魔女街道の旅

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  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635810197

感想・レビュー・書評

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  • ドイツの魔女歴史を街歩きスタイルで巡ることができました!
    思っていたよりも魔女狩りが行われていた範囲が広かったり、ヴァルプルギスの夜の現在の模様など、言葉は知っているけど詳しくは知らなかった事実を旅行気分で学べる一冊です!

  • 図書館の検索システムで「魔女」と検索して見つけた本です。
    ドイツでの魔女に関する歴史的な本。
    魔女に関する歴史と言っても、歴史上の魔女の扱いは、魔女迫害の歴史でもあります。
    16~18世紀に行われた魔女裁判で、老若男女を問わず、拷問による自白により魔女とされた多くの人々が虐殺されたという事実は、非常に恐ろしい。
    魔女裁判が、当時の法律に基づいて執行されていたことも、現代からすれば衝撃的ですらあります。
    世界的に見れば、今でも魔女迫害が行われている地域もあるようです。
    一方、本書は、観光ガイド的な側面もあり、毎年4月30日に行われる「ヴァルプルギスの夜」のイベントの話なども、興味深かったです。

  • ドイツに残る魔女迫害の歴史跡を訪ねる一冊。「魔女狩り」をテーマにした本を何冊か読んでいるので興味深く手に取ってみました。

    元が『ドイツ魔女街道を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)という旅行ガイド的な本だったらしく、著者は魔女の歴史についてもだいぶ調べているようなのにそこらへんの考察が弱く物足りない。
    元のガイドブックにはあったのかもしれませんが、写真や詳細な地図もないのでガイドブックとしても物足りない。
    魔女の館や慰霊碑などを訪れた感想もブログのコメントの域を出ておらず、ここらへんももったいない気がしました。

    ドイツのあちこちに魔女とされた人々のための慰霊碑が建てられていたり、近年になって名誉回復がはかられているというのは初めて知ったので収穫でした。
    地域振興目的とはいえ、ヴァルプルギスの夜祭りが復活しているのもおもしろい。魔女はいまや観光資源なんですね。

    冒頭の『ヘンゼルとグレーテル』の魔女は本当に悪い魔女だったのか、という疑問は私も感じていたので、著者だけでなく、ドイツの作家にも同じ違和感をもつ人がいるというのは共感しました。

    著者は意図的に「魔女狩り」という言葉を使わず、「魔女迫害」としているようなのですが、これはなぜなんだろう。

    最終章の児童文学における魔女や「薬草魔女」など、現代の新しい魔女についての話はなかなかおもしろいです。
    そもそも日本語の「魔女」とは外来語で、もとは必ずしも女性だけを意味するものではなかったとか、「魔女」といえば反社会的なものであり、いい魔女は存在せず、悪い魔女だけが魔女だったというのは再発見。

    「現代の魔女狩り」とはネットのいじめなどをさしてよく使われる言い回しですが、アフリカなどでは現代でも魔女と名指しされた人が私刑で殺害されていたりするので、魔女とは何か、魔女狩りとは何かは今後も追いかけていきたいテーマです。


    以下、引用。

    魔女迫害の時代に、「バター魔女(ブダーヘクセ)」や天候を左右する「天候魔女(ヴェターヘクセ)」として処刑された「魔女」がいました。
    農作物に実害を及ぼす「天候魔女」は、農民にとって何より許せない敵だったのです。
    牛乳を盗むことも魔女の罪状の一つでした。

    一六九二年、アメリカのマサチューセッツ州セイラムで約二〇〇人が魔女として逮捕されて魔女裁判にかけられ、十九名が処刑されるという事件がありました。
    被告の子孫が先祖の名誉回復を求めて裁判を起こしました。訴えが認められたのは、事件から三〇九年後の二〇〇一年のことでした。

    セイラムの魔女裁判をテーマにしたアーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」(一九五三)は、冤罪について考えるきっかけを社会に投げかけ、大きな反響を呼びました。

    エヴァリン・ハスラー『最後の魔女 アンナ・ゲルディン』
    アンナ・ゲルディの「名誉回復」は、二〇〇八年にやっと受け入れられました。

    一六二七年に魔女裁判で死刑判決を受けて処刑されたカタリーナ・へノートです。
    一九八八年、カタリーナの子孫が、カタリーナおよび、当時魔女として処刑された三十七名の女性たちの名誉回復を求めて、再審請求を市に提出しました。市庁舎の像はこの年に作られました。
    公に全員の名誉回復が決議されたのは二〇一二年のことでした。

    オークは彫刻や家具やワインの樽などの材料になり、そのチップは皮なめしに使われ、果実は家畜の飼料になるなど、いまも昔も大変有用な木です。古代ギリシャやローマ、ケルトの社会でもオークは神木として崇拝されてきました。

    ドイツは、五、二、一セント硬貨の裏面はすべて、葉を付けたオークの枝です。これはユーロ通貨になる前のドイツマルクの硬貨ペニヒでも同じでした。

    十五世紀になると美術の世界では「死の舞踏」というテーマが大きく取り上げられるようになりました。

    ハルツ山地が魔女の故郷と言われるのは、年に一度、四月三十日の夜に魔女と悪魔が宴をしたという伝説「ヴァルプルギスの夜」の本場であり、しかも、この伝説を再現したヴァルプルギスの夜祭が、現在も毎年四月三十日に行われているからです。

    グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」の魔女がこのイルゼシュタインの森に住んでいるという設定で作られたオペラがあります。

    ドイツの「ヴァルプルギスの夜」は、ハルツ山地の伝説として十七世紀の文献に出てきます。それによると、四月三十日の夜、魔女たちと悪魔はハルツ山地の最高峰ブロッケン山に集まって、夜通し飲み食い踊りの饗宴を開きます。暁を知らせる鶏の声が聞こえると、いっせいに姿を消し、翌五月一日から春がはじまります。つまり、悪魔と魔女は「冬の魔」というわけです。

    本来、春迎えの祭りは、土着の人々が自分たちの信じる古代の神々に祈って春を呼ぶ行事でした。しかし、キリスト教がヨーロッパで勝利すると、古代の神々は異教の神として排除されたばかりでなく、冬の魔、つまり悪魔や魔女にされてしまったのです。

    十九世紀の終わり頃、ハルツ地方の主だった二つの町シールケとターレが中止となって地域振興を目指し、ハルツ同盟を発足させました。その一つとして考え出したのが、伝説にしか残っていなかった、この「ヴァルプルギスの夜」を新しい春迎えの祭りとして再現させることでした。
    一八九八年にブロッケン山頂で行われたこの最初の祭は大成功でした。一九〇一年にはブロッケン山頂行きの特別列車も走り、大変盛大な祭りになりましたが、その結果、山が荒らされてしまいました。そこで、ハルツの領主シャトルベルク・ヴェアニゲローデ伯は山頂での祭りを禁止しました。それ以来、祭りはふもとの町や村で行われるようになったのです。

    魔女はドイツ語で「ヘクセ(Hexe)」といいます。語源は諸説ありますが、「ハガツサ(hagazussa、垣根の上の魔的な女)」ではないかという説が有力です。垣根とは、異界と現実界との境のことです。

    魔法使いは、『旧約聖書』にも出てくる古い言葉です。魔法使いはよいこともするし、悪いこともします。一方、魔女という言葉が社会に登場するのは比較的遅く、中世になってからです。つまり、魔法を使う人と魔女は異なるのです。

    「魔女」は、社会的に作られた新しい概念と言ってもいいのです。だから、魔女の行う術は反社会的なものと決まっています。魔女というのは悪い魔女に決まっていて、よい魔女なんてありえなかったのです。

    日本語の「魔女」は外来語です。日本で最初に翻訳された「ヘクセ」の出てくる物語はグリム童話で、そこでは全員が女性だったので、魔女となったのだろうと思われますが、実際に迫害された「魔女」には、女性だけでなく男性も子どももいました。

    薬草を集めたり、栽培したりしていたのは、主に村落に住む女性でした。彼女たちの経験や知識はとくに産婆(現在は助産師)の仕事に役立ちました。
    十五世紀に出版された『魔女への鉄槌』には、「産婆は魔女以外の何物でもない」とか「生まれた子どもを殺して悪魔に捧げる」といった、まるで信じられないような産婆批判が書かれていました。

    ホウキに乗って空を飛ぶ魔女のイメージ絵も残されていますが、実際にはホウキは単なる乗り物であって、飛べる力は軟膏にありました。

    『薬草魔女のナチュラルライフ』ビッケル

    『魔女の宅急便』のキキの母親は魔女で薬剤師でした

    『オズの魔法使い』は、一九三〇年代から約三十年間アメリカのパブリック図書館から排除され、ブラックリストに載っていたほどでした。

    『ルイスと不思議の時計』

    オトフリート・プロイスラー『小さな魔女』(一九五六)

    パウル・マール「悪いヘンゼルと悪いグレーテルと良い魔女」(一九六ハ)

    ジャン-ミシェル・サルマン『魔女狩り』

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著者プロフィール

翻訳・翻案 西村佑子(にしむら・ゆうこ)/魔女研究家。『魔女学校の教科書』(静山社)、『魔女の薬草箱』『魔女街道の旅』(ともに山と渓谷社)など、ドイツの魔女伝説や魔女迫害の歴史についての著書を多数執筆している。

「2022年 『ブロッケンの森のちっちゃな魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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