会津という神話: 〈二つの戦後〉をめぐる〈死者の政治学〉 (MINERVA人文・社会科学叢書 158)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623056361

作品紹介・あらすじ

幕末維新期、戊辰戦争を頂点とする一連の戦いにおいて、会津の戦死者はナショナルな祭祀から排除された。彼らと、生き残った会津の人々とが経験した「犬死に」-この非業と不条理に満ちた死の経験は、その後どのように「克服」され、「解決」されていったのか。本書では、戊辰戦争や西南戦争での戦死者を会津の人々がどのように認識し、自らのアイデンティティを組み立てていったのかを明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 戊辰戦争において賊軍とされ、靖国神社の合祀者のむしろ敵方とされてしまった会津の死者たち。その汚名を雪ぐことが大きな重荷となりながらも、昭和3年の秩父宮と松平勢津子の婚礼からは逆に白虎隊などが忠義の模範とされ、徳富蘇峰からも持て囃され、独伊両国からも注目を浴びるに至って、戦争の忠実な兵士として先頭を走るような存在にまでなってしまった会津の人たち。この著者は死の意味を問うことを、昭和19年の京都大学における田辺元の講義から始め、まるで哲学の本であるかのように、ハイデガー、ヤスパースを引用が序章です。そしていきなり明治10年の西南戦争で官軍の警視隊小隊長として戦死した会津出身の「阿蘇の佐川官兵衛」に筆が進みます。これも会津人としての思いに目を向けます。また司馬遼太郎の「王城の護衛者」などの歴史小説が会津に一定のイメージを与え、戦後の観光史学へ与えた影響にも興味深いものがあります。そして戊辰戦争から既に150年ほどを経て、2つの敗戦、それぞれの死者が既に遠い第3者になりつつある中で、会津若松と萩市の姉妹都市を拒否するという思いまで書いています。非常にユニークな構成の本で、大変興味深いものがありました。

  • 序章でハイデガーやヤスパースが引用されて出て来るので,一体これはどういう本なのか戸惑ったが,本編は至って地道な史論である.「死者人称論」という視点が面白い.

    ただ「観光史学の迷走」というのは,具体的にはどういう現象なのかがよくわからなかった.なお後になって気付いたが,本書は,博論『死者の政治学』(リンク先は巨大pdfにつき注意) の加筆版のようである.

  • [ 内容 ]
    幕末維新期、戊辰戦争を頂点とする一連の戦いにおいて、会津の戦死者はナショナルな祭祀から排除された。
    彼らと、生き残った会津の人々とが経験した「犬死に」―この非業と不条理に満ちた死の経験は、その後どのように「克服」され、「解決」されていったのか。
    本書では、戊辰戦争や西南戦争での戦死者を会津の人々がどのように認識し、自らのアイデンティティを組み立てていったのかを明らかにする。

    [ 目次 ]
    序章 死者と共同体
    第1章 会津藩の戊辰戦争―近代会津へのプロローグ
    第2章 「阿蘇の佐川官兵衛」をめぐる記憶と忘却
    第3章 近代会津アイデンティティの系譜
    第4章 「雪冤勤皇」期会津における戦死者の記憶と忘却
    第5章 戦後会津における「観光史学」の軌跡
    終章 “二つの戦後”をめぐる“死者の政治学”

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  • 2010.04.25 朝日新聞に紹介されました。

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著者プロフィール

2020年6月現在
摂南大学外国語学部准教授

「2020年 『平成時代の日韓関係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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