言っている気がするのだが、しかし一般読者に読ませる気で作られていないと思う(字の細かさとかも含めて)。

  • 「カタバシス」とは地の底、死者の住む場所に降りていくことを意味するギリシャ語。
    【書評】間宮陽介(朝日2018.06.23)

  • “カタバシス”とは
    http://www.hatorishoten.co.jp/items/4873509

  • [トピックス]憲法9条の構造をローマ法学者が見透す - みすず書房

    みすず書房のPR
    憲法9条とりわけ2項をどう解釈すればいいのだろうか。今まで一度も真に理解しないまま、粗雑な議論で花芽を摘んでいいはずがない。カタバシスは「下降行」、転じて、冥府に降り、過去の人物に遭うこと、さらに転じて、時間軸を遡ることをいう。タイムトンネルをくぐり、明晰に著者は立論する。
    9条は、パリ不戦条約が自衛権留保によって空洞化したという苦い歴史的経験の上に立つものであった。自衛概念の危険性は、ホッブズが遙かトゥーキュディデースの書物を最深部まで読み込み、その克服の見事なロジックを組み上げたものであった。
    〈こうして、既に9条1項は、一見不戦条約をそのまま継承するものに見えて、自衛のための戦争をも否定する〉〈2項はさらに、占有線を越えない実力形成といえども内部をトータルに軍事化して他国の軍事化に対抗し抑止力(報復力)を得るものであればこれを禁ずる趣旨である。これが自衛権拡張の主要なヴィークルだからである〉そして〈政治システム存立にとって不可欠の原則を宣明したこれらの規定は憲法に不可欠であり、削除することは政治システムの破壊に等しいから、改正は違法である〉

    精緻にしてストレートな9条論、ソクラテス・メソッド(対話)を駆使して説く憲法改正問題、近代市民社会の基底を問う圧巻の漱石論・鷗外論(書き下ろし)から、自衛戦争を正当化したとされる通説を鮮やかに覆すホッブズ論まで、ローマ法を専門とする碩学がクリアに見透す9条の構造。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08673.html

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著者プロフィール

1951年、東京に生まれる。著書に、三部作『政治の成立』(1997)『デモクラシーの古典的基礎』(2003)『法存立の歴史的基盤』(2009、以上東京大学出版会)、『ローマ法案内──現代の法律家のために』(羽鳥書店、2010、[新版]勁草書房、2017)、『現代日本法へのカタバシス』(羽鳥書店、2011、[新版]みすず書房、2018)、『[笑うケースメソッド]現代日本民法の基礎を問う』(2015)『[笑うケースメソッド II]現代日本公法の基礎を問う』(2017、以上勁草書房)、『法学再入門 秘密の扉 民事法篇』(有斐閣、2016)、『憲法9条へのカタバシス』(みすず書房、2018)、『誰のために法は生まれた』(朝日出版社、2018)ほか。

「2021年 『人文主義の系譜 方法の探究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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