中国をめぐる安全保障 (MINERVA人文・社会科学叢書 127)

制作 : 村井 友秀 
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623048595

作品紹介・あらすじ

「台頭する中国」の実態は、はたしていかなるものか-。近年、急速な拡大路線をとり、多くの巨大プロジェクトを進めている中国であるが、その将来は未だ不透明である。他方、戦後日本では、軍事を中心とした安全保障研究がながらく軽視されてきたため、中国の安全保障の現状はよくわからず、理解も足らず、極端に単純化された中国イメージがはびこる大きな要因となっている。本書は、中国の陸海空軍の装備と実力はもとより、政治・経済との相互作用や、周辺諸国との緊張関係までも視野に入れつつ、第一線の研究者が最新情報に基づいて、中国の安全保障の実態を解明する。

感想・レビュー・書評

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  •  2007年刊の論文集。書名のテーマを多方面から網羅しており、百科事典的にも使える。現状を踏まえ更新してほしいぐらいだ。
     軍事近代化に対する米の懸念。中露「パートナーシップ」。盧武鉉大統領のバランサー論。少数民族問題。海洋重視への転換。軍民両用技術や民間技術の軍事転用。現状の萌芽が本書の時点でそこかしこに見える。
     他方、東・南シナ海への軍事的進出が現在よりぐっと少ないなど、明らかに異なる点も多い。武警の章はあれど海上法執行機関の章はない。軍事力の評価も心なしか甘めだ。特に、世界の工場又は市場としての中国には言及されていても、経済や技術の面で中国自身が外部に進出し影響力を及ぼす、との観点が本書では希薄なのに気づく。台湾も東南アジアも、更には日米すらも現在はこの点から無縁ではないだろう。本書刊行から10年あまりで状況は大きく変わったものだと思う。

  • 書名通り、中国をめぐる安全保障について様々な視点から紹介している著書。
    編者も言っているように、内容は手広く中国に関連する安全保障についての理解ができるようになっている入門編。中国を囲む各国との関係や戦略から始まり、中国の軍事ドクトリンや党軍関係、さらにはC4Iや軍事ビジネスなどのコアな分野まで触れている。現在の日中関係においては、報道に踊らされるままに中国を脅威として扱わないために、また同時に楽観視しすぎないために、中国の意図や軍事的な状況をしっかり把握していくことが必要である。中国はかなり戦略的に各国の視線を意識しつつ行動する国家であると同時に、日本で言及されることの少ない一種の"弱さ"を内在している。安全保障面では、台湾・アメリカ・朝鮮半島・インド・日本などに囲まれており、また財政的・技術的に限界があり国際社会からの協力も満足に得られない状況下で長いスパンでの積み上げを行っている時期なのであろう。日本は安全保障の問題になると戦後の分裂した複雑なイデオロギーの問題が絡みがちだが、防衛のためだけではなく協調のためにも、本書で扱われているトピックは真剣に研究していかなければならない問題だと考える。

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