日本人のアジア認識 (世界史リブレット 66)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (83ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634346604

作品紹介・あらすじ

日本はアジア大陸の東方の海上にあって、歴史上大陸の政治の動きから直接に影響を受けることは多くありませんでした。それだけ、独自の歴史を歩む余裕があったといってもよいでしょう。しかし、近代になると、日本の進路は大陸と切っても切れなくなります。日本はアジア地域に、さまざまなかたちで影響力を拡大しようと試みました。アジアの側から歓迎されない場合も多かったようです。近代の日本とアジアの関係をもう一度考えてみたいと思います。

感想・レビュー・書評

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  • 今から30年前、私は小学生でした。

    その頃には、アジア諸国を何となく見下すような風潮があったように思います。
    我々日本は豊かな国であり、それ以外のアジア諸国は汚くて貧しくて見窄らしい国なんだと、誰から教わったわけでもないのに決めつけていました。

    大人になった今、子どもたちに日本の国際的地位についてどう思うか聞いてみると、日本は大したことのない国だというようなぼやきがほとんど。
    世界における国力や存在感ではChinaに、KPOPに代表される芸能や文化ではKoreaに、経済成長の勢いと若さゆえの熱量は東南アジア諸国に。

    私が幼い頃に抱いていた「日本こそアジアNo. 1」という見方は、明治時代における近代化の成功によって日本人の間に定着し始めたそうです。

    今は元気のない日本国ですが、いつかは日本人が「うちこそNo. 1!」と再び張り切るようなひがやってくるのでしょうか。

  •  明治期、日本では欧米流の進歩を目指す「近代的」文明観が広がる。加えて日中の人の往来が増えると、理想化されてきた中国と現実のズレを見る。こうして他のアジア諸国・地域から日本を差別化しようとする傾向が強まった。
     やがて大アジア主義が生まれるが、その一方で著者は、日本がアジアに属するのか、またアジアのどこに属するのかという点で、日本人のアジア観には深刻な矛盾や分裂があったと指摘する。
     また著者は、日本には近世以前から大きな隣国・中国への一種の恐れもあったと指摘。日清戦争にも、また民国期中国への干渉にもこの意識があったとする。

  • アジア(中国)に対する劣等感、近代化による脱亜入欧・アジア蔑視、近代化を遂げた中国への恐怖、アジアのリーダーとしての日本・興亜主義、そして大東亜共栄圏へ・・・。
    それらがない混ぜになったのが日本のアジア認識だ。恐ろしいことに、これは時折現代でもよく目にするアジア観でもある。こうしたアジア認識は近代化を始めたここ150年位で気づかれたものであって、それ以前はどうだったのか。国際的な政治力学が19世紀以前のアジアの様に戻りつつある今、この明治以来のアジア認識は桎梏となるのだろうか、あるいは・・・。

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著者プロフィール

所属・現職:東京大学大学院総合文化研究科教授。2009年8月4日逝去
専攻:中国近代史
主要著書論文:『日本人のアジア認識』(世界史リブレット66)(山川出版社、2008年)、『世界の歴史19 中華帝国の危機』(中央公論社、1997年)、『近代中国研究案内』(岩波書店、1993年)

「2009年 『中国の歴史と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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