- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622086918
作品紹介・あらすじ
事件とも言われた1975年の刊行以来、カルトの書となってきた実験的自伝文学が40年ぶりで新訳。自身を「わたし」「あなた」「彼」と呼び換えながら、それまでの人生と作品を彼一流の明晰さと含羞で語る200あまりの断章。巻頭には祖父母や両親、幼年期から青年期の自分、記憶に残る風景などの写真アルバム。巻末には自筆年譜とキーワードの索引。この一冊でロラン・バルトの魅力がよくわかる。最適の訳者を得た、理想のバルト入門!
感想・レビュー・書評
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https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1378904詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出版社によっては『彼自身によるロラン・バルト』とも訳されている本。
1975年に刊行された作家による自伝的評論ですが、論理的な構成に沿って進み、「私」「彼」「君」と次々に自分自身を呼びかえていく様子に、自分という人物像を限りなく分析しようとする試みが見え、バルトのエクリチュールにより自身が他者対象化された小説のようにもなっています。
幼年期の彼や、過ごした町の写真が多数掲載されていますが、内容との関係性がよくわからないものもあり、彼の遊び心が見られます。
常に模範的な理知的な人物というイメージでしたが、毎日ピアノを弾いているのに、ピアノの練習を嫌がってしないため、いつまでたってもピアノがうまくならないというようなことも「流麗な文章で」書かれており、人間味を感じます。
夜にはベッドに入り、文学的な本と推理小説を2冊読むことまで語られ、「わたしが好きなもの、好きではないもの」なども語られ、『枕草子』のよう。
グレン・グールドが好きでアルトゥール・ルービンシュタインは好きではないのだとか。
ジッドのエクリチュールへの憧れとバタイユの不安感への共感も語られます。
本人が語る内容は、ファンにはたまらないご褒美といったところ。
分厚く難解なところも多々ありますが、単なる自己エッセイではない、バルトのエクリチュールを学ぶ上でも意味深い一冊です。