自然の権利: 環境倫理の文明史

著者 : ロデリック・フレイザーナッシュ 松野弘

• ミネルヴァ書房 (2011年4月1日発売)

感想・レビュー・書評

[別府さんの感想 · 2015年3月12日]

原題：The Rights of Nature: A History of Environmental Ethics (1989).
著者：Roderick Frazier Nash(1939-)

環境倫理分野では古典。


【目次】
推薦の言葉
『自然の権利』復刻版刊行に寄せて
『自然の権利』復刻版への序文
文庫版への序文
日本語版への序文
環境問題への思想史的展望―刊行によせて
まえがき
凡例

プロローグ　倫理の拡大と急進的環境主義への展開
　「自然権」思想から「自然の権利」思想へ
　「環境運動」の新しい倫理的志向性
　　地球という名の奴隷解放
　　自然保護思想から環境主義思想の文脈へ
　「次なる革命」としての環境主義思想
　　自然権哲学の伝統への回帰を

第１章　「自然権」から「自然の権利」へ
　「自然権」思想の誕生
　自然権思想の浸透と革命の波
　古典時代の自然へのまなざし
　自然の客体視
　「人間中心主義」への挑戦
　“拡大化された共同体”概念の登場
　自然の「支配者」から自然的共同体の「一員」へ
　功利主義による人間中心主義の超越の可能性
　動物に権利を！
　人道主義的な動物保護立法の限界
　急進的自然観の台頭
　倫理の拡大とソールトの思想
　「人間中心主義」による超越
　ソールトの歴史的意義

第２章　アメリカの環境主義とそのイデオロギー的起源
　環境主義のイデオロギー的起源とは？
　「自然の権利」への認識の欠如
　「生態学」登場以前の生態学者、ソーロー
　拡大化された共同体意識
　人間の幸福のための自然保護
　ミューアの原生自然体験
　国立公園運動の展開
　二元論を崩壊させた進化論
　生物への倫理的世界への拡大
　動物虐待禁止運動への進展
　人道主義の歴史的意義
　自然保護運動のもう一つの期限
　環境倫理学の先駆者、エヴァンズ
　『宇宙的な親族関係』

第３章　生態学が生物学的世界を拡大する
　「生態学（エコロジー）」概念の周辺
　生態モデルのさまざまな試み
　「相互依存」の認識へ
　「生命への畏敬の念」―シュヴァイツァー
　環境倫理学の父―アルド・レオポルド
　「山の身になって考える」
　生態学による倫理思想の深化
　「土地倫理」概念の射程
　急進性ゆえの障害
　アルド・レオポルドの“再発見”
　ミュリーとデュボスの貢献
　『沈黙の春』出版の衝撃
　レイチェル・カーソンの位置
　ウィルソンと「バイオフィリア」思想
　「資源として無用な存在」の「存在価値」
　実現しつつあるレオポルドの理想

第４章　宗教の緑化
　「宗教の緑化」の出発点
　ユダヤ＝キリスト教的伝統の告発
　アニミズム破壊が自然搾取を生む
　聖フランチェスコの霊魂的平等主義
　「神の信託管理人思想」と環境倫理
　初期の「神の信託管理人思想」
　ベアーの新解釈―三つの原理
　“人間と自然との関係を考える信仰の会”
　「神の国」の概念と倫理の拡大
　ホワイトヘッド派コッブの貢献
　宗教的色彩を帯びる環境主義
　農業への注目
　「東洋思想」というもうひとつの源泉
　スナイダーの環境思想
　東洋思想―人間と自然への指針
　インディアン―アメリカ最初のエコロジスト
　確かな世界観となった「環境神学」

第５章　哲学の緑化
　環境危機への認識から
　「倫理」そのものにひそむ矛盾
　自然の法的権利をめぐる問題
　「樹木の法的当事者適格」
　社会契約へ自然を取り込む
　「ものいわぬ自然」の権利は無意味
　「道徳的多元主義」による再定式
　人間を超えた倫理の拡大
　「動物の解放」運動
　倫理はどこまで進化するか？
　「動物の権利」というハードル
　環境主義とフェミニズムとの接近
　ディープ・エコロジーへ
　伝統的自然保全運動への批判
　人間の利益と生態系の利益は同一
　動物権主義と生命中心主義の敵対
　平等主義的な生命中心主義
　生物以外の事物への拡大
　ガイヤ＝地球生命体仮説
　動物開放派の全体論者への反論

第６章　自然の解放
　「今度は自然が解放される番」
　アナーキズムと生態学が結びつく
　「やがて来る革命」のイメージ
　自然保護と暴力に訴える市民的反抗
　制度改革運動の進展
　環境主義者間の深刻なミゾ
　「絶滅危惧種保護法」制定の意義
　「絶滅危惧種保護法」の修正への動き
　グリーンピースの直接行動
　ワトソンの過激な行動
　人道主義改革運動の広がり
　「海の人間」イルカの解放
　動物の権利のための“実力行使”
　戦う“アース・ファースト！”
　不法な妨害活動の実践
　暴力か？　非暴力か？
　“核”と地球の運命

エピローグ　奴隷制度廃止論、環境主義、アメリカ自由主義の限界
　奴隷解放運動との類似
　自由主義―自然権思想の拡大
　生物学的差異の問題
　自らの文明そのものの変革へ
　奴隷制度廃止への四つの選択肢
　倫理思想をめぐる“戦い”
　“自然をめぐる南北戦争”再発の危険　

訳者あとがき
文庫版への訳者あとがき
復刻版への訳者あとがき
主要参考文献
人名・事項索引