- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784641046214
作品紹介・あらすじ
国際社会の独自の構造を踏まえながら、国際法の諸問題の根底をなす基本枠組みをコンパクトに示した。各章の「基本課題」を解いていくことで、現代的な問題・事件を通じて国際法の学説、理論、判例の相互関係を理解できる。
感想・レビュー・書評
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国際法の基本構成を記述した一冊。
いままでこの基本構成ということをたいして意識せずに漫然と国際法を勉強していたので、これを読んでいて、「あれは、こうだから、こうだったのか!」という知的再発見にあふれていて、楽しい読書だった。
以前、法律に詳しいが、国際法というものには懐疑的な友人と話をしていて、彼の国際法批判に、国際法をかじったものとしては釈然としない思いをもっていたが、そのときこの国際法の基本構成というもの、諸前提、基礎の基礎さえ頭に入っていれば、有意義な議論ができただろうなあ。逆に言えば、ここに書かれているような諸前提の知識やそれぞれの検討なくして国際法は語れないし、その諸前提などについて、非常によく説明し、考えさせる内容だったと思う。
ともあれ、国際法の考え方というのに一歩近づけた感じがした。国際法の勉強するのには、かなりいい本だと思います!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
329||Ko
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一般的な教科書のように網羅的に扱っているわけではない。
環境法もないし、人権もない。宇宙に一章割いてるのは結構特異。
しかし内容は濃い。割と薄い本のわりには論点はぎっしり。
特におもしろいのは1章、2章、3章、5章。
第1章 国際社会と法
国際社会の一般利益を実現するもの=国際慣習法
例:ジェノサイドの禁止
地球環境保全や基本的人権保障
諸国の共通利益≠国際社会の一般利益
第2章 一般国際法の世界
核兵器使用・威嚇の合法性事件勧告的意見
→核兵器の使用が適法か違法かを結論することはできない
法がけんけつしてる
法がけんけつしてても、対抗力概念で解決することがある
漁業事件(イギリスv.ノルウェー)
漁業管轄権事件(イギリスv.アイスランド)
不法から法は生じない→国際社会では当てはまらない場合もある
第3章
法の基本原則→諸国の法に内在する原則、法システムに内在する原則、国際法一般の原則
ベルギー逮捕状事件
「北海大陸棚事件」多数判決は、
適用を否定した「等距離中間線ー特別事情」原則について、それが慣習法規とないりうるためには、
①大陸棚概念に固有であるか
②国家実行の影響を受けて実定法になるかのいずれかだとした。
(国際法上の制度の本質から導かれた法規則を裁判所は、国際慣習法規と考えていることが分かる。すると、国際法の一般原則は、
法の一般原則ではなく、慣習国際法に含められるのか?)
法原則と法規則の違いについて。
第4章 国際法と国内法
二元論、国際法優位の一元論、調整理論
二元論、国際法優位の一元論は法をどのように考えるかという
法哲学の問題が大きい。
調整理論は義務の抵触をいかに解決するかという問題に重点を置いてる。
第5章 条約の自動執行性
自動執行性の二つの意味
①国内法なしで国内的効力を発揮するかという問題
②裁判準則になりえるかという問題
日本において条約が自動執行性をもつための基準は
ア、条約が国際法上当事国に国内的に直接的に適用することを義務づけていた
かどうか
イ、国内法上適用すべき基準を満たしているか否かである。
第12章 国家責任法
国家責任は義務違反によって成立するのか、それとも損害発生によって
成立するのか。
国際社会に対して負う義務とされる、対世的義務というものが存在する以上、国家責任は義務違反によって成立することが望ましいかもしれない。一方、ICJは民衆訴訟を認めてはいなく、損害を蒙った国家がだけが原告適格を有するとされる。 -
国際法とは何か?国際法の本質とは何か?といった根源的な考え方を務めて明快に解説しようとした本。国際法の物の考え方や枠組みがわかりやすく書かれています。
しかし、実はその表面上のこと以上に本書が示唆する内容は深い。国際法がなぜ人類社会の叡智だとされるかについて、よくよく考えさせられる。実は中級ないし上級者以上が読むべき本なのかもしれない…