歌舞伎と人形浄瑠璃 (歴史文化ライブラリー 170)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642055703

作品紹介・あらすじ

今も多くの人々を魅了する歌舞伎と人形浄瑠璃。誕生以来つねに為政者の弾圧を受けながら、いかにして今日の伝統芸能へ発展したのか。"女性原理=肉体"と"男性原理=ことば"をキーワードに、その歴史と魅力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 講義のレポートをまとめるために読んだ。
    歌舞伎と人形浄瑠璃の関係性についてとても分かりやすく解説してある。ためになった。

  • 江戸時代の歌舞伎と浄瑠璃の形態た状況を説明した作品であり、初学の私には読みやすいものでした。
    しかし、大きな疑問点あります。著者は、「男性原理」と「女性原理」というキーワードで歌舞伎と浄瑠璃を考察していこうと主張しています。それは歌舞伎が女性原理優位、浄瑠璃は男性原理優位ということが根っこにあるからだという考えに立っているということですが、少し強引な気がします。
    また、「男性原理の属性ー精神・合理・言語・道徳・イデア・昼・建前 女性原理の属性ー肉体・非合理・非言語・本能・イコン・夜・本音」と定義していますが、一瞬そうかなと思いますが、まるで血液型占いのような区分ですね。この区分が、どのようにしてなされたのかが、本書全体を探してみましたがみつかりませんでした。精神と肉体は、武家社会を想定したものなのでしょうか。合理と非合理はどういったことなのでようか。昼と夜という漠然とした区分はどうしてできるのか。そこをしっかりと説明してから、このキーワードでみていくのが筋だと思います。現在の脳科学では女性の脳のほうが言語感覚の発達がいちじるしいというのが定説のようです。
    近世演劇の構造を「男性原理」と「女性原理」の観点でみると明らかになるということに違和感があります。「①歌舞伎と人形浄瑠璃・文楽は本質を異にする。歌舞伎は女性原理優位、人形浄瑠璃は男性原理優位の演劇である。②しかし、歌舞伎は女性原理だけでは説明しきれず、人形浄瑠璃は男性原理だけでは説明できない。歌舞伎も人間浄瑠璃もそれぞれが女性原理と男性原理の両原理をそなえている。③両者ともたがいに、相手の原理を取り込むことによって、また独自に両原理の摂取と調和をはかることによって再生・復活する。」とありますが、好意的に読んでも理解しがたい論法ですね。
    終章に「歌舞伎、人形浄瑠璃・文楽がこんにちまで、400年の歴史をあゆむことができたのは、歴史と人間の本質を具現する男女両原理に支配され、統合してきたためで、これからもすたることなく、永続していくであろう。」と結んでいます。しかし、歌舞伎も人形浄瑠璃も現在まで埋没せずにいるのは、そういったことではなく少しずつ改革を加えたものが観るひとたちが支持したからではないでしょうか。また、江戸期の文芸とは明治という文化の一大転換期を近世の文化(江戸以前の文化)とをつなぐ要素として欠かすことができないため注目があるのではないでしょうか。
    学問は先行研究を整理すことが重要であり、そこから新たに見つかったものに対して新説をだすことだと思います。なにも、研究の成果がすべて新説を発表しなければならないというものではないと思いますが。

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著者プロフィール

*2013年6月現在京都造形芸術大学教授

「2013年 『八代目坂東三津五郎 空前絶後の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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