ソロ: 単独登攀者山野井泰史

著者 :
  • 山と溪谷社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635171366

感想・レビュー・書評

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  • 山野井泰史という人物を深く知りたい人はぜひ読んでほしい。各サイトのレビューでは「この本は筆者の個人的な解釈が強い」という見方が多く「凍」や「垂直の記憶」を薦める声が多いが、人物像を最も細かに描いているのはこの本である。

    なぜソロという形態に拘っていったのか、簡単な経緯は他の本にも書いてあるが、氏の人生という一連の流れの中で、具体のエピソードを交えてそれを感じ取ることができる。

    たしかに筆者の解釈は時に曲解だと感じさせる部分もある。不快に感じる箇所もなくはない。一方で、読み手としても「一流の人はそんな情けない風には考えない!」といった勝手な期待や妄想をあらかじめ抱いて読むのは避けたい。

    カギカッコで括られた山野井氏の発言にだけ集中して読むのでも十分に楽しめる一冊だと思う。

  • 山野井泰史の人物像に迫ったドキュメンタリーです。

    ギャチュン・カンを登攀する以前の山野井さんの姿、
    人物像が描かれています。

    どの山をどうやって登攀したと言うよりは、
    その登攀時、山野井さんがどう考えていたか、とか
    周囲の人々からどんな人物なのかを聞き出し、
    浮き彫りにしていくドキュメントです。

    そこから描かれる人物、山野井さんは、純粋な人。
    ほぼ、365日24時間、山に関してだけ考え続けていると言う意味で。

    ここまで、一つのことを突き詰めて考えられる人は、
    そう多くはないのではないでしょうか。

    それだけ突き詰めて考えているから、山に取り付く直前まで、
    極度に緊張し、怯えるが、一歩を踏み出してしまえば、
    最大限に集中し、最高のパフォーマンスができるのではと、
    思えてきます。

    また、山岳界ではどのような理由であれ、頂上に立てなければ、
    失敗となるそうですが、山野井さんは進むべきか引くべきかを
    正確に見際め、決断しているそうです。

    すぐそこに、頂上が見えていて引き返す。
    これはなかなか難しい決断です。

    しかし、だからこそ、もっとも死に近いとされる、ソロでの
    登攀で、死なずに生きてこられたのではないでしょうか。

    読み進めていくと、山野井さんを自分の理想像にしたいなと
    思う反面、あまりに浮世離れした生活は他者にはまねできる
    ものではありません。

    しかし、その精神力や集中力、分析能力などは参考にして
    みたいと思わされる1冊でした。

  • 山岳雑誌『山と渓谷』97年8月号から98年6月号に連載されたものとのこと。
    当時まだ世間的に知名度がなかったソロのアルパインクライマーを
    取り上げたという点では非常に価値がある著作だろう。

    物語としての読み応えは、私は沢木耕太郎氏の『凍』の方が好きである。
    山への素直な気持ちは、やはり山野井氏ご本人の著作
    『垂直の記憶』などがとても良く感じられるだろう。
    この本に書かれている大筋は
    上記の本などで既に知っていることも多いが
    特にご本人が不要と思ったり照れがあったりで
    語られなかったエピソードがそれなりに切り込まれて取材されている。
    学生時代の友人の話や奥様の話、
    周囲にいた大人たちの話などが興味深かった。
    反面、言葉選びが新聞や雑誌記者
    かつ自身が山登りの経験がある為かやや独特で
    筆者が感動的に描く為に時系列を前後させることも多く
    やや読みにくい印象は残った。
    癖のある文章、というよりは、著者であろうと思う。
    はじめの方でも少し書かれていたが、読んでいてそれはどうなのか
    と思う言い回しや切り口だったり、
    自分がこうと思った内容に添って描く為、先程の時系列の入れ替えや
    筆者の個人的な感想、見方が色濃かったりすることが少し気になった。
    他の方もちらほらレビューで書かれているように
    飽く迄この本に描かれているのは筆者の思う山野井氏像であり
    ソロであり山だろう。

    自分としては、何故山に登るのか、という答えなんて簡単だと思っていた。
    好きだからだ。
    山に限らず、なんだってそうだと思う。
    惚れてしまったら命懸けだ。真剣になったらそんなものだと思っている。
    命を懸けても惜しくない惚れた山に、惚れた女と挑める男など
    なんと幸せな生き方だろうか。

    そう言えば、自分との戦い、山への挑戦などとよく言われがちだと思うが
    戦いでも挑むことでもないという言葉が印象的だった。
    本当に妙子夫人のおっしゃるとおり、子供みたいに素直に
    ただただ山が好きな人なのだろう。

  • 世界最強のソロクライマーと言われる山野井泰史の半生を綴ったドキュメント。ただただ圧倒される内容、これだけのクライマーが今も尚生存していること(失礼)自体が素晴らしい。山野井さんのある講演会に参加した友人のコメントは、「手足あわせて計10本の指を落としたギャチュン・カンを、『いい山でしたねぇ〜。いまでも後悔はしていません。』とニコニコ笑顔で回想されていたのが印象的でした。」とのこと。そんな山野井さんの側面を真摯に見つめる著者の姿勢にも脱帽、文句なしの超お勧め。

  • 人は何故山に登るのか?
    そんなこと決まってるじゃない・・・・が、この山野井泰史に関しては当てはまらない。

    私も彼に問いかけたい。
    どうしてそんな苦しいつらい思いをしてまで、垂直の壁に向かうのか、と。
    ましてや戦う相手は、壁だけではなく孤独との戦いも壮絶である。
    壁にとりついているときはもちろん、天候の回復をひたすら待っているベースキャンプでもひとり、登頂を果たし頂上で喜び合うパートナーも、キャンプに戻っても祝福してくれる人もいない。
    何をそこまで彼を駆り立てるのだろう。 

    ルポルタージュとも言える本書は、とにかくリアルすぎて、忠実すぎて、良いことも悪いことも一切の装飾のない言葉で、語られるので読んでいてとても疲れた。
    山野井泰史。やはり「天国に一番近い男」である。

  • ヒマラヤの8000m峰をバリエーションルートから単独無酸素で挑む登攀者「山野井泰史」が最初に書かれた本。
    山野井さんはほとんどの遠征にスポンサーをつけず、TV出演も断りみずから稼ぎ出した金で自分の満足する登山を楽しむ姿が本当にカッコイイ、山野井さんがどれだけすごい人かがよくわかる内容、そしてこの本ではソロで挑む時の心境がどんなものか、その行為で何が得られるのかを本人が語っている。

  • もっと山野井さんへのインタビューや肉薄した文章が読みたかった。

  • ソロのアルペンクライマー山野井泰史さんの自伝。
    生い立ちから、若いころの経験、現在の生活。
    登ること以外には望みを持たず、将来の不安もない。
    沢木耕太郎さんの「凍」とかぶる話が多く、文章力は敵わない所があるけれど、本人の口から語られるノンフィクションには迫力がある。

  • 2009/11/23購入

  • とことんやってみる。
    とことん。

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著者プロフィール

東京農工大学名誉教授。農学博士。日本オオカミ協会会長。一貫して野生動物保護の研究に従事。元々はシカ、カモシカ、ツキノワグマ、ニホンザルなどの保護管理を研究していたが、シカの天敵のオオカミが、日本の自然生態系の復活に不可欠と、日本オオカミ協会を設立。復活プロジェクトを開始。

「2007年 『日本の森にオオカミの群れを放て』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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