科挙と官僚制 (世界史リブレット 9)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (82ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634340909

作品紹介・あらすじ

伝統中国社会において科挙とはいかなる存在であっただろうか。公平かつ客観的な試験であり、だれにでも社会的成功をかちとることができる。そんなイメージが科挙にはつきまとっている。これは試験制度という視点からとらえた虚像にすぎない。科挙を、中国の政治・社会・文化構造のなかに置き直してみるとき、科挙の果たした真実がはじめて明らかになる。

感想・レビュー・書評

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  •  リブレット(Libretto)という東芝のノートパソコンがあったが、「リブレット」とは音楽用語に、オペラやオペレッタの歌詞を印刷した小冊子をいうそうだが、この「世界史リブレット」はここからネーミングしたのだろうか。確かに100ページにも満たない小冊子である。

     いわゆる「科挙」とはどんなものだったかを手っ取り早く知るにはちょうど良い。時代とともに科挙の試験方法も変化するが、その制度の違いを時代別に並べ図解して見せたり、「清明上河図」など当時の街の風景や宮城の様子を描いた絵図などを限られたページ数の中にうまく配置し、読み進めるのに参考になった。

     また、数字としてのデータもあり、中でも「宋代進士合格者分布図」は北宋時代と南宋時代での合格者数の変化は、その時代の背景を如実に表しており大変面白い。

     科挙を受験するためにどんなものを学ぶ必要があるのか。試験科目は経義(経書の解釈)、詩賦(作詩)、論策(論文)の三つであった。時代を経るに従い出題形式が固定化し、受験勉強も暗記中心のマニュアル化したものになっていったそうだ。このような詰め込み式の勉強の仕方が、もしかしたら現代の中国に生きていて、いまだに中国人にノーベル賞受賞者がいないという話題になるとき、ちょっと顔を出したりするのかもしれない。頭のいい中国人はいっぱいいるのにね。

  • 科挙について時代の変遷を追いながら比較的平易に書かれてます。
    王安石と司馬光は新法党、旧法党の対立だけでなく、科挙に何を重視するかでも対立してたんだね(実務と道徳)
    『儒林外史』は何度も科挙に挑戦する人を描いた本。

    科挙は見た目は平等だけど、教科書買ったり、塾にいかないと受からないから金持ちしか無理やった。
    科挙合格のマニュアルなんかもあった(これがまた、凄く勉強しろ!と言っている笑)

    進士科に合格しても、下位の合格だとポストがあかなくて相当暇だったらしい。だから暇人は副業してる人もいた。

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著者プロフィール

平田茂樹(ひらた・しげき)
大阪公立大学大学院文学研究科教授。専門は宋代史。
主な著書に『科挙と官僚制』(山川出版社、1997年)、『宋代政治結構研究』(上海古籍出版社、2010年)、『宋代政治構造研究』(汲古書院、2012年)、『過程・空間:宋代政治史再探研』(共編、北京大学出版社、2017年)、『史料与場域―遼宋金元史的文献拓展与空間体験』(共編、中西書局、2021年)などがある。

「2022年 『宋代とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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