- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623092185
作品紹介・あらすじ
本書は、18世紀に欧米で現れた人権概念の現代までの世界史を鳥瞰する。「普遍的人権」概念は様々な抵抗を受けつつ拡張と収縮を繰り返してきた。世界貿易と資本主義の拡張に伴い、「普遍的人権」概念を他地域に押しつける植民地主義的人権論は、反動を引き起こしつつも、西欧からその他地域へと広がってきた。子供、女性、同性愛者、環境保持の権利等「新しい人権」概念も含め、その成立と展開、変容を辿る。
《原著》Peter N. Stearns, Human Rights in World History, Routledge, 2012.
感想・レビュー・書評
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人権についてグローバル・ヒストリーとして記述した本。
人権は、「人が生まれながらにもっている権利」ということなんだけど、その概念がでてきたのは18世紀のヨーロッパである。ということは、それは「天から与えられた」ものではなくて、社会的な構築以外のなにものでもない。アメリカの独立宣言にもあるように「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる」と微妙な形で表現されている。
私は、人権が社会的構築であるということは、「人権」という概念の価値を損ねるものではないと思っていて、人間が「自然に」、DNA的なプログラムとしてではなく、人間としてそういう概念を生み出し、そこから自分たちの未来の社会を創設していこうという尊い概念だと思っている。
とはいえ、それはきわめて欧米中心の概念で、それが欧米以外に「押し付けられる」ようになると、それはそれで困ったことで、しかも、それを押し付けようとする国がダブルスタンダードで、自分はそういう行動をとっていなかったりすると反感も多いだろう。
まあ、そんなふうに考えながら、この本を読んでみたんだけど、いろいろな発見があった。
著者は、人権が18世紀くらいの発明であるということを前提にしつつ、それにつながっていく概念や法律などが歴史的に存在したことを西洋だけでなく、東洋の歴史もみながら、まずは整理していく。
そのうえで、ヨーロッパで生まれた人権という概念が欧米どのように深まり、広がっていったか、そして、時期によって、それが押し戻されたりということ、そして、いかにその概念が他国に押し付けられたについて、冷静に整理していく。
人権という概念は、長期的な歴史でみるとなるほど広がっているわけだが、それは直線的なものではなく、時代によって、地域によって、さまざまな混乱や逆行があったことがわかって、そこが新たに学べたこと。
著者は西洋人なのだが、その辺りの記述の丁寧さ、客観性が想像以上のもので、日本人であるわたし以上に、「人権」という概念を価値判断を離れてみているなと感心した。そこが、歴史家ってこういう感じなんだな〜、思った。
もう一つ面白いと思ったのは、20世紀後半、第2次世界大戦後、人権という概念が世界に広がり、国連での世界人権宣言の採択や植民地支配からの独立国がつぎつぎに同様の概念を憲法に織り込んでいったということ。そして、その後、体制が変化したり、憲法が改正されても、ほとんど人権に関する条文は修正されなかったということ。
この流れから思ったのは、ある意味、「人権」というものは、天から与えられた事実というより、そうなったらいいなというある意味ユニバーサルともいえる人間の理想、願いがあるのではないかということ。
だが、それが他の理念との優先順位などの関係で、人権が最重要視されない、したくてもできない現実があるのだなと思った。
なんか、そういう複数の大事なことがあるなかでの一つの理想的な価値としての人権ととらえてみると、そこからなにかが始まる足がかりがあるのかもと思った。 -
東2法経図・6F開架:316.1A/St3j//K
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なんか権力ということが、頭に浮かんだな。
権能とかね。