政治報道とシニシズム: 戦略型フレーミングの影響過程 (MINERVA社会学叢書 25)
- ミネルヴァ書房 (2005年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623044498
作品紹介・あらすじ
公衆をシニカルにしたのは政治家だけではない。メディアにも責任がある。新聞やテレビが、政治家の権謀術数や私利私欲にばかり焦点を合わせたために、公衆と政治家とジャーナリストの間で「冷笑の螺旋」が止まらなくなったのだ。本書が取り上げるフィラデルフィア市長選挙と医療保険改革論争についても同様である。実証研究は、記事を意味づける枠組みの違いが、すなわち、ニュースフレームの違いが、有権者のシニシズムを高めることを明らかにしている。報道は公共利益のための政治を伝えることができるだろうか。
感想・レビュー・書評
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確認先:川崎市立中原図書館
政治報道の中にあるシニシズムが実際の選挙行動においてよくも悪しくもどのような影響を蒙るのか。具体的な検討はこれまであまりなされたとは言いがたいものがある―それも、コンサルタントではなく、政治理論の観点からは、である。
カペラらはフィラディルフィア市長選をネタに、投票行動に与えた影響を丹念に下調べしている。そこには(いまや貶めるためのスティグマ装置と日本語環境下で見なされるようになった)「ポピュリズム」などといったラベリングを想起させる言葉を用いることはない。
惜しむらくは、シニシズムと投票行動を直結させるがあまり、シニシズムを受容する土壌とその土壌の醸成に結果として貢献してしまった政治に対する倫理の崩壊に対する言及が若干浅い部分が存在することだが、少なくとも、「あとは野となれ山となれ」的な自暴自棄がみられないだけに、そうした自暴自棄に対する分析の必要があるのかと痛感する読後感を抱くのでその部分は安堵できる作品でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[ 内容 ]
公衆をシニカルにしたのは政治家だけではない。
メディアにも責任がある。
新聞やテレビが、政治家の権謀術数や私利私欲にばかり焦点を合わせたために、公衆と政治家とジャーナリストの間で「冷笑の螺旋」が止まらなくなったのだ。
本書が取り上げるフィラデルフィア市長選挙と医療保険改革論争についても同様である。
実証研究は、記事を意味づける枠組みの違いが、すなわち、ニュースフレームの違いが、有権者のシニシズムを高めることを明らかにしている。
報道は公共利益のための政治を伝えることができるだろうか。
[ 目次 ]
1章 大統領と下院議長とプレス
2章 シニシズムかリアリズムか
3章 ニュースのフレーミング
4章 フレーミング効果の認知的基盤
5章 研究のデザイン
6章 戦略型および争点型報道からの学習
7章 活性化する政治的シニシズム
8章 シニカルな公共精神の機能―メディアフレームの拡張
9章 シニシズムは伝染する
10章 シニシズムの螺旋を断ち切るには
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