バルカンの民族主義 (世界史リブレット 45)

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  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634344501

作品紹介・あらすじ

「民族の悲劇」はなぜ、バルカンで生じるのであろうか。凄惨なボスニア内戦を見るにつけ、だれしもが感じた疑問であろう。バルカンは「ヨーロッパの火薬庫」と称さて以来、「紛争地域」「危険地域」とのイメージがつきまっている。バルカンの民族主義を近現代史のなかで検討し、この地域の諸民族の対立の背景を探ると同時に、諸民族が協力しようと模索した側面にも光を当てて、民族主義からの脱却の展望を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は最初に「本書では、このようなバルカン地域に近代以降生じた民族主義の歴史的背景や特質を概観するとともに、それを乗り越えようとする動きにも注目して、「紛争地域」「危機地域」「悲劇の地域」といった、この地域にたいするステレオタイプなとらえ方を再検討してみたい。」と述べている。バルカン地域は、複雑な民族構成、複雑な宗教分布、そして今なおこの地域の人にくすぶる対立の感情がいつ火を噴くか分からない。昨年のコソヴォの独立はバルカン問題が現在進行形であることを世界に見せつけた。人は争いが起これば平和を希求する生き物でもあり、また逆に平和に慣れると勇ましい発言や行動にあこがれる生き物でもある。最終章に「バルカン地域協力の可能性」というテーマでバルカン連邦構想の系譜や連繋を探る動きなどを紹介しているが、多くの人がバルカン諸国の連繋と協力の必要性を痛感しているにもかかわらず、その流れは主流ではない。また、古くはトルコ、そしてロシアとオーストリア・ドイツのゲルマン人、20世紀後半以降ではソ連とアメリカという外部からの容喙もこの地の安定を阻害し続けた。そうしたなかで、著者はこの地域に対して中立的立場に立つことのできる日本の役割を訴えて本著を結んでいる。一人の日本人として、著者の訴えに耳を傾けずにはいられない。

  • バルカンの民族主義について歴史的な視点から解説。セルビアで早く民族主義が根付いた理由を、セルビア総主教座とセルビアの英雄叙事詩の存在に求めているのが個人的に興味深かった。

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著者プロフィール

早稲田大学大学院文学研究科西洋史学博士課程修了。1975~77年、ベオグラード大学哲学部歴史学科留学。敬愛大学経済学部、東京大学教養学部・大学院総合文化研究科教授を経て、現在、城西国際大学特任教授、東京大学名誉教授。
専攻は東欧地域研究、バルカン近現代史
主な著作:The 20th Century through Historiographies and Textbooks: Chapters from Japan, East Asia, Slovenia and Southeast Europe (coeditor, Ljubljana, 2018)、『スロヴェニアを知るための60章』(編著、明石書店、2017年)、『バルカンを知るための66章【第2版】』(編著、明石書店、2016年)、『図説 バルカンの歴史』(新装版、河出書房新社、2015年)、『セルビアを知るための60章』(編著、明石書店、2015年)、School History and Textbooks: A Comparative Analysis of History Textbooks in Japan and Slovenia (coeditor, Ljubljana, 2013)、『クロアチアを知るための60章』(編著、明石書店、2013年)、CDRSEE企画『バルカンの歴史――バルカン近現代史の共通教材』(監訳、明石書店、2013年)、『東欧地域研究の現在』(編著、山川出版社、2012年)、『新版世界各国史18 バルカン史』(編著、山川出版社、1998年)、『ユーゴスラヴィア現代史』(岩波書店、1996年)。

「2019年 『ボスニア・ヘルツェゴヴィナを知るための60章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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