中国くいしんぼう辞典

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622088271

作品紹介・あらすじ

中国は広い。東西南北に風土は異なり、いくつもの民族や文化が混在している。しぜん、飲食の伝統も土地によってさまざまだ。時代が流れ、人びとの身なりや住む家、街のようすはすっかり変わってしまったが、食卓に上る器の中の食べ物だけは、いまなお中国の文明に特有の痕跡をとどめている。
そんな人びとの肺腑に沁みついた味の数々を、「家で落ちついて食べる料理」「街角で気ままに楽しむ料理」「レストランで味わう精緻な料理」に分け、情感ゆたかに描き出す。
中国でおいしいものを追い求める“吃貨(くいしんぼう)”たちの胃袋をとらえた、垂涎必至の絶品エッセイ!

(目次抄)
◎家で食べる
紅焼肉/青団/春餅/炸醬麵/猫耳朶/窩頭/鮁魚餃子/包子/手把肉/麻豆腐/涮羊肉/粽子/元宵/自来紅(ほか全27編)
◎街角で食べる
豆腐脳/牛大碗/過橋米線/煎餅/豆汁児/臭豆腐/驢打滾児/爆肚児/茴香豆/鴨血粉糸湯/雲吞麵/川味牛肉麵(ほか全30編)
◎飯店(レストラン)で食べる
夫妻肺片/龍井蝦仁/万三蹄/西湖醋魚/九転大腸/西瓜鶏/獅子頭/古老肉/牡丹燕菜/毛肚火鍋/烤鴨/詩礼銀杏(ほか全26編)

感想・レビュー・書評

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  • 中国各地の美味しい料理を家庭、屋台、レストランという食べるシチュエーション別に分けて紹介する食いしんぼうのためのエッセイ。


    著者は北京出身なので全体で見るとやはり北京料理が多いけれど、旅行で訪れた先の料理についても熱心に調べて紹介している。マカオで食べられている「馬介休」がポルトガル経由で入ってきた「バカリャウ」、つまり塩ダラだと知って、直近で読んだ越智敏之の『魚で始まる世界史』とこんなところで繋がるのか!と感動した。海ってすごいぜ。逆にヨーグルトが西洋から入ってくるずっと前から、西寧ではヤクの乳を使って作られてたんじゃね?という仮説も面白い。
    さらに驚いたのは広東料理の「古老肉」。これは酢豚のことなのだが、元々は西洋人向けに開発されたメニューだったらしい。甘酸っぱい味付けを好む西洋人に好評だったので広州でレギュラー化し、のちに広まっていったのだという。まさか中華料理の代表みたいな顔してる酢豚にこんな誕生秘話があったとはなぁ。
    読んでいると同じみすず書房からでている焦桐の『味の台湾』を思いださずにいられないんだけど、あちらががっつりと自伝的な語りを含んでエッセイとしての深みをだしていたのと比べると、本書はパーソナルな部分と言っても子ども時代の他愛ない思い出話や旅行の記憶にとどまっている。詩人とライターの違いというところだろうか。
    その代わり、料理の誕生や命名にまつわる逸話には詳しい。やたらと皇帝がでてきて権威を持たせるのはどこも一緒か。台湾の牛肉麺がカリフォルニア経由で中国に入ってきて「加州(カリフォルニア)牛肉麺」と呼ばれてる話は国際関係が見えてきたなぁ。一方で、宦官が買い物にきていた地域では玉子料理に睾丸の隠語である「蛋」を使わない、とかいう眉唾物のオモロ話を真顔で書いてたりもする。
    一番美味しそうだった料理は広州の雲呑麺。ラーメンにワンタンが入っているもの、ではなくて、麺の種類も打ち方もスープも雲呑麺という料理のために選ばれている雲呑麺。飲んだ帰りに啜りたいのってこういうやつよ。
    中国料理の本を読むと、日本食って中国の文化圏内で発展してきたのだなぁとしみじみ感じる。文字情報から想像できる範囲が広く深く細かいのだ。そしてとてもお腹が空く。

  • 中華料理は私たち日本人にとっても、とても身近なものだ。レストランで食べるだけでなく、麻婆豆腐や青椒肉絲など幾つかの料理は日常的な家庭料理のレパートリーにもなっている。
    それなのに、この本で紹介されている料理のほとんどを私は知らなかったし、正直、味や見た目を想像することも難しい料理もたくさんあった。
    その幅広さや奥深さー地域によって材料も調味料・調理方法も異なるーがとても興味深く、中国人でも地元民でなければ知らないような食べ物を、彼らの食べ方で、食べてみたいなぁと心から思った。

  • Netflix配信の「美味の起源」という中国の地方料理を紹介する番組を見ていて、あの広大な土地の多様性というものを考えた。この映像作品群は一帯一路を目指す中国もダイバーシティを意識していることを醸し出すプロパガンダ映画かな。

    それはさておき、著者は紫禁城の近くで生まれ育った生粋の北京っ子だそう。「食は広州にあり」という言葉を耳にしてきた私にとっては、知らないことばかり。辞典と冠しているが、本当に様々な料理が紹介されている。いわゆるグルメ本ではなく、ご本人が本当に美味しいと感じた料理について書かれた随筆集。コロナのオミクロン株で冬季・北京オリンピックの開催が危ぶまれているが、早く美味しいものに出会える旅ができる環境にならないものだろうか。

  • くいしんぼう辞典、というだけあって中国各地のさまざまな料理を紹介した一冊。
    ただそれはガイドブックやグルメサイトのような
    直接的に説明するのではなく、
    その料理ができた時代背景や街の様子、歴史などを交えて紹介してくれるので面白い。

    こちらで生活していておなじみのものから、
    初めて聞いたものまで様々だし、
    聞いたことがあっても注文したことがないものもあり
    最初から最後まで楽しめるし、
    読んだあとも「あれを今度食べてみよう」という
    ワクワクを提供してくれる。

    日本語ができる中国人が書いたのかと思いきや、
    こちらで出版したものを訳したものだとか。
    通りで、表現が詩的で抒情的。
    原文は読んだことがないが、中国語文で書かれた美しい文章を
    (こちらの人は本当に流れるような美しい文章を書く)
    その雰囲気を壊さないまま、日本語にうまく訳した
    訳者の方にも敬意を表したい。

  • 読むだけで食べたくなる!イラストもいいけど、写真も欲しかったかな。
    あとルビだけじゃなくて、ピンイン表記も欲しかった。

  • 読んでいて心地よい。

  • 広い中国・多様な気候風土、長い歴史から織りなされる料理の数々に驚かされます。
    見たこともない食材。
    想像もつかない調理法。

    そして著者の食レポぶりが素晴らしいです。
    調理しているところを見ているかのような臨場感、その料理にまつわるエピソードや歴史、名前の由来、など83の全ての料理一つずつに書かれています。
    家、街角、レストランと3つのシチュエーション別に選ばれているのも想像しやすくて、物語のような楽しさです。

    薬膳を勉強していることもあり、食材や香辛料の組み合わせも興味深かったです。

    「それぞれの土地には風土に根ざした滋味があるものなのだ。」

    気になるのは西瓜鶏。
    鶏と出汁を中身をくりぬいたスイカの中に詰めて蒸し上げる!?
    いつか現地で食べてみたいです。

  • 中国の食の歴史社会文化背景がとっつきやすい文章で記されている。

  • ページを繰るたびに食欲を刺激される一冊だった。
    家・街角・レストランの章立ての下、李楊樺氏の挿絵と共に綴られる著者の巧みな文章で紹介されるのは、日本のファミリーレストランや"町中華"ではまず見かけない料理の数々だ。「香椿魚児」(チャンチンの若芽の衣揚げの小魚見立て)や「沔陽三蒸」(沔陽風の3種の蒸し物)や「臭豆腐」(醱酵豆腐)等が特に気になった。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/634465

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著者プロフィール

文筆家、書籍編集者。1960年代末、北京は紫禁城のほど近くで生まれ育った生粋の「老北京」。同地における旧時の習俗や食文化に詳しく、「人民日報」「新華デイリーテレグラフ」「北京晩報」「香港商報」などにコラムを執筆し、識者としてテレビ、ラジオのグルメ番組にも出演する。著書に『吃货辞典』(『中国くいしんぼう辞典』川浩二訳、みすず書房)のほか、北京の伝統文化を伝える『京味児』『京味児食足』『京範児』『北京三字経』、麵文化を語る『一麵一世界』などがある。

「2019年 『中国くいしんぼう辞典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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