誰も正常ではない――スティグマは作られ、作り変えられる

  • みすず書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622090915

作品紹介・あらすじ

◆正常/異常をめぐるスティグマは、ただ漫然と生じたものではない。科学や医学はつねに権威をもって、「異常」とすべきもののカテゴリーを作りだしてきた。だがもはや「誰も正常ではない」と言えるほど、正常者/異常者を語るスティグマは、その土台を失っていると著者は言う。
◆「文化がスティグマと精神疾患や発達障害を結びつけられるのなら、間違いなく文化は、その結びつきに切れ目を入れることもできるはずだ。」そう確信すべき理由は、スティグマの歴史の中に詰まっている。本書は、18世紀以降今日まで、精神病者や障害者に対するスティグマが、時勢や文化に応じていかに繰り返し再構築されてきたか、その変遷を描き出す。置き忘れてきた史実や異文化に学び、主体的に未来を作るための、最初の一歩。

感想・レビュー・書評

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  • とにかくボリュームがあるのですべて読みきれない。ところどころかいつまんで読んだ。精神疾患にまつわる歴史的経緯を説明しながら、それらの前提にある「正常性」に問いを投げかける。

    スティグマが強化されるのはそれが個人の責任だとみなされる時。逆にアフリカの一部の地域では、精神疾患がいわゆる魔術的なものだとされており、誰も個人に責任を負わせることはない。そういった意味では先進国と発展途上国、どちらの国が生きやすいだろうか?

    精神疾患からくる身体症状が、家族のケアを促すなど副次的利益をもたらすという視点は面白かった。僕自身パニック障害があり、身体症状が顕著に出るので家族からのサポートが比較的手厚いと感じる。逆にうつ病で寝たきりといったような倦怠感からくるものを、ひとはケアの必要性があると感じられるだろうか。「あの人はうつ病なのか?」という主観から抜け出すのが難しいように思う。いっそのこと、鬱は脳の病気だと断定してもらったほうがケアされる側としてはありがたいのではないか。

    Newspicks パブリッシングの「弱さ考」を連載している編集長の方は、この著者の思想に近いと思った。現代はとにかく「自立」を促されているように思う。しんどい時くらい、最終的なゴールを自立に置かなくてもいいんじゃないか。いっぱい頼って頼って、いつか恩さえ返せればいい。むしろ返さなくてもいいのかもしれない。この辺りについてはより深く考えていきたい。

  • 「精神病」が資本主義や戦争、科学などの社会・文化の変化を通してどのように認識されるようになり、どんなスティグマが生まれてきたのか、変化していったのか……という問題についての本。また、時代と文化の違いによって苦痛の表現、原因を何に求めるか、そもそも病気なのかすら変わってくること、精神病を持つ(と認識される)人自身や家族がスティグマを内面化することによる多大な影響にも目を向けている。射程が広くてボリュームのある本なので漫然と読んでて論点がよくわからなくなってくることがけっこうあった(笑)。
    精神病や障害を持つ一見「役立たず」な人が社会で疎外されるっていうのは、単に差別という問題に還元されるのではなく、あくまで社会全体に浸透している価値観の問題なんだと思った。健康でただ単に仕事ができない人、不快な役立たずを許容できない資本主義的価値観の社会があって、その基準が適用されているだけなのだから、アメリカの雇用の例のように社会の役に立つ面を示せば認められるけれども、働けない病人への価値観の変革になるわけではない。
    それを変革しようとすれば(文中では「働かない権利」なるものへの言及もあるが)、結局社会に相当の豊かさと余裕が必要だし、資本主義から離れられなさそうなのは難しいなと感じた。

  • あまりにすごかったので読書会やりたい…

  • [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC14387938

    [鹿大図書館学生選書ツアーコメント]
    「正常とは有害な幻想である」
    「スティグマは」日本語の「偏見」や「差別」に該当する言葉だと言われておりますが、この本では精神疾患や発達障害に対する「偏見」や「差別」を主に扱っており、
    その変遷を社会的・文化的に述べた本となっております。
    スティグマがこれまで構築と再構築を重ねてきた歴史を持つからこそ、私たちはその
    流れを変えることができる可能性を持っていることに、著者は気づかせてくれます。
    私たちが分けているであろう正常・異常の境界は存在するものなのか、考えさせられる一冊です。

  • 社会で様々な精神病が認知され、受け入れられ、配慮されるようになった昨今、「普通」でいる人の方が少なくなったように感じる。しかし、現代に至るまで「見えない」病気である精神病が誰もがおこりうる病として認知されるのには様々な問題があり、多くの観察と時間を必要とした。そしてその背景には多くの人が忌み嫌う戦争の影があり、戦争が精神病への捉え方と深い関わりがあることを忘れてはいけないと感じた。

    『フロイトが患者にカウンセリングする際、入口と出口を別々に設置得ることで患者が誰かに治療中であることを悟られないようにしていた。また、患者は他の患者と顔を合わせることがなかったため、自分がフロイトの唯一の患者であると思うことが出来た。』という部分にたいして、占いやホストといった閉鎖的な接客業に対しても有効なのでは?と考えた。

  • 図書館で借りたけどボリュームがあるし内容も難しくて挫折。
    スティグマということばを知れただけよかった。(差別・偏見という意味)

  • ★ 広国大の電子ブック ★
    Maruzen eBook Library から利用

    【リンク先】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000131143

  • ハードでした

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著者プロフィール

ジョージワシントン大学、自閉症 & 神経発達障害研究所教授。文化人類学者。エスノグラフィー研究所ディレクター。Anthropological Quarterly誌主幹。専門はエスニシティー、ナショナリズム、心理人類学、スティグマ、自閉症など。心理人類学者としてはおもにアフリカ(コンゴ民主共和国など)・韓国をフィールドとし、韓国において自閉症に関する初の疫学的調査を行った(Kim, Y. S. et al., “Prevalence of autism spectrum disorders in a total population sample,” American Journal of Psychiatry, 168(90): 904-912. [Nature誌が2011年のEditor’s Choiceに選出])。著書に、Unstrange Minds: Remapping the World of Autism (Basic Book, 2007)(『自閉症──ありのままに生きる:未知なる心に寄り添い未知ではない心に』佐藤美奈子・神尾陽子・黒田美保訳、星和書店、2016年)ほか。

「2022年 『誰も正常ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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