- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623063123
作品紹介・あらすじ
「大正の歌麿」との呼び声高く、美人画の名手として数々の作品を残した竹久夢二。夢二は、アメリカ・ヨーロッパに滞在する中で、いかなる出会いを経て、どのような苦悩や葛藤を抱き、その画業を成し遂げてきたのか。数々の資料と独自の調査をもとに描き出す、筆者集大成の書。
感想・レビュー・書評
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会議ではじめて岡山を訪れ、1泊余分に泊まって、帰りの半日を後楽園に遊んだあと、いくつもある美術館の中から、なんの躊躇もなく選んだのが夢二郷土美術館。そこのショップで、3000円という値段にもかかわらず買ったのが本書。それは一つには、竹下夢二が異国=海外でなにを感じたかという海外体験を知りたかったこともあるが、筆者があの『マッカーサーへの手紙』を書いた袖井さんだったということも大きい。夢二の海外体験が読めると思ったが、実際は、アメリカ、ヨーロッパの日本人社会で自分の絵を売り、その金で旅行をしようということであった。夢二は、また生来金銭感覚がなかったようで、いつも金のやりくりに困っているし、女なしではやっていけないという性格をもっていた。―これは芸術家ゆえの宿命かもしれないが。ともかく夢二はまずハワイ、そしてアメリカの西海岸カリフォルニアを訪れ、ついでヨーロッパへ向かう。ヨーロッパでフランスに寄れたのに寄らなかったのは、船中で人からハンブルグの女はいいという噂を聞いたからである。つまり、かれはまずドイツのハンブルグからヨーロッパ旅行を始めたのである。それはともかく、袖井さんがこのヨーロッパ編で問題にするのは、夢二伝説の一つである、夢二がユダヤ人をナチスから救った人間かということである。袖井さんはいろいろ調べ、結論としてそんな証拠はみつけられなかったという。そう思う人には腹立たしい結論であろうが。本書には夢二がこの米欧で画いた絵、スケッチもたくさん入っている。それは一般に夢二の作品と呼ばれるものとは共通点をもちつつも、また違った趣があって楽しい。
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夢二の訪米、訪欧を丹念に追跡した作品。夢二は、創作意欲の旺盛な時期を過ぎており、慣れない海外で満足のいく仕事をさせるのは非常に困難で、おまけに持ち前の浪費癖もあり、周囲の人々は、かなり苦労させられたものと思われます。 海外渡航を持ちかけ、同行した翁久允が、パトロンではなく、ジャーナリスト、文筆家、小説家、移民文学の開祖であったことも、不運の一つで、現地で意見が分かれ、決別となったことも致し方なしとの思いを強くしました。