戦中と戦後の間 新装版

著者 :
  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622087786

作品紹介・あらすじ

本書はいわゆる“15年戦争”の真只中において思想的学問的発足をした著者の、緑会懸賞入選論文(1936)にはじまる戦中の25篇、戦争の“暗い谷間”を脱した8.15を刻印する「近代的思惟」の小論より、マッカーシズムの旋風に倒れたE・H・ノーマンの回想(1957)まで戦後の36篇、あわせて61篇の論稿を年代順にあつめたものである。
日本史のなかでもきわめて特異な、この政治的社会的環境のなかにあって、著者の学問的な営みがいかなるものであったかを、本書は物語るであろう。「およそ人間に関することで、私に無縁なものは何一つとしてない」(テレンティウス)本書に見られる想像力と思惟の比類ない結晶は、そのみごとな例証であろう。
入手困難をきわめる著者の文章がここにまとめられ、読者の久しい要望にそうことのできるのはこの上ない喜びである。

感想・レビュー・書評

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  • 丸山真男が1936年から57年の間(戦中から戦後)如何なることを学び考え発表したか、投稿論文を主として講演や書評等々61遍の論稿を集め纏めたものである。
    政治学・政治思想史・歴史学について、欧米や日本の学者の思想や論文の紹介・解説、いろいろな学術書の書評、さらには後輩や学生への学問に対するアドバイス等々、彼の思想や主張はもとより、学び・研究すること対する姿勢やその意味を如何なく教えてくれる。政治学・政治思想史さらに社会科学・歴史学等のエッセンスから、それらについて読むべき古典まで手解きしている。M・ウエーバーの「価値判断の諸問題」や「資本主義の精神」について、この本は「主食の中の主食で、よく咀嚼すれば全文悉く栄養分になります」と言う。
    太平洋戦争から敗戦そして戦後の占領期、政治思想史の学者として、自身の出征や復職・戦後の肺結核による入院生活などの環境下、ブレずに淡々と思考し研究を継続する姿には驚嘆である。内容やテーマは当時の事象や軋轢も扱ってはいるが、その問題意識や論理は一貫して本質的で、極めて冷静である。学問に向かう姿勢と情熱がひしひしと伝わってくる。思想は時代環境を超える、基本がしっかりした芯のある深い研究や思考は今でもまったく古びない。丸山真男とはそんな思想家であったのだと今更ながらに痛感する。
    従来、彼の代表的な著名論文はどれも難しくなかなか親しめず、突き放されるような冷たさすら感じていた。それは自分がそれを解るレベルに届いていなかっただけだ。それぞれの大作に昇華する前の思考のパーツを見せて貰った気がする。この論稿集を読み通して、初めて彼の豊かさ・深さそして真摯で圧倒的な学者の迫力を感じさせられた。

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著者プロフィール

1914年大阪に生まれる。1937年東京大学法学部卒業。1940年助教授、1950年教授。1961-62年ハーバード大学特別客員教授。1962-63年オックスフォード・セント・アントニーズ・カレッジ客員教授。1971年退官。1975-76年プリンストン高等学術研究所員。1996年8月15日歿。主要著作『政治の世界』(1952)『日本政治思想史研究』(1952)共編『政治学事典』(1954)『日本の思想』(1961)『増補版 現代政治の思想と行動』(1964)『戦中と戦後の間』(1976)『「文明論之概略」を読む』(1986)『忠誠と反逆』(1992)『丸山眞男集』全16巻・別巻1(1995-97)『丸山眞男座談』全9冊(1998)『自己内対話』(1998)『丸山眞男講義録』全7冊(1998-2000)『丸山眞男書簡集』全5巻(2003-04)『丸山眞男回顧談』全2巻(2006)『丸山眞男話文集』全4巻(2008-09)『丸山眞男話文集 続』全4巻(2014-15)『丸山眞男集 別集』全5巻(2014-)『丸山眞男講義録 別冊』全2冊(2017)。

「2018年 『戦中と戦後の間[新装版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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