イスラームの生活と技術 (世界史リブレット 17)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (82ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634341708

作品紹介・あらすじ

技術は生活の様式を変え、新しい文明の誕生を促す。イスラームの教えに接したアラブ人は、大征服以降、在来の学問や技術を実に熱心に学びとろうと努めた。イスラーム文化の驚異的な発展は、製紙技術の導入と改良の結果であったし、砂糖をふんだんに用いた豊かな食生活の出現は、高度な製糖技術の開発の賜にほかならなかった。本書は、イスラーム文明はどのような技術革新にもとづいて発展したのかを探る書。

感想・レビュー・書評

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  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:209||セカ||17
    資料番号:10126355
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  •  イスラーム史の大家が送る、文字通りイスラーム世界の生活と技術を簡潔に解説した本。レポートの課題図書を読む前段階として読んだ。

     内容は製紙技術、サトウキビ栽培と製糖技術の2つに大別される。前者に関しては、アッバース朝が唐とのタラス河畔の戦いで紙漉き職人を捕虜としたことからイスラーム世界に製紙技術が伝わったことがよく知られている。

     当時イスラーム世界ではパピルスによる紙や羊皮紙が代用されたが、製紙技術の伝来により行政文書をより早く、より多く発行できるようになり、強力な中央政権王朝が完成した。もともとアラビア語が公用語になっていたこともあるが…

     後者に関しては目から鱗。7C末(ササン朝末期)にイラン・イラクにサトウキビが伝来して以来、カリフ、政府高官、大商人の私有地(日本でいう荘園みたいなもの)で広くサトウキビ栽培が行われるようになった。

     こうして砂糖は富裕層の甘味料の他、祭りの際の捧げ物やらゆる病気を治療する医薬品として珍重されるようになった。砂糖は富の象徴だったんだなあとこの時思った。

     また、歴代イスラーム国家は国有地でサトウキビ栽培を行い、製糖を行ったとされていた。製糖技術は大変優れていて、12~13Cには精度の高い白砂糖や氷砂糖を製造することができた。

     そして世界中に製糖技術を伝え、大航海時代以降、中南米のプランテーションでのサトウキビ栽培が普及する前段階を作ったのはイスラーム商人だったのだ。

  • 取り上げるトピックは「紙」と「砂糖」。「紙」からは文化活動などが、「砂糖」からは農業社会のあり方や交易商人の活躍などが、と、前近代イスラーム社会の様々な諸相がみえてくる。

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著者プロフィール

東京大学東洋史学科卒業、同大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学、早稲田大学で教授を歴任。東洋文庫研究部長。史学会理事長を務める。文学博士。東京大学名誉教授。専攻は、アラブ・イスラーム史。著書に『中世イスラム国家とアラブ社会』『マムルーク』『イスラーム世界の興隆』『イスラームの国家と王権』ほか多数ある。1942~2011。

「2011年 『イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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