人権の思想史 (歴史文化ライブラリー 68)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642054683

作品紹介・あらすじ

人権思想の成立を近代ヨーロッパに求め、アジアでの展開など、「生きる権利」を世界史の中に探る。植民地・女性問題などで、絶えず人権がふみにじられてきたことを通し、人権は「終わりなき旅」であることを宣言する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人が書いたものとして、大変な意欲作である。世界史や政治思想史の一分野として、人権をとらえてきたに過ぎない自分にとって、人物や思想のつながりや、思想史的な淵源について新たに得るものが多々あった。

    人権の確立、促進の流れのなかで、歴史には絶えず、ある種のもどかしさを感じるのであるが、それはあまたの人間の意識変革の限界速度があるからだろう。

    理想を掲げつつも、バランスとタイミングを常に図りつつ、たゆまず運動していくことが必要だ。

    ・ルターの農民への弾圧示唆。ルターの自立は内面にとどまり、現実社会への広がりはなかった。
    ・ルソーは全体主義者という解釈。事実、弟子を自称するロベスピエールは恐怖政治を。しかし、ルソーは人権思想に基づく民主主義の問題点を、時代に先んじて、するどくつきつけていた。多数決は常に正しいのか。他人の人権を侵害する人権はどこまで尊重されるのか。他国侵略から祖国防衛の義務はないのか。
    ・キリスト教聖書からの奴隷制肯定の解釈。
    ・奴隷解放の際、プランターに補償金が支払われた。奴隷にではなく。
    ・インディアンに選挙権が認められたのは1924年。黒人は1870年。
    ・イギリスでブルーストッキングソサイアティという女性が自治していた組織があり、そこから平塚は青鞜社をつくった。
    ・イギリスでのプライヴェート・アクト。正式な離婚に際して。
    ・家族の解体。ムハンマド、イエス、釈迦。P137。儒教にはない。
    ・日本のルソー・安藤昌益。身分制批判、封建道徳批判。農業根本思想。家族の中心を親子ではなく夫婦においた。先祖供養も否定。軍学も否定。
    ・司馬江漢。苦しみ故に平等。パスカルとの親近性。
    ・ヘーゲル:現実的なものは全て合理的。合理的なものはすべて現実的。「法哲学要綱・序文」。ここから現実肯定と現実変革に別れた。
    ・マルクスの生存権確立のラディカルさ。自由ではダメ。資本家の搾取する自由、労働者の飢える自由が肯定されてしまう。
    ・民族自決はレーニンの思想から。条件はあるが。
    ・女性の国政参政権はニュージーランドが最初(1893年)だが、州議会ではワイオミング州が1873年に実現していた。
    ・ミルが1867年に女性選挙権法案を提出。ナイチンゲールも賛同。運動に。
    ・エンゲルスの夫婦間の搾取構造の指摘。マルクス主義フェミニズムの原点。

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