天皇機関説事件 下―史料は語る

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  • 有斐閣
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784641049253

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  • 1970年刊。著者は東京大学名誉教授。◆上巻で美濃部は貴族院議員辞職、憲法提要等も発禁処分と化し、天皇機関説事件は既に終焉。が、いわゆる国体明徴論争の結着は未了で、下巻はそれを中心に論じていく。ただ実際、国体明徴論争は強気の軍部(というよりこれを突き上げる蓑田ら一派、在郷軍人会)に寄り切られていく政府という構図で、余り面白味はない。史料の原文引用の多が長所。◇その中で、本庄日記に記される昭和天皇の軍部に対するイライラぶり(特に二・二六事件以降)と、天皇に対する面従腹背の軍部の構図が垣間見れて、興味を引く。
    ◆一方、皇族・宮中派と財閥との縁戚関係・経済的関係の緊密さを前提に、財閥=宮中派と軍部との距離感を図る視点(好例が国体明徴論争の落着のさせ方)は、その事実関係の如何を軸に後学の要。◆なお終章には、柳瀬良幹に触発された、天皇機関説の「機関概念」の多義性を叙述。そして、この多義性(①機関説・国家法人説が、独と違い、日本において自由主義と高い相関ある学説と化す。②俗流=機関という言葉を天皇に塗すのはけしからんレベルの論)への対応の曖昧さが、美濃部反論の(ハッキリ言って)稚拙さに結合したという印象を残す。
    ◆もっとも、本書上下巻から伺えるのは、著者宮沢を含め、美濃部応援団が皆無だったこと(滝川幸辰事件と大分違うなぁ)。美濃部が自らだけを頼みに孤軍奮闘していたのは、その哀切さが涙を誘うはず。◆座談会での迫水久常の本音の開陳と、彼の暴露話が面白い。蓑田胸喜は陸軍軍務局の一派に加え、総会屋的に財閥から金を引き出していた可能性を示唆。

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